2026年9月25日(2143号) ピックアップニュース
主張 骨太の方針2026
人々を豊かにするのは技術革新かセーフティネットか
政府は7月21日に「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太の方針2026)を閣議決定した。
庶民の生活が豊かにならないのは、経済発展が停滞しているためである。そのためには2040年をめどとして、AI・半導体・防衛・量子コンピューター・GX・創薬・先端医療など17分野に370兆円の投資をし、経済を活性化させ、生活を豊かにすると言う。
本当だろうか。
さらに防衛に関しても予算を増額するだけでなく、軍事産業を育成するとのこと。
確かにこれらが成功すれば、日本全体のGDPは増えて、国は富むかもしれないが、その結果庶民の生活は豊かになるのだろうか。疑問は尽きない。
2024年のノーベル経済学賞を受賞したDaron Acemoglu氏とSimon Johnson氏の著書〝Power and Progress〟によれば、技術進歩によって生み出された生産性向上の利益が、必ずしも労働者や社会全体に公平に分配されるとは限らない。
そのことは市場原理を追求する新自由主義下のアメリカのIT、金融長者の資産をみれば一目瞭然だろう。政府の掲げる成長戦略が成功しても、豊かになるのはごく一部の富裕層だけということにはならないだろうかと危惧してまう。
海外で仕事をして、帰国した人が最も称賛するのが、日本の医療制度だと言う。どんな時でも気軽に受診できて、かつ高度な医療までシームレスに受けることができる。その素晴らしい制度は決して一朝一夕でできたものではない。
国民皆保険が始まってから65年、政府の制度設計に加え、現場の医療者のたゆまぬ努力の結果でき上がった制度である。
その医療制度そのものが、医療費抑制政策のため維持困難な状況になってきている。医療費は歳出のかなりの部分を占めてはいるが、その伸びは決して大きくはない。国が医療費を抑制しているため、実際最近10年間国庫(税)負担率は増加していない。
医療費財源の中心は社会保険料収入である。本来、賃金が持続的に上昇すれば、保険料率を大きく引き上げなくても保険料収入は増加する。しかし、企業収益の改善が必ずしも十分な賃上げにつながっていない現実がある。
経済学者の井口克郎氏は、資本主義では労働者が賃上げを要求していかない限り、資本家側は会社の利益と株主への還元に重きをおくと指摘している。政府は骨太方針で賃上げを奨励しているものの、庶民が豊かになるほどの賃上げが可能かどうかは疑わしい。
一方で、診療報酬・介護報酬は国が上げることができる。そして、医療・介護現場は人手不足が続き、医療費が十分でない状態でもその需要は拡大している。すなわち医療・介護は多くの雇用を生み出す産業でもある。そこで働く人々の所得は消費を通じて地域経済に還元され、医薬品、医療機器、流通、住宅、飲食など幅広い産業にも波及する。つまり医療費は単なる支出ではなく、社会への投資であると考えられる。
技術革新かセーフティネットか、ではない。技術革新の利益を人々の豊かさにつなげる。それこそがセーフティネットの役割である。
庶民の生活が豊かにならないのは、経済発展が停滞しているためである。そのためには2040年をめどとして、AI・半導体・防衛・量子コンピューター・GX・創薬・先端医療など17分野に370兆円の投資をし、経済を活性化させ、生活を豊かにすると言う。
本当だろうか。
さらに防衛に関しても予算を増額するだけでなく、軍事産業を育成するとのこと。
確かにこれらが成功すれば、日本全体のGDPは増えて、国は富むかもしれないが、その結果庶民の生活は豊かになるのだろうか。疑問は尽きない。
2024年のノーベル経済学賞を受賞したDaron Acemoglu氏とSimon Johnson氏の著書〝Power and Progress〟によれば、技術進歩によって生み出された生産性向上の利益が、必ずしも労働者や社会全体に公平に分配されるとは限らない。
そのことは市場原理を追求する新自由主義下のアメリカのIT、金融長者の資産をみれば一目瞭然だろう。政府の掲げる成長戦略が成功しても、豊かになるのはごく一部の富裕層だけということにはならないだろうかと危惧してまう。
海外で仕事をして、帰国した人が最も称賛するのが、日本の医療制度だと言う。どんな時でも気軽に受診できて、かつ高度な医療までシームレスに受けることができる。その素晴らしい制度は決して一朝一夕でできたものではない。
国民皆保険が始まってから65年、政府の制度設計に加え、現場の医療者のたゆまぬ努力の結果でき上がった制度である。
その医療制度そのものが、医療費抑制政策のため維持困難な状況になってきている。医療費は歳出のかなりの部分を占めてはいるが、その伸びは決して大きくはない。国が医療費を抑制しているため、実際最近10年間国庫(税)負担率は増加していない。
医療費財源の中心は社会保険料収入である。本来、賃金が持続的に上昇すれば、保険料率を大きく引き上げなくても保険料収入は増加する。しかし、企業収益の改善が必ずしも十分な賃上げにつながっていない現実がある。
経済学者の井口克郎氏は、資本主義では労働者が賃上げを要求していかない限り、資本家側は会社の利益と株主への還元に重きをおくと指摘している。政府は骨太方針で賃上げを奨励しているものの、庶民が豊かになるほどの賃上げが可能かどうかは疑わしい。
一方で、診療報酬・介護報酬は国が上げることができる。そして、医療・介護現場は人手不足が続き、医療費が十分でない状態でもその需要は拡大している。すなわち医療・介護は多くの雇用を生み出す産業でもある。そこで働く人々の所得は消費を通じて地域経済に還元され、医薬品、医療機器、流通、住宅、飲食など幅広い産業にも波及する。つまり医療費は単なる支出ではなく、社会への投資であると考えられる。
技術革新かセーフティネットか、ではない。技術革新の利益を人々の豊かさにつなげる。それこそがセーフティネットの役割である。



