兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

健康情報テレホンサービス

2024年1月

【木曜】精巣上体炎と精巣炎

 精巣上体とは、陰嚢の中の精巣上部に位置する、精子の成熟に関わっている臓器です。精巣を触診すると、精巣の頭側にコリっとしたものに触れます。それが精巣上体です。精巣上体が細菌などによる感染症を起こした状態を、精巣上体炎と言います。

 症状としては、急性の場合は、精巣上体の腫れと疼痛、38℃以上の発熱が挙げられます。慢性の場合は、起こったり起こらなかったりする痛み、もしくは持続的な陰嚢痛が3 カ月以上あるものとされます。急性の場合と同じく精巣上体の腫れや痛みがありますが、発熱は稀です。精巣の痛みを伴う病気には精巣捻転というものもあり、鑑別が必要です。時に見分けがつきにくく、超音波で血流の有無を確認する必要があります。精巣上体炎は、尿道から精管に細菌が侵入して、炎症を起こすと考えられています。性活動期にある14歳から35歳の発症が多く、尿道炎が原因となることが最も多いです。

 小児では下部尿路奇形という疾患や包茎と関連することが多く、中高年以降では前立腺肥大、尿路感染症、糖尿病、低免疫状態、尿道カテーテル操作・留置、経尿道的手術、膀胱鏡検査などが最も一般的な原因となります。生殖可能年齢の場合には、クラミジアによる症状のこともあります。将来的に精子を前立腺に送る時の通過に障害を起こす可能性があり、注意が必要です。

 高齢者や膀胱癌の治療でBCGの注入をしている時は、結核菌が原因になることもあります。治療としては抗生剤の内服もしくは点滴が必要であり、徐々に疼痛が軽快し、解熱していきます。ただし、精巣上体の腫れは残ってしまうこともあります。

 また、精巣炎はその名の通り精巣に炎症を起こしている状態です。診療で遭遇する頻度はかなり低いですが、精巣炎はムンプス感染に伴い引き起こされることが多く、その他のウイルスによることは稀です。ムンプス感染の数日から1週間程度後に、精巣の腫れと痛み、熱感として発症することが多いです。頻度が低い事もあり、標準的な治療はなく、アイシングや解熱剤での対処しかないのが現状です。細菌感染の可能性が高いと判断した場合には、抗生剤を使用することもあります。治癒後に精巣の委縮に伴う成長障害や、妊娠の為に必要な能力の低下が起こると指摘されることがありますが、いずれも稀です。

 気になる症状があれば、泌尿器科の専門医を受診してください。

2022年 2022年 2021年 2020年 2019年 2018年 2017年 2016年 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年
※健康情報テレホンサービス内検索です。