兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2017年3月15日(1840号) ピックアップニュース

RCEP交渉会合 関連企画
アジア各国で高薬価是正を

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国際NGOとの懇談後、グプタ氏から贈呈されたHIV患者支援のTシャツを着て、皆で連帯を確認。右から、ヴ・ゴック・ビン氏、武村義人協会副理事長、西山裕康理事長、シェイリー・グプタ氏、幸田雄策政策部員、加藤擁一副理事長、内田聖子・アジア太平洋資料センター共同代表、アントニオ・サルバドール氏、岡崎衆史・農民運動全国連合会国際部副部長

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映画上映後、高薬価問題について発言する
西山理事長

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2月26日には、鳩山元首相が自由で平等な貿易が必要と訴えた

 東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)第17回交渉会合の神戸開催(2月27日から3月3日まで)にあわせ、協会や市民団体等でつくる「RCEPに対する国際市民会議」が神戸市内で協定のあり方を考えるなどの企画を開催した。また、協会は3月1日、交渉会合に合わせて来日中のNGOメンバーと懇談を行い、各国の医療政策について交流。グローバル製薬企業や保険会社から市民本位の医療を守るため、力をあわせようと確認した。

国際NGOと各国医療の現状を交流
 懇談に参加した国際NGOのメンバーは「国境なき医師団・インド」のシェイリー・グプタ氏、ベトナムのNGO「人口・家族・子供研究所」のシニアアドバイザーを務めるヴ・ゴック・ビン氏、NGO「トレード・ジャスティス・フィリピン」のコンサルタントで弁護士のアントニオ・サルバドール氏。
 協会からは西山裕康理事長をはじめ、武村義人・加藤擁一両副理事長、幸田雄策政策部員が参加した。
 グプタ氏は、RCEPなど国際的な自由貿易協定に盛り込まれている製薬企業の知的財産権を強力に保護する条項が、ジェネリック医薬品の製造を妨げ、世界中の難病患者が医薬品を使えない状況だと訴えた。
 ビン氏はベトナムの医療機関はすべて公立だったが、民間に経営が解放され、お金がなければまともな医療を受けられなくなったと述べるとともに、日本がベトナムの地方の医師教育プログラムを支援していることに謝意を示した。
 サルバドール氏は、フィリピンはアジアで日本の次に薬価が高く、公的保険制度にさえ加入できない貧困層は病気になれば、祈ることしかできないと現状を説明した。
 武村副理事長は、日本の国民皆保険制度は他の国と比べて優位性があるが、増える患者負担、医療の営利産業化などが進めば安泰とはいえない、これまで以上に医療制度を守り充実させる運動が必要と述べた。
 国際NGOメンバーからは、協会・保団連もぜひ国際部を組織して、連携して運動を進めてほしいとの要望がだされた。

映画上映会
命に関わる薬手に入らない
 同会議は3月2日に、『薬は誰のものか−エイズ治療薬と大企業の特許権』上映会を元町映画館で開催し、25人が参加。協会からは西山裕康理事長、加藤擁一副理事長、松岡泰夫評議員ら5人が出席した。
 この映画は、国策としてジェネリック医薬品産業を強化し、世界中の途上国に安価な医薬品を提供しているインドで、米国やグローバル製薬企業の圧力により「知的財産権」が強化され、ジェネリック医薬品の製造も輸入も禁止されたことを取り上げたもの。特許の壁を破り、途上国に医薬品を届けようと奔走する医師や活動家、製薬会社などの姿が描かれている。
 上映後は、「国境なき医師団・インド」のシェイリー・グプタ氏とアジア太平洋資料センター(PARC)共同代表の内田聖子氏がトークを行った。
 グプタ氏は、HIV、C型肝炎、結核、がんなどの致命的疾患に対する医薬品へのアクセスが困難となっているとして、TPPと同じくISD条項や知的財産権の保護強化が盛り込まれたRCEPの締結に懸念を表明した。
 これに対し、西山理事長は「日本でも医療費に占める薬剤費が高くなっているが、国民皆保険制度のおかげで患者負担は10数%にとどまり、途上国に比べ患者さんに危機感が少ない。しかし、不透明な薬価決定によって医療費の原資である税金や保険料を通じ、グローバル製薬企業に国民の富が流れる構造は同じである」と発言した。
 内田氏は、TPPでは日本の国民皆保険が崩される懸念が大きかったが、RCEPでは、日本など先進国がASEAN諸国に圧力をかけており、われわれも無関心でいられないとした。
 同会議は2月26日にも、協会会議室で学習会を開催し、鳩山由紀夫元首相とニュージーランド・オークランド大学教授のジェーン・ケルシー氏が講演。それぞれ「加盟国皆が発展するような協定を」「秘密交渉ではなく、市民に開かれた協定に」などと訴えた。(前号既報)

RCEP:ASEANに加盟する10カ国と日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インドが交渉に参加する広域経済連携協定
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