兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2017年3月25日(1841号) ピックアップニュース

燭心

 6回目の3・11。被災地の人々は復興に向けて歩み続けている。しかし、いまだ多くの避難者が存在し関連死、自殺、孤独死は後を絶たない▼政府の思惑はどうか。政府主催の追悼式で、安倍総理は「復興は着実に進展しており新しい段階に入りつつある」と復興の加速を何度も強調した。一方、過去の追悼式では毎年述べてきた「原発事故」という言葉を一切使用しなかった。これに対し「違和感がある」と福島県知事は不快感を隠さない▼翌12日のNHK日曜討論では、今村復興担当大臣が自主避難者に向け「故郷を捨てるのは簡単だ」などと言い、「戻って頑張っていくという気持ちを持ってほしい」と帰還を促した。原発事故など早く忘れて、故郷のために頑張るのは当然だと道徳観を強要する▼安倍首相が「原発事故はアンダーコントロール」とうそぶいて五輪を誘致したことは記憶に新しい。山口二郎法大教授は「安倍政治の本質は忘却だ」と切り捨てる。戦後70年談話で「侵略」「お詫び」の文言を入れたがらなかった首相は、先の大戦さえもなかったことにしたいのだろう▼武器輸出三原則の撤廃や集団的自衛権行使容認の閣議決定、特定秘密保護法、安保法制の強行採決など国民不在の政治手法は、与党議員に語り継がれる「国民はやがて忘れる」という永田町の経験則に基づいているのだろうか。忘却とは忘れ去ることなり。忘れえずして忘却を誓う心の貧しさよ! 嗚呼、この政権に明日はない。(九)
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