兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2021年3月25日(1969号) ピックアップニュース

主張 東京電力福島第一原発事故から10年
原発ゼロ、再生可能エネルギーへ今こそ転換を

 2011年3月11日の東日本大震災・東京電力福島第一原発事故から10年の月日が過ぎた。
 メディアでは事故現場の現在の様子が報道されているが、10年経っても原発建屋内には立ち入ることも難しい状況だ。いまだに事故原因は解明されておらず、原発の規制基準を多少強めただけで、事故を教訓に事故回避策や重大事故発生時の対応策が十分に練られたシステムの構築がなされているとは言い難い。
 原発事故発生想定時の住民避難計画はとても実効性のあるものとは思えない。しかし、それでも原発稼働の要件に避難計画が入っていない現状は、この国の政府がいかに無反省で無謀で無責任で亡国的であるかを示している。チェルノブイリ原発事故時には、放射線量が規定に達していない区域でも移住が行われたが、福島第一原発事故ではそれらを避難指示区域外として被害を矮小化し、除染や賠償を回避し続けたにもかかわらず、10年間でかかった事故費用は、すでに23.5兆円にのぼる。収束までにどれだけの時間と費用がかかるかはいまだ不明で、80兆円にのぼるとの試算も出ている。
 しかし事故を起こした政府と電力会社は、いまだに原発に執着しつづけている。国のエネルギー政策を決める「エネルギー基本計画」では2030年度の電源構成として原子力を2割にするとしている。「発電時にCO2を排出しないので温暖化対策に有効」として原発推進を打ち出し、昨年末に発表された経産省の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では「原子力は安定的にカーボンフリーの電力を供給することが可能」として現在の原発に加え、『高温ガス炉』という、まるで原発ではないかのような呼称で新型炉の研究開発を進めようとしている。
 原発から排出される猛毒の放射性廃棄物の無害化には10万年もの保管が必要になる。このような原発を環境対策として打ち出すことなどもってのほかである。政府が昨年秋に打ち出した「2050年温室効果ガス排出実質ゼロ」には原発推進という理由がある。その思惑に踊らされてはならない。
 私たちは、新自由主義と決別し、富の再分配・格差是正を行う福祉国家と、その将来にあったエネルギー計画の創出が望ましいと考える。省エネとエネルギー効率化に加え、太陽光・太陽熱、水力、風力などの変動再生可能エネルギーや、揚水発電・蓄電池などの蓄エネルギー、地中熱、地熱などの安定的基盤エネルギーを動員すれば、それは可能であると考えている。
 すでに国会では野党議員らによって、2018年に原発廃止・エネルギー政策の転換を実現するための基本法案(原発ゼロ基本法案)が提出されているが、与党は審議を拒み続けている。協会・保団連は脱原発・再生可能エネルギーへの転換を求め、「原発ゼロ基本法の制定を求める」請願署名(下)に取り組んでいる。多くの先生方のご協力をお願いしたい。
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