兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2019年9月25日(1921号) ピックアップニュース

主張
国民が安心して暮らしていける年金制度に

 厚生労働省は、先月27日に、〝公的年金の財政状況と給付の見通しに関する財政検証〟を発表した。この〝財政検証〟は、2004年に、年金の給付水準を経済状況に合わせて自動削減する仕組みである「マクロ経済スライド」が導入されて以来、5年に1度されているものである。
 これによると、30年後の年金水準は、モデル世帯(夫40年間会社勤務・妻専業主婦)で、経済成長が「進む」とした場合でも、2019年水準からおよそ2割削減されるというものである。「マクロ経済スライド」の影響は、基礎年金部分に大きく、国民年金(基礎年金)にしか入っていない自営業者や、パート労働者、比例報酬部分の少ない低賃金の労働者では、削減幅は3割にもなる。これでは、高齢期の暮らしは、立ち行かなくなる。
 金融庁が6月初めに公表した「高齢社会における資産形成・管理」の報告書では、老後に年金だけでは2千万円不足すると指摘している。安倍内閣は「誤解を与える」として、報告書の受け取りを拒否したが、現在でも、年金だけでは暮らせないのが現実である。
 総務省の「家計調査報告(2018)」によると、2人以上の全世帯の貯蓄額の中央値は1036万円と、先の金融庁報告書の言う「必要額」の半分である。また、日銀の調査(2016年「家計の金融行動に関する世論調査」)では、2人以上の世帯ではおよそ30%、単身世帯ではおよそ50%が「貯蓄ゼロ」であり、2012年調査から大幅に増えている。〝アベノミクス〟により、貧富の格差が増大していることが見て取れる。
 公的年金は、国民皆保険制度とともに、日本の社会保障の二つの柱である。社会保障改革と称して切り捨てることは、許されない。私たちは、医療改悪に反対する運動とともに、年金制度の拡充にも取り組みたいと考える。当面、巨額の年金積立金を活用するなどして、国民が安心して暮らして行ける年金水準の確保を求めたい。
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