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兵庫保険医新聞

2011年7月25日(1661号) ピックアップニュース

但馬支部が地域医療懇談会 〝集約化〟で病院疲弊 地域医師会・病院長が出席

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但馬の病院や医師会、看護師会が出席し、
地域医療の課題を検討した(豊岡市民会館)

 東日本大震災被災地とも共通する深刻な医師不足や診療科の閉鎖など、地域医療の存続が大きな問題となっている但馬で、同支部が7月10日に第25回総会記念企画として、地域の公立・民間病院長や医師会長らを招いて懇談会を開催した。公立病院の集約化を進める国・県の方針のもとで、地域医療をどう守るかについて参加者は活発に議論を交わした。

 「但馬の医療問題」をテーマにした懇談会は、豊岡市医師会会長、行政から県立但馬長寿の郷郷長、香住、梁瀬、八鹿、但馬の各公立・私立病院院長、県看護協会但馬支部役員、たじま医療生活協同組合理事長と、但馬支部役員など15人が参加。但馬地域の医療の実態や医師不足問題の対応などについて意見交換した。
 あいさつした新田誠但馬支部長は、医師不足問題の根本には国の公的医療費抑制、医師数抑制政策があると指摘。豊岡病院などの高機能病院のみに医師を集約し重視するのではなく、地域医療を担う中小病院も守る必要があると強調した。
 意見交換では、「救急外来システムが大きく変わり戸惑いがある。開業医からの紹介患者が救急として扱われない事例があり、不満の声が上がっている」「この間の医療再編によって豊岡病院へ医師が集約化され、ドクターヘリの運航など3次救急は充実したが、1次・2次救急を担う地域の中小病院は医師不足で疲弊している」など、病院の集約化によって、地域病院での救急患者の受け入れが困難になっている状況が報告された。
 また、「当時、豊岡病院の3次救急を担う若手医師がいなくなり、医療再編の目的は3次救急の再建だった。救える命を救うための『最後の砦』の機能を守ることが再編の最大の使命。但馬を一つの病院として大きく考えてほしい」との意見も出された。
 医師不足問題については、「単なる頭数だけの問題ではなく診療科・地域の偏在が根底にある」「研修医や若手医師にとって魅力的な病院づくりが大切。そのためには国・県の予算措置やサポートが必要だ」「今の医局制度を見直す時期に来ているのでは」「医師確保は大事だが、長年但馬の地域医療に尽力してきた勤務医への配慮も必要」などの指摘があった。
 さらに、「看護師は病診・病院間の連携調整役として、多忙な医師に気を遣いながら日々仕事をしている。現場の医師から高圧的な態度で対応されることも少なくなく、ストレスを感じ退職する人もいる」として、看護師の不足や過重な労働実態についても切実な声が上がった。
 参加者らは、但馬の医療を守るためには、医療者が地域医療を守る立場で住民と協力・共同することが重要だと確認しあった。

「但馬の医療問題懇談会」出席者※敬称略

豊岡市医師会会長          赤松  亮
県立但馬長寿の郷郷長       細川 裕平
公立香住病院院長          浦辺 啓太
公立朝来梁瀬医療センター院長  木山 佳明
公立八鹿病院院長          宮野 陽介
但馬病院院長             近藤 公人
県看護協会但馬支部支部長    中井 弘美
県看護協会但馬支部副支部長  岩本 房子
県看護協会但馬支部        森本 七重
たじま医療生活協同組合理事長 前田 貞夫

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