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兵庫保険医新聞

2012年12月05日(1705号) ピックアップニュース

こども病院 ポーアイ移転でいいの? シンポジウムに150人 防災リスク、拠点病院の一極集中、患者の思い... どこから見ても無謀な計画

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(上)シンポジウムで議論する報告者4氏。
(下)兵庫県医師会館ホールに150人が集まった。

 シンポジウム「県立こども病院 ポーアイ移転でいいの?」が11月24日、兵庫県医師会館で行われ、市民ら150人が参加した。県医師会理事、防災の専門家、東日本大震災経験者、患者会代表の4人が報告し、ポートアイランド移転計画が無謀であることがうきぼりになった。シンポジウムは最後に「決起集会」として、移転計画を撤回させようとアピールを採択した。主催は「県立こども病院のポーアイ移転計画を撤回させ、周産期医療の拡充を求める会(略称・こども病院連絡会)」。

 池内春樹協会理事長が主催者を代表してあいさつし、こども病院連絡会を結成して県民運動として広げてきた経緯を報告。続いて川島龍一県医師会長が来賓あいさつを述べ「医師会は当初から反対してきた。皆さんの請願署名運動を成功させ、知事に県民の声を届けていただきたい。県医師会も一緒にがんばっていきたい」と、こども病院連絡会の運動を激励した。



南海トラフ巨大地震で孤立必至

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川島県医師会長があいさつ

 シンポジウムは協会の西山裕康理事がコーディネーターを務めて進行。
 橋本寛県医師会理事・橋本ファミリークリニック院長が基調報告し、こども病院が全国で2番目にできた小児専門病院であり、総合周産期母子医療センターとしては県下唯一であるなど、こども病院の位置づけを明らかにしながら、今回の移転計画の経緯を説明した。ポーアイ移転を含めた地域医療再生計画を国に申請するには、県医師会など医療団体の意見を反映することが条件として求められているが、県は厚労省に対して医師会の同意があったかのように説明しているとし、事実は、一貫して反対を表明し申し入れを行ってきたなどとした。
 続いてシンポジスト3氏が報告。神戸大学名誉教授で地質学が専門の田結庄良昭氏は、南海トラフ巨大地震によるこども病院の被害予測を報告。南海トラフ巨大地震は3分間以上の長時間地震動が継続するとし、阪神・淡路大震災以上の激震に見舞われることになるとした。
 また、液状化による地盤沈下で、水道などのライフラインが機能しなくなること、病院周辺で液状化対策を行ってもポートアイランド1期地は再び液状化するため孤立せざるをえないこと、津波は遡上高が1・5倍となり、護岸高4~6メートルを容易に乗り越えると指摘。さらに津波で火がついたタンクが押し寄せれば、火災による被害が想定されるとした。
 宮城県の坂総合病院名誉院長の村口至先生は、東日本大震災経験者として報告。兵庫県のこども病院移転計画を聞いて、「高台から人工島へ移すなんて信じられない」と強調。東日本大震災では海岸地域にあった石巻市立病院などが津波に襲われ機能を失ったのに対し、高台にあった気仙沼市立病院、岩手県立大船渡病院、石巻日赤病院は津波を免れ災害拠点病院として役割を果たしたと紹介。3・11の教訓として、単なる津波高だけでなく地盤沈下、横移動の想定、幹線道路は車が殺到し、病院へのアプローチが一本では運行不能になるなどとし、病院は大震災時に救援の拠点として全県的機能が求められるが、こども病院がどういう役割を果たすのかの構想が見られないと指摘した。
 全国心臓病の子どもを守る会兵庫県支部代表の米澤美左子氏は、こども病院の創立が、心臓病児の親の手紙が金井元彦県知事に届けられたことから始まり、ファミリーハウスの設置など、同会とともに歩んできたと報告。
 しかし今回は、県側から決定するまでに何の相談もなく、また質問をしても回答が得られないと怒りをこめて報告した。病児が大人になり小児科に通えなくなる「キャリーオーバー」についても、県は神戸市立中央市民病院と隣接することで解決するとしているが、市民病院自身が、「キャリーオーバー」に対応できないと表明していると指摘した。
「厚労省は医師会の合意必要と判断」
 シンポジウム第2部では、コーディネーターの西山理事が、県病院局にシンポジストを要請したが了解を得られなかった経過を報告して討議。フロアから山下芳生参院議員(日本共産党)が、国会での審議と厚労省の対応を発言し、「厚労省としては医療関係団体の合意がなければ計画は見直すべきとしている」と指摘。医療団体の合意なくして地域医療の再生などできるはずがないと、県の姿勢を厳しく批判した。
移転撤回のアピール採択
 シンポジウムは最後に、フロアからこのシンポジウムを決起集会にしてはとの提起を受けて、コーディネーターの西山理事がアピールの発表を提案。会場いっぱいの拍手で確認された。
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