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税経部より「国税通則法の『改正』案 申告納税制の精神揺るがす」

2011.03.15

国税通則法「改正」案
申告納税制の精神揺るがす

帳簿持ち帰り、調査期間延長など

 政府は昨年末、国税通則法の一部改正案を盛り込んだ2011年度税制改正大綱を発表した。所得税法等の改正とあわせての国会通過が目論まれているが、内容はほとんど報道されていない。国税通則法という言葉に聞き覚えのない会員も多いと思うが、医療機関にとっても重大な問題を含む「改正」案となっている。
 第1は質問検査権の強化だ。現在、税務調査時の帳簿の持ち帰りは、納税者の任意の協力が前提となっている。改正案は、新たに「(帳簿書類などの)物件の提示若しくは提出を求めることができる」(改正法74条の2①)としたうえで、これを拒んだ場合の罰則(「懲役1年以下又は50万円以下の罰金」改正法127条③)も定めている。
 現在でも会員の41・5%が帳簿持ち帰りを求められているが(図1)、「改正」により帳簿の持ち帰りを拒否できなくなれば、今以上に帳簿持ち帰りの横行が予想される。
 また、「改正」でカルテの持ち帰りも強制されるとすれば、医師に課せられた守秘義務(刑法134条、刑事訴訟法105条、医療法25条)違反を強要される可能性も出てくる。
 第2は調査期間の延長だ。「改正」案は、税務署が増額更正できる期間を従来の3年から5年に延長するとしていることから、税務調査における納税者の負担は大きくなる。しかも、期間延長に加え税務署員が「修正申告の勧奨」を行う権限を規定するとしており(改正法74条の11③)、過去5年分遡って修正申告を迫られるケースが頻発する懸念もある(現在、修正申告したと回答した66%の会員のうち「5年分」の修正申告は1・4%にすぎない(図2・3))。
 さらに、調査終了後に「再調査を行うことができる」という「再調査権」(改正法74条の11⑧)も新設されており、同一年度に複数回の税務調査を受けなくてはならない可能性まで出てきた。
 「改正」案はこの他にも、白色申告者への記帳義務化、事前通知なしに税務調査を行える例外規定の新設、取引先へ反面調査の法定化など、全体として課税庁の権限を強化し、納税者に義務を課する内容となっている。
 「納税者が行った申告は誠実に行われたものとして尊重する」という申告納税制度の精神を根底から揺るがす内容だ。 

 

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