兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2020年1月25日(1931号) ピックアップニュース

2020年度 診療報酬改定
安倍政権下4回連続マイナス

 政府は昨年12月17日、2020年度診療報酬について、全体でマイナス0.46%となる改定率を発表した。内訳は、本体プラス0.55%、薬価マイナス0.99%、材料価格マイナス0.02%。第2次安倍政権発足後の2014年度改定以降、4回連続のマイナス改定となる。

協会は抗議声明
 協会は、「診療報酬を大幅に引き上げ、公的医療を提供する医療機関の経営を安定させ、窓口負担を軽減することこそ、すべての国民が、その支払い能力に関係なく、安全・安心で質の高い最適な医療を受ける、という公的医療保険の基本的方針である」として、1月11日の理事会でマイナス改定への抗議声明を採択した。
 改定率も踏まえ、加藤勝信厚生労働大臣は1月15日に中央社会保険医療協議会(中医協)へ改定内容を諮問。同日、「令和2年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理」(以下、「議論の整理」)が発表された。厚労省は1月15日から22日にかけて、「議論の整理」についてパブリックコメントを実施。協会は意見を提出するとともに、会員医療機関に意見提出をFAXで呼びかけた。意見集約を踏まえ、中医協は2月上旬に改定内容を厚労大臣へ答申する予定。

診療報酬改定・中医協「議論の整理」のポイント
「かかりつけ医機能」による選別変わらず
 決定された改定率をふまえ、1月15日に厚労省の中央社会保険医療協議会(中医協)が発表した「令和2年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理」のポイントを解説する。

医科
※「○」が抜粋。太字は協会コメント
「かかりつけ機能」評価
 この間の改定同様、「かかりつけ機能の評価」が重点の一つに掲げられている。「外来における継続的かつ全人的な医療の実施を推進する」としているが、「かかりつけ機能」という厚労省の尺度で医療機関を選別評価するのではなく、診療所や病院が地域医療で担っている役割を正当に評価し、初・再診料そのものを引き上げるべき。
 ○初診料の機能強化加算の「かかりつけ医機能」周知の要件見直し
 ○再診料の地域包括診療加算の要件見直し  ○医師による重複投薬の把握や薬局による重複投薬の確認の結果を活用して、重複投薬に関する他医療機関との連絡・調整等を行う取組の評価
 ○紹介先の他医療機関から紹介元のかかりつけ医機能を有する医療機関へ情報提供した場合の評価
 ○小児かかりつけ診療料及び小児科外来診療料の対象患者等の要件見直し
 ○小児抗菌薬適正使用支援加算の対象患者や頻度等の要件見直し
 ○医療的ケア児が安心して安全に学校に通うことができるよう、主治医から学校医等への診療情報提供の評価
 ○紹介状なし大病院受診時の患者定額負担や、紹介率・逆紹介率の低い大病院に対する初診料等減算について、対象医療機関の範囲見直し
 患者定額負担の拡大はフリーアクセス制限につながる。また、紹介・逆紹介率が低いことによる初診料等減算などのペナルティも、診療報酬の在り方として適切でない。
オンライン診療の拡大
 情報通信機器を用いた診療は推進ありきで拙速な適用拡大が狙われている。エビデンス等、慎重に議論すべき。
 ○情報通信機器を用いて行う診療について、対面診療と組み合わせた活用を適切に推進する観点から、実施方法や対象疾患等の要件見直し
 ○外来患者及び在宅患者に対する情報通信機器を利用した遠隔服薬指導の評価
複数医療機関の訪問診療など一部改善
 ○複数の医療機関が連携して行う訪問診療について当該医療機関間で情報共有した場合、依頼先の医療機関が6か月を越えて訪問診療を実施できるよう要件見直し
 協会・保団連が要求してきたことだが、月1回までとする算定制限も撤廃すべき。
 ○退院直後に小規模多機能型居宅介護又は看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)を利用する医療的なニーズの高い患者について、宿泊サービス利用中の訪問診療の要件見直し
 他施設の空き待ちなどを背景としたロングショートステイが多い実態からも、協会・保団連が要求してきたように訪問診療等についてサービス利用前30日以内の実績と利用後30日間のみの算定という制限自体を撤廃すべき。
超音波検査で複数見直し
 ○胸腹部の断層撮影法について、対象となる臓器や領域により検査の内容が異なることを踏まえ、その実態を把握するための要件見直し
 ○超音波検査について、主な所見等を報告書又は診療録に記載するよう要件見直し
 ○超音波診断装置の高性能化により超音波検査のパルスドプラ機能が標準的に搭載される機能となっていることを踏まえたパルスドプラ法加算の評価見直し
入院料 「重症度、医療・看護必要度」厳格化など
 ○一般病棟用の重症度、医療・看護必要度について、判定に係る項目や判定基準等や該当患者割合の要件見直し
 急性期病床の絞り込みを企図した「重症度、医療・看護必要度」基準の一層の厳格化が狙われている。
 ○療養病棟入院基本料の医療区分3の評価項目のうち、「中心静脈栄養を実施している状態」の要件見直し
 ○中心静脈カテーテル等の長期留置を行っている患者に対する感染管理体制を求める等、療養病棟入院基本料の要件見直し

歯科
院内感染対策研修を関係職員まで拡大
 「歯科外来診療における院内感染防止対策を推進する観点」として、常勤の歯科医師だけでなく関係する職員を対象とした研修会を行うこととし、基本診療料の評価を見直すとした。
 「歯科医療機関における医療安全に関する取組を推進する観点」として、外来環(歯科外来診療環境体制加算)の施設基準は、歯科医師および歯科衛生士の配置等の要件を見直すことが示された。
 協会は、厚労省に対し、院内感染防止対策を引き合いに導入された基本診療料の減算制度(歯初診)を廃止することを要望してきた。歯初診の届出は、全国で95%(兵庫は95.5%)と、廃院予定や意図的に届出しない先生を除けば実質100%であり、感染対策等の院内研修は各医療機関で行っている。届出・減算ルールは廃止した上で、歯科初診料・再診料を大幅に引き上げるべきだ。
歯管の見直しSPT対象外のPで継続治療する場合の新たな評価
 「歯科口腔疾患の重症化予防の観点」として、歯科疾患管理料について、初診時の評価を見直すとともに、長期的な継続管理について新たな評価を行うことが示された。
 歯周病安定期治療(SPT)の対象となっていない歯周病を有する患者に対する継続的治療について新たな評価を行うことが示されている。
 「ライフステージに応じた口腔機能管理を推進する観点」として、歯科疾患管理料の口腔機能管理加算および小児口腔機能管理加算(小機能)の要件等を見直すことか示された。なお協会が、小機能の評価の引き上げと患者提供文書の改善などを重ねて要請したことを受けた、田村智子議員(日本共産党)の質問主意書に対して、「(提供文書について)様式や記載すべき文言が定められているものではない」とする厚労省の答弁を引き出している。
周術期等口腔機能管理や歯科固有技術の評価
 その他、周術期等専門的口腔衛生処置の要件の見直し、CAD/CAM冠の対象見直し、手術用顕微鏡を用いた根管充填処置の対象見直し、抜歯等の手術における歯科麻酔薬の算定と、歯科技工料調査結果を踏まえた歯冠修復および欠損補綴等の評価の見直し等が示された。
 協会は、歯科の基礎的技術料を大幅に引き上げて、歯科医師のみならず歯科衛生士・歯科技工士の評価も上げることが、歯科医療の質の担保につながると主張してきた。
 また、今も高騰が続く歯科用金属の逆ザヤ問題は喫緊の大問題である。対応を先延ばしせず、治療するほど医療機関の持ち出しが増大する事態を早期に解決するよう、厚労省に対し強く重ねて求めていく。



 政府が診療報酬の改定率を決定したことを受け、協会が1月11日に発表した抗議声明の全文を掲載する。

内閣総理大臣 安倍晋三 殿
診療報酬マイナス改定に抗議する
2020年1月11日
兵庫県保険医協会
第1105回理事会
 政府は昨年12月17日、2020年度診療報酬改定について、本体プラス0.55%、薬価マイナス0.99%、材料価格マイナス0.02%、全体でマイナス0.46%とすることを決めた。社会保障費の抑制路線のもと、安倍政権で4回連続のマイナス改定となる。
 診療報酬は、国民が公的医療保険で受けられる医療の質と範囲、量を規定するものであるとともに、医療機関が非営利で必要十分な医療を患者、国民に提供するための原資である。この間の度重なる診療報酬のマイナス改定は、入院患者に早期退院を促したり、必要なリハビリを途中で打ち切ったりせざるを得ないなど、患者負担増と相まって、患者、国民が安心して必要な医療を受けられない状況を生みだしている。
 また、医療経済実態調査結果から明らかなように、医療機関の経営は厳しい状況が続き、医療従事者の給与水準は低いままにとどまっている。このような医療費抑制策のもと、医療現場は医師ら医療従事者の長時間過密労働によって支えられている。政府は「医師の働き方改革」の必要性を強調し、本体改定率プラス0.55%のうち、0.08%は「消費税財源を活用した救急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応」としているが、働き方の改善に必要なのは一時的ではなく恒常的な措置である。
 今次改定では、薬価・材料の引き下げ財源の診療報酬本体への振替が行われなかった。2014年から4回連続であり、今回は発表資料から「本体」との表現がなくなった。薬価・材料費を診療報酬の外枠としようとの思惑が透ける。しかし、この振替措置は、1972年の中医協建議以来、厚生(労働)大臣や首相が公式に合意し、医療制度の改善のために尊重してきたものだ。働き方改革を言うならば、高薬価が社会的な問題になっているなか、より一層この財源を診療報酬本体に振り向けるべきである。
 そもそも、「社会保障改善のため」と国民に消費税増税で重い負担を課しながら、「消費税財源を活用した」対応が一時的にとどまるのは、これが法人税減税などの穴埋めに使われ、社会保障充実に使われていないということを示唆している。大企業や富裕層へ適切な課税を行い、医療・社会保障の充実を行うべきである。
 診療報酬を大幅に引き上げ、公的医療を提供する医療機関の経営を安定させ、窓口負担を軽減することこそ、すべての国民が、その支払い能力に関係なく、安全・安心で質の高い最適な医療を受ける、という公的医療保険の基本的方針である。私たちはマイナス改定に抗議し、診療報酬大幅引き上げと患者窓口負担の引き下げを求める。
以上

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