兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

専門部だより

環境・公害対策部だより

川内原発再稼働許さない「パブリックコメントの提出を」

2014.08.05

川内原発再稼働許さない「パブリックコメントの提出を」


環境・公害対策部長 森岡 芳雄
反核平和部長    近重 民雄

 原子力規制委員会は7月16日、九州電力川内原発1・2号機について、安全対策が新規制基準を満たしているとする「審査書案」をまとめました。8月15日までの意見募集をへて、審査書が決定され、地元の同意などを経て、秋にも再稼働が狙われています。
 しかし、審査をした原子力規制委員会の田中俊一委員長自身が「安全だとはいわない」と発言したように、新規制基準に適合したからといって、原発が安全だとは全くいえません。
 どんなに低い確率でも事故を起こすと取り返しのつかない被害を及ぼし、使用済み核燃料などの処分方法も決まらない原発は稼働すべきではありません。
 協会は、いのちと健康を守る医師の団体として、川内原発の安全性に懸念を示すパブリックコメント(下)を提出しました。
 協会会員の先生方のご意見をぜひパブリックコメントの形で投稿していただいて反映していただければと願っております。よろしくお願い申し上げます。
提出先は、住所・氏名・連絡先を明記の上、FAX03―5114―2179 原子力規制庁安全規制管理官(PWR担当)宛てまで。原子力規制委員会のホームページ(http://www.nsr.go.jp/)からも提出できます。8月15日まで。

 

「九州電力株式会社川内原子力発電所1号炉及び2号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集」への提出文

団体名 兵庫県保険医協会

意見提出者 環境・公害対策部長 森岡 芳雄

                反核平和部長    近重 民雄

 われわれは、いのちと健康を守る医師の団体として、下記の点から、本審査書で認められた川内原発1号炉及び2号炉の安全性に懸念を表明する。

 1.福島第一原発事故の全容が究明されておらず、原電事故に対する根本的な安全策は現在に至るも見出されていない。本審査の基準となる新規制基準は、福島第一原発事故原因のほんの一部に対しての対策しか盛り込んでおらず、そもそも本邦における原発の現時点における安全基準としての科学性を備えていない。

2.本審査の基準となる新規制基準は、欧州加圧水型原子炉の安全設備と比較してみても、①安全上重要な設備の多重性が独立4系統に対して2系統しかない、②原子炉圧力容器外に流出した溶融炉心を格納容器内に貯留するコアキャッチャーの設置が求められていない、③大型商用航空機の衝突に耐え、設計圧力を高めた二重構造の格納容器の設置が必要ないなど、審査基準として不十分である。

3.日本・イスラエル共同声明でも明らかなように、日本のサイバーテロ対策は脆弱であり、原発の安全性はこの点からも保証されているとは言い難い。

4.福島第一原発事故から、万が一事故が起きたときの避難計画の策定が安全性の確保のためには必須である。チェルノブイリ事故後、IAEAが定めた規制対策には「過酷事故時発生対応」として周辺地域に対する緊急避難などの対策が加えられたが、日本ではこれを地元自治体の責任としている。鹿児島県の試算では川内原発から30キロ圏内で、高齢者など要援護者以外の住民の9割が避難するのに最大29時間かかるとされる上、伊藤祐一郎鹿児島県知事は「30キロ圏で要援護者の避難計画を作らないと再稼働できないと言うのなら、全部の原発は事実上動かない」と述べ、住民の安全を確保できる計画はできていないことが明らかになっている。

5.「P20 Ⅲ―1 地震による損傷の防止」で、耐震設計の目安となる基準地震動を最大620cm/s2(620ガル)としているが、2007年の中越沖地震で東京電力柏崎刈羽原発1号機は1699ガルを経験している。地域ごとに基準地震動を設定することよりもこれまでに日本近郊で起きた最大地震動を少なくとも基準地震動とすることが想定外の事態を避けることと考える。川内原発地域における基準地震動は低いといわざるを得ない。

6.「P63 Ⅲ―4.2.2 火山の影響に対する設計方針」で、「本発電所の運用期間中に設計対応不可能な火山事象によって本発電所の安全性に影響を及ぼす可能性について十分小さいとしていることは妥当であると判断した」とし、モニタリングや火山事象評価についても基準に適合しているとしているが、「巨大噴火を観測したことがない。どのくらいの前兆現象が起きるか誰も知らない」と火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣東京大学名誉教授が指摘しているように、「妥当と判断」する根拠がなく、周囲に多数のカルデラを抱える川内原発の安全性は確認されていない。

7.事故時に情報を集め避難指示などの拠点になるオフサイトセンター、「フィルター付きベント」の設置が猶予されたまま、いまだに整備できていない。

8.大飯原発を巡る運転差し止め訴訟において、福井地裁は「具体的危険性が万が一でもあれば、運転の差し止めが認められるのは当然である」としている。川内原発の運転はその危険性の可能性において法的にも到底認められるものではない。

 なお、今回の募集に際し、「科学的・技術的意見の募集」としたことは、残念でならない。川内原子力発電所をはじめとする原子力発電への国民の思いを真摯に広く聞くことこそが現時点で肝要であるにも関わらず、一部専門家でないと発言できないような意見の公募を行うことは決して望ましいことではない。

勤務医部会だより 共済部だより 税経部だより 歯科部会だより 政策宣伝広報委員会だより 環境公害対策部だより 国際部だより 薬科部だより 保険請求Q&A 審査対策部だより 文化部だより 女性医師・歯科医師の会 融資制度のご案内 医療活動部だより