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上郡町と赤穂市の産廃建設計画 県は民意を受け止めよ

2022.09.25

 上郡町と赤穂市の市町境に、産業廃棄物最終処分場の建設が計画されている。7月10日、参議院選挙と同日に上郡町で行われたこの産廃施設の建設の賛否を問う住民投票では、「反対」が有効投票数の79%と圧倒的多数を占めた。11日、上郡町の梅田修作町長は事業者に対し計画断念を要請するとともに、結果を真摯に受け止めるよう県に要望書を提出している。
 当該の最終処分場は管理型処分場であり、廃棄物から発生する汚水を処理して放流することとなる。受け入れる予定の産業廃棄物には水銀やアスベストも含まれる。2018年に事業者が県に提出した事前協議書によると、産廃施設の排水は千種川水系の梨ヶ原川に放出するとされている。千種川の水は水道水や農業用水などに利用されるもので、環境への影響が懸念され、水害などの災害発生時の対策を含め、周辺住民から強い不安の声が出されていた。2015年に赤穂市議会は「産業廃棄物最終処分場建設に反対する都市宣言」を全会一致で議決しており、赤穂市長は「当該地区における産業廃棄物最終処分場の設置は、市民の財産である自然を毀損し、市民の生命をも脅かす恐れのある計画であり、望ましくないものと考えます」と県に意見している。
 事業者の東洋開発工業所(大阪府豊能町)は建設許可後、大栄環境グループの100%子会社になることを明言しており、上郡町の有識者会議では名義貸しだと指摘された。同社は建設を強行する姿勢を露わにしており、11日には赤穂民報の取材に「(有権者の53%が「反対」に投票したことについては)逆に言えば半数近い人は「反対」には投じなかったということ。今のところ事業を撤退する考えはなく、粛々と手続きを進めていきたい」と話している。
 建設許可後の周辺地域での同社所有山林での中間処理施設建設の可能性も取りざたされており、民意を無視して強行しようとする態度は、決して容認されるべきものではない。
 県は赤穂市長の意見照会への回答、この住民投票の結果を重く受け止め、地域住民の民意を尊重し、危険で住民の健康を害する可能性のある産廃施設の建設を許可すべきではない。
産廃処理のあり方から見直しを
 日本では製造業において、まだまだ産業廃棄物処理を念頭に生産・建造時の検討が最大限に行われることが十分ではなく、補修・修理・再利用・再建よりも新規・新設・消費が好まれる風潮があり、産廃の減量は遅れている。産廃の大部分は埋め立て処分される。産廃には有害なものや長期安全性の不透明なものが増えてきている。管理型最終処分場でも15年から20年で満杯となった後は、今では全く不十分としか言えない廃止基準を満たせば、法的にはその後2年間程度の観察期間を経て、跡地利用が可能になる。産廃が無に帰することはなく、何十年を経てなおも有害物質を排出する可能性があっても、監視・管理体制はほとんどない状況となる。
 林業の衰退、少子高齢化、人口流出・過疎化に苦しむ地方の山間地に産廃が根を生やし、自然環境破壊や水質汚染、乱開発や盛り土による災害誘発が起こっている。政治の貧困、怠慢に対し、一人ひとりが主権者意識をもって取り組まなければいけない課題である。
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