兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

トピックス

トピックス

主張 子どもの「口腔崩壊」解消は国の責任で

2018.06.25

 6月4日〜10日は「歯と口の健康週間」である。1928年に日本歯科医師会が提唱する「虫歯予防デー」として始まったものであるが、1958年からは、「歯の衛生週間」として当時の厚生省、文部省も加わっての実施となった。今年度の標語は「のばそうよ 健康寿命 歯みがきで」だ。
 昨年7月に、8020を達成した高齢者は8000(歯が0本)の高齢者と比較して平均寿命も健康寿命も長いという研究成果が報告された。噛める歯を多く持つことが健康長寿を達成することはすでに論をまたない。
 日本人が歯を失う原因として最も多い疾患は歯周病(42%、2005年調査)であるが、45歳未満ではむし歯による抜歯が多い。ただ、子どものむし歯は1980年代から減少を続けており、2000年には40%であった小学生のむし歯罹患率は2017年には21%まで減少した。12歳児の永久歯に限れば、4本以上あったむし歯は0.9本にまで減少している。子どもにはむし歯がほとんどないというのが日本の「当たり前」になってきているのだ。
 しかしながら、一人で10本以上のむし歯を持ち、十分に咀嚼ができない「口腔崩壊」の子どもが一定数存在することが報告されている。多くの保険医協会が実施した学校歯科治療調査からは、小中高生の約0.3%に口腔崩壊が認められるという共通した結果が得られた。また、歯科受診が必要であるにも関わらず、未受診の子どもが60%以上いることも明らかになった。
 このような口腔崩壊や未受診の背景の一つに貧困が存在することが教員らの記載や聞き取りから分かっている。日本の子どもの貧困率はOECD国中最低クラスを示す。日本であれば「当たり前」に受けられるはずの医療が受けられない彼らの生活環境は、決して自己責任などではなく、明らかに政策の欠陥によるものだ。
 貧困が生む教育や健康の格差は社会保障の充実以外では解決できない。国民が安心・安全な暮らしを送るための喫緊の課題はカジノや軍備の拡充ではない。社会保障にどれだけ国の予算をつぎ込めるか、それが問われている。