兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2019年5月15日(1909号) ピックアップニュース

燭心

 床屋のチャーリーが世界に語りかける。「皆が雇用の機会を与えられる、君たちが未来を与えられる、老後に安定を与えてくれる...そんな約束をしながら獣たちも権力を伸ばしてきたが、奴らは嘘をつく。約束を果たさない。これからも果たしはしないだろう。独裁者たちは自分たちを自由にし、人々を奴隷にする。」▼1940年公開の無声映画「独裁者」の中で喜劇王チャールズ・チャップリンはナチズムとヒトラーを痛烈に批判した。モダン・タイムス、独裁者、殺人狂時代と立て続けに送り出した風刺作品は現在においても輝きを失ってはいない▼4月20日、自民、維新、無所属候補らが対決した補欠選挙のさなかに安倍首相が吉本新喜劇に出演した。6月のG20の宣伝のためのサプライズだったそうだが、江戸の文化とは一線を画してきた上方のお笑いファンからはブーイングの嵐だという。続く4月21日に教育業界に参入することを発表した吉本興業。若者に人気の吉本芸人の政治利用が相次ぐ安倍首相とさらなる蜜月ぶりをあらわにした形だ。近年、吉本興業は沖縄の若者を対象にした市場開拓に力を注いでいるが、ここにもきな臭いにおいを感じる▼落語や漫才なども含めて喜劇は風刺のきいたユーモアであってこそ大衆に受け入れられるものであろう。アメリカを追放されたチャップリンは言う。「私は祖国を愛している。だが、祖国を愛せと言われたら私は遠慮なく祖国から出ていく」。国を愛するとはそういうものだ(九)
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