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学術・研究

医科2018.02.04 講演

日常診療で使える整形知識(4)
3.下肢のしびれの診かた
[臨床医学講座より](2018年2月4日)

静岡県・西伊豆健育会病院 院長  仲田 和正先生講演

(前号からのつづき)

脊柱管狭窄か血管閉塞か?
 下肢の疼痛が主訴の時は神経根病変(神経根痛)が多く、しびれが主訴の時は脊髄症や馬尾神経障害のことが多い。
 下肢への坐骨神経痛があれば腰椎椎間板ヘルニアなどの神経恨障害が疑われる。間欠性跛行がある場合は血管閉塞による場合と腰椎脊柱管狭窄症のように馬尾神経圧迫による場合がある。脊柱管狭窄症の時の坐骨神経痛は立っただけでも生じるが、血管閉塞による下肢の痛みは歩行により出現する。
 坐骨神経痛は下肢近位では痛み、遠位ではシビレが主体となることが多いが、血管閉塞では下肢遠位の歩行時痛が主体である。鑑別は脊柱管狭窄は下肢神経症状の存在により、血管閉塞は下肢の血管の触診、ドップラーにより推定できるし、足関節の収縮期血圧/腕の収縮期の血圧(ABI)〈0.9の時は下肢血管閉塞を考える。
 足背動脈が触れれば血管閉塞が否定できるわけではないことに注意しよう。
多発性神経炎か、神経根障害か?
 両下肢のシビレでは多発性神経炎も考える。坐骨神経は最も長い末梢神経であるから一番やられやすい。シビレが下腿の2分の1より上行すると両手のシビレも起こりやすいといわれる。多発性神経炎と神経根障害との鑑別点は多発性神経炎では下腿の前も後ろも同じように知覚障害があるが、神経根障害ではその神経根支配域のみの神経障害である。
 多発性神経炎の鑑別診断はDANG THERAPISTである。すなわち、DM、Alcohol、Nutritional、Guillain-Barre、Toxic(heavy metals、drugs)、Hereditary(Charcot-Marie-Tooth、Dejerine-Sottas、Refsum)、Renal、Amyloidosis、Porphyria、Infectious、Systemic、Tumorである。
 なお最も多い原因はDMだがChronic polyneuropathyの20〜25%は原因が不明で、老人のsensory distal symmetrical polyneuropathyが多く、足の痛み、シビレ、灼熱感をともなうsmall fibre polyneuropathyである5(反射低下や位置・振動覚障害がある時は太い知覚神経の障害)。
 また両下肢と両上肢のしびれが脊髄症(myelopathy)で起こることがあり(機序はよくわからない)、腱反射の亢進、Babinskiに注意しよう。
 また下肢麻痺のみがある時、脊髄の変化のみを考えがちであるが、脳の頭頂部病変(前大脳動脈の脳梗塞、髄膜腫など)でも起こりうることを思い出そう。Babinskiの有無に注意!
足のみのシビレの時
 足裏のシビレを見た時、内果後方の脛骨神経が屈筋支帯で圧迫される足根管症候群のことがあり、内果後方でTinelを確認するとよい(図1)。
 足背のシビレで第1,2足趾間に限局する時は深腓骨神経圧迫による前足根管症候群のことがあり、この神経は足背動脈と伴走しているので足背動脈のTinelを確認する(図2)。
 足背動脈の簡単な見つけ方がある。足関節の外果と内果を結ぶ線の中点から母趾と第2趾の間に線を引く。この線上に足背動脈はある(図3)。見当違いの所を触っているナースをよく見かけるので教えてあげよう。
 ランナーで説明のつかぬ足背外側の痛み、シビレがあるとき浅腓骨神経の絞扼(図3)のことがある。浅腓骨神経は外果から7〜10㎝上で深部から浅層に出てくるが、ここで絞扼され足背外側のしびれを起こす。ここのTinelを確認する。
 歩く際、第3・4中足骨間で痛みがある場合や3・4趾間に放散痛があるときはMorton's neuroma(図4)を考える。第3・4趾間で総趾神経が横中足靭帯で絞扼されて神経周囲が繊維化してneuromaができる。この時、前足部を両側からつかむと疼痛が誘発され(Mulder's sign)clickを感じることがある。第3・4趾間の知覚低下を調べよう。
腰椎椎間板ヘルニアの診断
神経所見はL4、L5、S1の異常を確認する
 下肢への放散痛がある場合はその位置を聞く。L3/4のような高位椎間板ヘルニア(L4神経根障害)の場合は大腿神経に沿って大腿前面から膝内側にかけて放散痛がある(膝疾患と間違われる)。L4/5やL5/S1のような下位椎間板ヘルニアなら坐骨神経に沿って大腿後面から下腿外側、後面、さらに足指に放散することもある。足背あるいは母指への放散痛ならL5、足底あるいは第5指への放散痛ならS1の神経恨症状である。
 図5からわかるようにL4/5のヘルニアの場合、L5とS1の神経根が障害される。L5/S1ヘルニアではS1神経根が障害される。
 脊椎椎間で硬膜内の最外側(一番狭い場所)に位置する神経はそのレベルで分岐して硬膜外へ出ていく神経である。例えばL4/5椎間であれば硬膜内で最外側にあるのはL5神経でその内側にS1がある(図5)。この位置で、ヘルニアが硬膜内でいちばん狭いところにあるL5神経を障害せずにそれより広い所にあるS1神経を障害することは考えにくい。つまりL4/5のヘルニアではL5とS1の二つが障害されることはあってもS1単独障害は起こりえない6
 腰椎椎間板ヘルニアの9割はL4/5とL5/S1の二つの椎間板で起こるから、ヘルニアを疑ったときはL4、L5、S1の神経症状を反射、知覚、筋力の3点から確認すればよい。調べるべき反射は二つ、膝蓋腱反射(PTR)とアキレス腱反射(ATR)である。膝蓋腱反射はL4をみている(膝蓋腱は大腿四頭筋だからL4と覚える)。アキレス腱反射はS1をみている(Achillesの1番のウィークポイントと覚える)。
 知覚は脛骨稜の内側がL4、外側がL5である(図5)。特に母趾と第2趾の間はL5の固有領域である。
 足底はS1である。特に外果の下方はS1の固有領域である。筋力は足関節の内反がL4、足関節背屈、足趾背屈がL5(足趾5本反ってL5と覚える)。足関節外反と底屈、足趾底屈がS1である。大雑把にはつま先立ち(S1)と踵立ち(L4、L5)ができるか見れば良い。以上から椎間板ヘルニアがL4/5かL5/S1か同定できる。
 大腿周囲長(膝蓋骨の10㎝上で計測)、下腿周囲長(一番太い位置で計測)も筋萎縮をみるのに重要である(特に2㎝以上の差)。
 SLR(straight leg raising)はヘルニアに特徴的なサインであるが、70度以上の挙上では健常人でも膝窩部のつっぱりを訴える。SLRはギランバレーのような神経根を含む急性多発神経根炎でも陽性にでることがある。
 SLRと筋線維束攣縮(筋肉のピクピクした自発収縮)は末梢神経近位部の神経根に病変があることを示す。脊髄前角細胞の障害でも筋繊維束攣縮が起こるが、SLRが出ることはない。
 Crossed SLR(健側下肢挙上で患側の痛みを訴える)は陰性のことも多いが、あればヘルニアのさらに有力な証拠である。L3/4の高位椎間板ヘルニアではFNS(femoral nerve stretching:伏臥位にして下肢を天井に向かって持ち上げると大腿前面に放散痛を訴える)テストが陽性に出る。
(つづく)

参考文献
5.Seminar:Peripheral neuropathy, The Lancet vol 363, June 26, 2004
6.菊池臣一、蓮江光男:腰仙椎部神経症状、金原出版、1996

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