兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2016年9月25日(1825号) ピックアップニュース

2016年度 会員意見実態調査
(2)診療報酬改定(歯科) 6割超が改定に不満

 2016年度会員意見実態調査の結果について、今号は歯科の診療報酬改定について詳報する。

 「今回の診療報酬改定に対する評価」について聞くと、「不満」50.0%、「おおいに不満」11.1%と、あわせて6割超の会員が不満を表明している。「満足でも不満でもない」が29.6%あり、「満足」は5.6%にすぎず、「おおいに満足」は0%だった(図1)。
 「改定前と比べた請求額」は、「変わらない」がもっとも多く51.9%、次いで「ややマイナス」29.6%だった。「ややプラス」が7.4%、「かなりプラス」と「かなりマイナス」はそれぞれ3.7%だった(図2)。
 今回の歯科診療報酬の改定率は0.61%で若干のプラス改定とされているが、多くの歯科医療機関で請求額は変わらないか減少しており、歯科医療機関の経営改善に資する改定とは言いがたいものである。
「か強診届け出た」13%
 新設された「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」については、「届け出た」と回答した会員は13.0%で「今後届け出る予定」は11.1%だった。7割以上が届け出をしておらず、「届け出たいができない」と回答したのは11.1%だった。
 「届け出をしていない理由(複数回答)」は、「歯周病安定期治療(SPT)の算定実績がない」33.3%、「歯科訪問診療1,2の算定実績がない」31.1%、「設備投資が困難」22.2%、「人員基準を満たさない」22.2%、「患者の窓口負担が高くなり算定しづらい」17.8%と、多くの歯科医療機関にとって「か強診」の施設基準要件のハードルがきわめて高いことを示している(図3)。
 また、今回の改定では周術期の患者に対する医科歯科連携への評価が拡大されたが、「がん患者等の周術期の口腔機能管理」に対しては「取り組みたいが方法がわからない」27.8%でもっとも多く、次いで「今後連携して取り組みたい」が25.9%で連携に前向きな回答が半数を超えたが、「取り組むつもりはない」も27.8%あった。「積極的に連携して取り組んでいる」は5.6%だった。
歯科訪問診療「実施している」3割
 「歯科訪問診療」については、「実施しており続ける予定」が33.3%、「実施していないし今後も行わない」31.5%、「要請があれば検討」29.6%だった。前回調査(2014年)から大きな変化はなかった。
 「要請があれば検討する」が一定数存在しながらも、実施する歯科医療機関が増えない背景には、時間要件をはじめとする訪問診療をめぐる診療報酬の不合理がある。「歯科訪問診療の診療報酬で改善してほしい項目」では「時間要件の撤廃」が72.2%で群を抜いて多く、次いで「同一建物における複数患者の訪問診療料2,3の引き上げ」38.9%、「歯援診や在推診など施設基準要件の実態に即した見直し」27.8%となっている。
 高齢化の進展とともに歯科訪問診療に対するニーズは高まっており、少なくない歯科医師がそれに応える構えをもっている。一方で、診療報酬上の不合理や低すぎる評価が足を踏みとどまらせている。実態に即した改善が求められている。
切実に望まれる基礎的技術料引上げ
 「今回の改定で影響が大きい項目(五つまで)」の設問では、上位から「レジン前装金属冠がブリッジ支台歯に限り第一小臼歯まで拡大」53.7%、「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準の新設」33.3%、「補綴時診断料の算定要件変更」27.8%、「歯科疾患管理料の文書提供要件の削除による点数引き下げと文書提供加算の新設」25.9%、「平行測定の廃止とブリッジ支台歯形成加算の新設」24.1%などだった。
 「今後、歯科診療報酬のどういう点を改善してほしいですか(複数回答)」では上位から、「初診料・再診料の点数引き上げ」64.8%、「基礎的技術料の引き上げ(歯周治療、根管治療、有床義歯など)」63.0%、「有床義歯における調整料の評価復活」63.0%、「包括された技術料の復活」40.7%、「金パラ材料価格設定の見直し」38.9%、「『かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所』の施設基準要件の大幅緩和」31.5%となった(図4)。
 今回の診療報酬改定は、多くの歯科医療機関にとって満足できるものではなく、初・再診料、基礎的技術料の引き上げが切実に望まれている。同時に、一層の受診抑制を招く政府の患者負担増計画に反対し、お金の心配なく受診できるよう患者負担軽減を求めていくことが必要である。

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