兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2021年6月15日(1976号) ピックアップニュース

燭心

 愛鳥週間の先月のことである。広島の平和公園にある「原爆の子」の像の鐘の中で、スズメが巣作りを始めた、というニュースを聞いた。原爆白血病で亡くなった少女、佐々木禎子さんがモデルの記念碑で、湯川秀樹氏が「地に空に平和」と揮毫した鐘が釣られている。毎年多くの修学旅行生たちが、折り鶴を捧げ、鐘を鳴らして平和を祈る▼今年はコロナのせいで、多くの学校で修学旅行が中止になり、鐘をつく人が減ってしまったのがどうも原因のようだ。ちゃっかり目を付けたスズメ夫妻には苦笑いである。思わず中国の故事「諫鼓鳥かんこどり」の話を連想してしまう▼堯帝という古代中国の君主が、国の政治に不満があれば、諫鼓(太鼓)を叩いて知らせるようにとお触れを出した。しかし、善政をひいたため人々が太鼓を叩くことはなく、太鼓の上はいつの間にか鳥の巣になってしまった、と言うものである。転じて閑古鳥の語源とも言われている。もっとも、高齢者に医療費負担増を押し付ける今の政治は、とても善政と言えるものではないが▼世界に目を向ければ、相変わらず紛争の火種は各地にあり、核戦争の危険もなくならない。さて、件の鐘には「ひなが巣立つまで温かく見守ってください」と広島市が張り紙をしたらしい。「粋な計らいだね」「ほっこりした気持ちになる」と市民の反応も上々のようだ。この思いやりがあれば、戦争なんてバカなことをしなくてもいいのにと、子育て中のスズメたちもきっと思っていることだろう(星)
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