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「生存権」を保障しない名古屋地裁判決への抗議声明

2020.07.11

2020.07.11

2020年7月11日

声 明 

兵庫県保険医協会
第1115回理事会

「生存権」を保障しない名古屋地裁判決に抗議する

 国の生活保護費引き下げは憲法25条の「生存権」に違反するとして、全国の生活保護受給者が国と自治体を訴えている「生存権裁判」で、初となる判決が6月25日、名古屋地裁で出された。地裁は、引き下げは厚生労働大臣の裁量権の範囲内であるとして、原告の請求を棄却した。
 生活保護費は、2013年から3回にわたり、平均6.5%、最大10%に引き下げられており、生活保護受給者は支出を切り詰めての生活を強いられている。原告は、引き下げ前年の自民党の選挙公約で「10%引き下げ」が盛り込まれていること、その公約実現のために、厚労省が物価引き下げ幅を大きくするよう恣意的に計算方式を変更したこと、また、通常行われている専門部会にも諮られていなかったことを指摘し、生存権に違反すると訴えていた。判決はこれらについて、大臣の裁量権の範囲であるとし、「自民党の政策の影響があった可能性は否定できないが、国民感情や国の財政事情を踏まえたもので違法とは言えない」と退けた。
 生活保護制度は、「生存権」を保障し、日本の社会保障水準を規定する大きな礎である。生活保護費は「健康で文化的な最低限度の生活」を維持するために、いくら必要かという観点から計算されるべきものであり、「国民感情」や「財政事情」によって左右されるものではない。
 日本の生活保護の捕捉率は2割程度で、必要な人の5人に1人しか利用できていないが、この状況を生み出しているのは、生活保護は恥だとする強いスティグマである。このスティグマを植え付けてきた歴代政権の姿勢をただし、生存権を保障することが司法のあるべき姿ではないだろうか。
本判決は、行政を監視すべき司法が、行政におもねった不当な判決である。加えて、立法府を担う与党の公約に従い、行政がこれまでのルールをねじまげ、それを司法が追認するという三権分立の崩壊を示している。私たちは、命と健康をまもる医師・歯科医師の会として、生活困窮者の人権を踏みにじる本判決に強く抗議するとともに、法の支配を貫徹し、国民の権利・自由を実現するという憲法が要請する司法の役割を自覚し、今後、生存権を保障する判断を行うよう、司法に求める。

以上

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