兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2019年10月25日(1924号) ピックアップニュース

燭心

 芸術の秋である。各地で芸術祭がたくさん開かれている。県内でも、長田や六甲山、篠山や養父でも、恒例のイベントがある。あれも行きたい、これも行きたいと目移りするのだが、思うにまかせないのが残念である▼さて、今年最大のトピックスになってしまいそうなのが、あいちトリエンナーレの〝表現の不自由展・その後〟である。過去に「政治的」などの理由で展示を拒否された作品を改めて展示しなおす企画だ。同企画の監督によると、撤去された作品の実物とともにその経緯を鑑賞することで、「表現の自由」という現代的な問題について議論するきっかけを作りたかったという。楽しみにしていたら、3日目に突然中止となり、とうとう行けずじまいになった。鑑賞の自由を奪われて腹立たしい▼〝不自由展〟の公式サイトには、出展作家の作品の写真や展示中止に至ったいきさつが書かれてある。多くが行政の圧力によるものだ。今回も、主催地市長の、展示作品について「日本人の心を踏みにじるものだ。即刻中止していただきたい」などの発言が、契機になっている▼作品に抗議があったと言うが、自由に感想を持つことができるのが芸術である。不快感を持つ人も、共感を示す人もいるだろうが、その多様性を保障するのが憲法21条ではないのか。今回、多くの世論で、何とか再開にこぎつけた。作品鑑賞にいちいちボディチェックはものものしいが、立ち上がった人々の努力に感謝したい。新たな作品ができた思いがする(星)
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