兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2021年7月05日(1978号) ピックアップニュース

燭心

 ワクチン接種者不足の懸念から、歯科医師もワクチン接種が可能となった。しかし、法律を改正するのではなく、通知による特例として行われた▼思い出すのは約20年前、歯科医師に救急研修を行わせたとして指導医に罰金刑が科せられた市立札幌病院事件である。それまで慣例として行われてきた医科医療施設における歯科医師の麻酔科研修が医師法17条違反として突如として断じられたのである▼実際に私も1986年に神戸の病院で気管内挿管や全身麻酔管理の研修を受けているし、そのようなことは各地で行われていた。今回の特例も、いつ掌を返されるか分からない危うさを感じる▼医学の素人である政治家が安易に「特例」を設けることは正当なのか。歯科医師に接種を行う技量があると認めるならば、歯科医師法を変えるべきであるし、無いと評価するならば接種を行わせるべきではない。現状では、実際のワクチン接種でも一定の確率でアナフィラキシーが起こり得ると認知されており、歯科医師も対応が求められている。また、神経障害は多分に被接種者の心理状態に影響されるもので、「特例で接種する歯科医師」という肩書きも不安の要因になりうる▼しかし、国による補償は議論されていない。現在、全身麻酔をかける歯科麻酔医は普通にいるし、内視鏡検査も行っている。HbA1cをコントロールしながらの歯周病治療も一般的である▼実際の診療内容に合わせて、法律を改めるべきだろう。歯科医師法改正を目指して乾杯。(酔)
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