兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2013年7月15日(1724号) ピックアップニュース

燭心

 夏至が過ぎ今は小暑「ハス始めて開く」季節だ。毎年夏になると暑い中何故かさびしくなるのは、8月15日の終戦記念日が近づくためかもしれない。旧暦7月15日はお盆だ▼こどもの頃、太平洋戦争で小児科医だった祖父をフィリピンのミンダナオ島で亡くした祖母が仏壇の手入れをするのを手伝った。色々なお道具を磨くのが楽しかった。きゅうりやなすに割りばしで足を作って精霊馬を作るのも楽しかった。でも祖父がいればもっと楽しかったに違いない▼祖父に赤紙が来た時、姫路電報電話局で電話交換手に駆り出されていた母は姫路駅まで見送りに行った。泣きそうになる母に「泣いたらいけないよ。どこでスパイが見ているかもしれない」と言ったのが母が聞いた祖父の最後の言葉になった。姫路にも空襲があった。燃え盛る焼夷弾の恐怖を母はよく話してくれた。よほど怖かったのだろう▼一方軍医としてビルマから広島の船舶司令部に転属した父は「何もできなかった広島の方々に申し訳ない」と原爆の話をしなかったが、がんの療養中に自伝として広島原爆の悲惨さを書いた▼戦後68年、戦争の悲惨さと終戦の玉音放送を聞いた時の安堵感。日本国憲法ができた時の喜び。戦争を経験していない私たちが戦争を経験した方々からお話を聞く機会も年々減っている▼真夏の夜、満天の星を見上げながら天寿を全うできずに亡くなった太平洋戦争の犠牲者の皆さまが何を望んで死んで逝かれたか、よく考えよう(水)
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