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学術・研究

歯科2026.01.25 講演

歯科定例研究会より
歯科インプラント治療における骨造成の現状(2026年1月25日)

滋賀医科大学医学部 歯科口腔外科学講座教授 髙岡 一樹先生講演

インプラント治療における骨造成の意義
 歯科インプラント治療の成功には十分な骨量が不可欠である。歯の喪失後には歯槽骨吸収が生じるため、多くの症例で何らかの骨造成が必要となることが多く、骨造成はインプラント治療における基本的手技の一つとなっている。骨造成に用いられる移植材は自家骨、同種骨(他家骨)、異種骨、人工骨に分類される。
自家骨は骨形成能、骨誘導能、骨伝導能の三要素を有し、最も信頼性の高い移植材とされる(表1)。
自家骨移植の特徴と適応
 これまでに我々は欠損部の大きさにより様々な自家骨を使用してきた(図)。口腔内からのブロック骨移植は比較的小範囲の欠損に対して有効であり、下顎枝やオトガイ部から採取した骨を母床骨にスクリューで固定する。一方、中等度以上の欠損に対してチタンメッシュプレートと腸骨海面骨細片(particulate cancellous bone and marrow:PCBM)による顎骨再建手術が口腔外科において行われている。本手術は移植した骨組織そのものの生着を期待しているわけではなく、PCBMの中に含まれる未分化間葉系由来の骨形成能を有する幹細胞からの新生骨形成が目的である1)。さらに広範囲の欠損では血管柄付き遊離骨移植が適応され、腓骨、肩甲骨、腸骨が汎用されている。しかし、本来の顎骨の形態とは大きく異なることや皮弁の処理などインプラント治療の過程で直面する問題も多く、広範囲顎骨支持装置による治療は、一般的な歯科インプラント治療より難易度が高くなる。本来の歯肉組織が欠損しているため、インプラント周囲の軟組織のコントロールが最も難渋するポイントとなる。このように自家骨は有用であるが、採骨侵襲や手術負担の問題から適応は限定される。
人工骨材料の種類と特徴
 人工骨はドナー部位を必要とせず、低侵襲治療を可能にする。人工骨にはハイドロキシアパタイト(HA)、β-リン酸三カルシウム(β-TCP)、リン酸オクタカルシウム・コラーゲン複合体、炭酸アパタイト、牛焼成骨などが存在する(表2)。HAは非吸収性のため体積維持能が高い材料である。高結晶性HAは長期残存するが、低結晶性HAは部分的な吸収・骨置換が起こることが示されている。
 一方、β-TCPは比較的速やかに吸収され新生骨へ置換される特性を有する。リン酸オクタカルシウム・コラーゲン複合体は、サイナスリフトなどの空隙部への充填による骨造成治療を目的として使用される。炭酸アパタイトは遅延吸収性であるが最終的に骨に置換する。牛焼成骨の置換は緩やかであり長期の体積安定をもたらす。
 GBR、ソケットプリザベーション、サイナスリフトにおいて薬事承認が得られた適切な材料を選択することが望ましい。また、骨造成の成功には、適切な外科手技の習得が必要である。
骨造成における全身的リスク因子と留意点
 骨造成は骨に対する外科的処置のため、骨代謝に影響を与える疾患・薬剤の知見のアップデートが必要である。例えば、糖尿病は外科治療時の創傷治癒不全や術後感染の問題だけではなく、糖尿性骨粗鬆症の問題がある。高血糖に起因する酸化ストレスの増強により、骨組織中に終末糖化産物の一種であるペントシジン架橋の増加が惹起され、骨質を劣化させる。骨造成を行う場合の糖尿病のコントロールは、通常の待機手術の基準である空腹時血糖140㎎/dL以下、ケトン体(-)、HbA1c 6.9%未満を適用する3)
 薬剤関連顎骨壊死(medication-related osteonecrosis of the jaw:MRONJ)に関して、インプラント治療に関連して理解すべき内容は多い。MRONJ発症に関わるリスクとして「歯周病、根尖病変、顎骨骨髄炎、インプラント周囲炎などの顎骨に発症する感染性疾患」が重視されている4)。インプラント関連MRONJは、インプラント周囲炎から発症するものが大部分であり、より厳密なメインテナンスおよび患者教育が求められている。
参考文献
1)飯野光喜.チタンメッシュトレーと自家腸骨海面骨細片による顎骨・顎堤再建.日口外誌 55: 268-75, 2009.
2)日本顎顔面インプラント学会編.顎骨再建とインプラントによる治療指針-広範囲顎骨支持型装置治療マニュアル-.東京:ゼニス出版,207,2022.
3)日本口腔インプラント学会編.口腔インプラント治療指針2024.第4版,東京:医歯薬出版, 22, 2024.
4)髙岡一樹, 岸本裕充. わが国における薬剤関連顎骨壊死ポジションペーパー2023の解説. 日本歯科先端技術研究所学術会誌 30: 13-18, 2024.

(1月25日、歯科定例研究会より)

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図 自家骨
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