兵庫県保険医協会 2012年度 診療報酬・介護報酬改定 特集

主張

診療報酬「OECD並み医療費」の政権公約破りを許すな

 民主党は前回総選挙で、OECD並みのGDP比10%の医療費を公約したが、政権奪取直後の診療報酬改定率はわずか0.19%で、診療所の再診料引き下げによって得られた財源で病院の手術料などの改善を行ったとはいえ、乏しい財源では重点化せざるを得ないとして、プライマリケアを行っている地域の診療所や中小病院のことは顧みなかった。

 今回の診療報酬と介護報酬の6年ぶりの同時改定でも、「開業医の年収2700万円」などと誤った情報を新聞各社に報道させ、2012年度予算案で財務省は、民間給与が低下傾向にあることから医師の技術料を1%引き下げるとした。

 しかし、診療報酬とは医師・歯科医師の給料だけでなく、看護師や歯科衛生士、事務員、理学療法士、作業療法士など医療従事者全ての給料でもあり、地域経済を支えているのみならず、国民医療の質も決めている。

 その大きな現れが、歯科の診療報酬体系である。技術的に確立されているにも関わらず、医療費が増大するからと新しい治療法が保険適用されていない。小宮山厚労相は「プラスを主張する考えは変わっていない」とし、民主党もプラス改定を求め、大臣折衝の結果500億円の診療報酬本体引き上げを行うこととした。医科1.55%、歯科1.70%、調剤0.46%合計1.38%の引き上げとなった。

 しかし、薬価のマイナス1・26%と材料費のマイナス0.12%、合計マイナス1.38%との差し引きでは、全体で0・004%と、ほぼゼロ改定となっている。これでは高齢化や医療技術の進歩に伴う医療費の増大を賄うことはできない。

 しかも重点項目としては、前回同様、救急、産科、小児科、外科等の急性期医療を適切に提供し続けることができるよう、厳しい労働環境にある病院勤務医など医療従事者の負担軽減や処遇改善、地域医療の再生を図る観点から早期の在宅療養への移行や地域生活の復帰に向けた取り組みの推進、がん治療、認知症治療などの推進などとされた。多くの開業医が望む初・再診料の引き上げはまたしても見送られそうである。

 今年で制度開始から51年目の国民皆保険制度の根幹であるプライマリケア充実のために、今後の中医協の議論の場へ、初診料、再診料の引き上げと不合理点数の是正と確立された治療法の保険適用を強く要望していこう。