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環境・公害対策部だより

抗議声明 原発運転上限延長に強く抗議する

2022.10.20

2022年10月20日

抗議声明

原発運転上限延長に強く抗議する

兵庫県保険医協会

環境・公害対策部長 森岡 芳雄

 

 原子力規制委員会の山中伸介委員長は10月5日の記者会見で、原発の運転期間について現行の「原則40年、最長20年延長できる」という規定が原子炉等規制法(炉規法)から削除されることを容認した。8月に政府が原発の運転期間の現行規定を見直す方針を明言したのを受けてのものだ。

 政府の見直しは「2050年カーボンニュートラル」に向け、原発を脱炭素の切り札のように位置づけたものであるが、全くの愚策である。原発は半永久的とも言える核燃料廃棄物を産出し続け、重大事故発生時には生物生育環境を恐ろしく破壊する地球環境に極めて悪影響を及ぼしかねないものであり、その部分的修復にさえ膨大なエネルギー消費とCO2発生をもたらすものである。

 40年という原則は、2011年の福島第一原子力発電所事故を受け設けたものであり、当時は自民党・公明党も合意していた。1回に限り最大20年延長できるという規定も、当初は「例外中の例外」とされていた。一方、今年に入り40年を超える美浜原発3号機が再稼働しており、関西電力高浜原発、九州電力川内原発でも40年を超えているのにも関わらず再稼働が既定路線となっている。構築物には寿命があり、経年的変化・劣化は避けようもなく、稼働年月を経るにつれ、累進的に損傷危険個所は増加し、故障・事故の発生確率が増大することは、一般常識である。さらに原発には放射能劣化という特殊な経年劣化が加わることが明らかになっているが、その全貌は明らかではなく、一部の金属に対する照射脆化が明らかになっているくらいである。実際、点検により早期対応あるいは修復はされてはいるものの予測できなかった損傷や事故が幾多も発生している。実験による経年変化・劣化予測には限界があり、格納容器内については、内部に入ることができず、間接的な調査しかできない。「例外中の例外」だったはずのルールをなし崩し的に常態化させるばかりでなく、その「20年」すらも超えるような法整備は断じてするべきではない。

 わが国の原発は、ミサイル攻撃やドローンによる攻撃に対しては、システム的にも構造的にも無防備であり、東アジアの緊張・危機が声高に叫ばれる中、危険性を考えるのであれば、国家安全・防衛の観点から真っ先に原発は廃炉にすべきである。

 われわれはいのちと健康をまもる医療者として、今回の原子力規制委員会の原発の運転上限廃止容認に強く抗議するとともに、政府・電力会社には再生可能エネルギーを基軸にしたエネルギー政策を積極的に推進する方向に政策転換し、すべての原発を速やかに廃炉にすることを求める。

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