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学術・研究

医科2018.02.04 講演

日常診療で使える整形知識(5)
JPTEC(外傷病院前救護ガイドライン)要点
[臨床医学講座より](2018年2月4日)

静岡県・西伊豆健育会病院 院長  仲田 和正先生講演

(4月5日付からのつづき)
 重症外傷患者で生存率が最も高いのは受傷後1時間以内に手術された場合で、これを「黄金の1時間」と言い、さらに最初の10分を「プラチナの10分」と言う。現場到着と同時に15秒で初期評価(A、B、Cの確認)、続いて全身評価「頭の先からつま先まで(head to toe)、体前・後面(front to back)」までを2分で終了し、処置を行い5分で現場を離れる。

Ⅰ.現場評価(カンキアンスキ 感器安数機)
1.染防御:手袋、ゴーグル、マスク、ガウンなどの装着
2.材の確認:脊柱固定具、呼吸管理器具、外傷キットなど
3.全確認:交通事故なら交通規制されているか、電柱衝突事故なら電流が切られているか、火事、爆発に巻き込まれないか。救助者の危険を伴うようなら撤退する。必要なら警察を呼ぶ。
4.受傷者の:応援要請が必要か。受傷者1人に救急車1台が必要。夜間や荒天時、車の陰等の傷病者見逃しに注意。
5.受傷転:これで外傷の種類を推察できる。例えば、正面衝突でハンドルが変形していれば心挫傷、心タンポナーデ、大動脈破裂、気胸、腹腔内出血などを疑ってかかる。
 高エネルギー外傷(同乗者死亡、車から放り出された、車に轢かれた、車の高度損傷、救出に20分以上かかった、車横転、バイクと運転手の距離大、自動車と歩行者/自転車の衝突、機械に巻き込まれた、高所墜落)ではトラウマバイパス(直接三次医療機関へ)も考える。
Ⅱ.初期評価:15秒以内で行う。頸椎保護優先(ABC)
 患者に近づく時、横から声をかけてはいけない。患者に頸椎損傷があって横を向くと危険。
 極力頭の上または顔が向いている方から近づく。横から近づき、こっちを向きそうだったら「頭を動かさないで!」と声を掛ける。頭の上または正面から近づき即座に患者の頭を両手で保持固定してから声掛けをする。
 初期評価を中止して良いのは心停止と気道閉塞の時のみ
1.Airway、Cervical spine:頭を両手で固定、かつ必要なら修正下顎挙上して声掛け。(図1:脊椎と頭を一直線にする)
・「大丈夫ですか。救急隊の○○です」反応によりJCS(1桁、2桁、3桁)で評価
・「痛い、胸が痛い」:発語あり、気道開通している。JCSは1桁
・反応なし:頭部固定を二番員と交代し下顎挙上し気道確保
痛み刺激を加える
 →開眼:JCS2桁
 →開眼せず払いのけるor無反応:JCS3桁⇒ロード&ゴー
2.Breathing:頭部固定を二番員と交代してから行う。(2番は2つのことを行う)
(1)呼吸の確認(look、listen、feel 見て、聞いて、感じて)
 息の音を聞く、胸郭の動きを見て、手で触れ感じる。なければ補助呼吸/挿管開始。二番員が患者の頭を両膝ではさみ頭部固定(図2)してアンビュ使用する。
(2)酸素10Lリザーバー付きマスクで開始(いやがる時のみ鼻めがね)
3.Circulation:(3番は3つの確認を行う)
(1)橈骨動脈の触診、触れなければ頸動脈の触診
 橈骨動脈で触れるBP〉80、大腿動脈で触れる〉70、頸動脈で触れる〉60
(2)皮膚の色、状態、温度:皮膚が湿潤して冷たく蒼白→ショック状態
(3)活動性の出血はないか→止血!
 ここで緊急事態と判断すれば「ロードアンドゴー load and go!」宣言して二、三番員に知らせる。局部に限られた外傷ならFocused Exam(局部観察)のみで良い。
Ⅲ.全身観察
 初期評価と併せ2分で行う。収容まで5分:頭から爪先まで
・頭部外傷・TIC(Tenderness、Instability、Crepitus:圧痛、不安定性、骨折音)に注意
・頸部外傷・TIC(特に後頸部正中の圧痛に注意!)
気管変位の有無(緊張性気胸、大動脈断裂を疑う)必ず確認!
頸静脈怒張の有無(緊張性気胸、心タンポナーデを疑う)必ず確認!
ここで「服を切らせてくださいね」はさみでチョキチョキ
頸椎カラー装着(カラーの高さは僧帽筋上縁から下顎下縁)頭部固定はまだ継続
胸郭の動き、外傷、TIC、皮下気腫の有無
・左右の呼吸音(第4肋間中腋下線で)、心音の聴取(後の変化に備えてベースラインの心音を聞いておく)
・開放性気胸の場合は三辺テーピングを行う(サランラップやアルミホイルなどを四角に切って穴の上に置き三辺をテープで塞ぐことにより一方弁とする。たいてい出血を伴うのでラップの中に血液が溜まらぬように出口は胸部外側とせよ)。
 緊張性気胸(気管の健側への変位、頸静脈怒張、患側呼吸音減弱、患側鼓音)の場合は、米国では鎖骨中線第2肋間でエラスター針を刺して現場で脱気
腹部の損傷、緊張、膨隆、圧痛の有無
・脱出腸管は被覆、穿通性異物(ナイフなど)はそのままで固定
・骨盤のTIC、骨盤を両側から1回だけ押す、恥骨TIC確認、不安定なら以後のロッグロールは禁止
・大腿、下腿TIC、爪先を動かせるか、足のPMS(脈、動き、知覚 pulse、motor、sensory)
・上肢のTIC、指の動き。上肢、下肢観察は時間をかけず迅速に!
 二番員に頭の保持をさせたまま体を丸太のようにロッグロール(log roll)させバックボードに移す。横にする時も頭と脊椎を一直線にする。ヘッドイモビライザー装着
 ボードの中心から体幹が外れている時は、そのまま横にずらすと頸椎損傷を起こしかねない。頭を保持したまま「1,2、3」と掛け声をかけて他の隊員と力を合わせて尾方へ引っ張り、その後で頭側へ引っ張ってZ移動して体幹をボードの中心へ持ってくる。ボードが傾かぬよう足底でボード端を踏む。号令は頭を保持している者がかけること。
背部の確認
 背部はロッグロール(90度まで)する時に確認。不安定ならロッグリフト(そのまま持ち上げる)で。背面観察後、片手でバックボードを引き寄せて全身固定。腕はベルトの外に出す。
 嘔吐する時はバックボードのまま横へ傾ける。従ってヘッドイモビライザーが砂嚢だとその重さのために頸椎が傾き危険である。軽い枕を使用する。
SAMPLE(symptom、allergy、medication、past history、last meal、event:症状、アレルギー、薬歴、既往歴、最後の食事時間、現病歴)の聴取またはGUMBA(原因、訴え、メシ、病歴、アレルギー)(ロードアンドゴーでは車内で)
 ロードアンドゴー宣言し車内で酸素切り替え、モニターを着けバイタル測定。保温に努める(毛布、アルミシートなど)。
Ⅳ.病院へ第一報
 年齢、性とMIST(Mechanism、Injury site、Sign、Treatment:受傷機転、部位、症状、処置)の伝達
Ⅴ.Detail Exam(詳細観察)
・SAMPLEまたはGUMBAの聴取
・バイタル:低血圧なら米国では太い径のエラスター2本入れて乳酸加リンゲル20ml/㎏開始
・頭から爪先まで丁寧に調べる。「あれ?」と思ったらもう一度ABCに戻る
妊婦は左下半斜位とする。(子宮による下大静脈への圧迫を避け心拍出量確保)
・保温にも気を配る。
Ⅵ.病院へ第2報
 バイタル、MIST、行った処置、所要時間
Ⅶ.Ongoing Exam(継続観察)
・「おかわりありませんか?」
・詳細観察は終わっているので大事な頸部、胸部、腹部のみの観察を行う。
(つづく)

参考文献
外傷病院前救護ガイドライン JPTEC、プラネット、2010.4

図1 修正下顎挙上(頸部を後屈しないこと)
1877_01.gif
図2 両膝で頭を固定
1877_02.gif
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