兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2026年4月15日(2131号) ピックアップニュース

税経部より
令和7年分確定申告から見た特徴と8年以後の税制改正
賃上げ・ソフトウェアによる税額控除適用が増加
協会税務講師団  浦上 立志税理士

1 確定申告から見た特徴
内科系 承継・閉院への逡巡
 内科系は特に収入減が著しい。10~15%の減収は赤字申告となり廃業への誘因となる。診療報酬改定によるコロナ補助金の回収かとさえ思える。
例年になく多い所得・申告パターン
 支払い給与が対前年比1.5%以上増額し税額控除の適用を受けたパターンが多かった。令和8年以後も、人材確保と経営維持のためにベースアップ評価料の算定と併せて、税額控除を活用するパターンが多くなろう。
 なお、赤字決算で、その年は税額控除ができなくても5年間の繰越が受けられ、黒字が出た場合に過去分の控除が受けられるのでご留意を。
 また、電子処方箋など電子化をせかされて購入した機器のソフトウェア部分で税額控除の適用があった。
 予定納税は、前年の定額減税適用後が基準であるため申告時の税額は大きくなった傾向。閉院に伴う住居併用の不動産売却時の減価額の計算は大変複雑だ。
事業以外の所得・申告
 譲渡所得の計算において、取得費の実額や借地権など経緯把握は自己管理なのでしっかり引き継ぎがないと把握が困難だ。
 高齢者は、所得は大きくないが社会保険料、医療費控除、株式関係書類、公私年金受給など煩雑を極める。さらに、所得税が安くなっても主に住民税が基準となる後期高齢者保険料・介護保険料と窓口負担割合への跳ね返りまで大雑把にせよ考慮がいる。今後も社会保険料・自己負担の高額化は避けられない。
 ふるさと納税の返礼品は一時所得扱いだが、他に保険の満期解約金などがあり合算して50万円を超える場合、あとで申告漏れが指摘されることもある。

2 税務行政・申告実務の特徴
税務行政の電子化と自己責任化
 支払調書などの電子データ送付は、送り側の便宜が優先されたもの。11月、12月分の診療報酬の支払調書は2月21日からダウンロード可となった。3月に入ると保険請求が優先となって、その間は調書のダウンロードができず確定額の確認が遅れたので注意が必要。
 申告相談もLINE予約なしに行くと長蛇に並ばされる。電子化乗り遅れは自己責任だが申告は国民の義務だとというわけで、「愛される税務署」という標語があった時代は忘却のかなたである。
 不正還付の多発に苦慮しているからと、スマホ等で電子申告できるID・パスワード方式が令和7年10月から新規発行を停止した。確かにマイナンバーカードの偽造は困難なようだが、なりすましや貸与は可能ではないか。便利さと安全・確実は別である。
 給与・年金などの各人別の名寄せが進んでおり、還付申告の多くはプレプリント化したいのかもしれないが、医療費控除の世帯別集計の自動化はなかなか難しいだろう。

3 制度改正
手取りを増やす?「年収の壁」が178万円へ
 基礎控除は、合計所得2350万円までは58万円→62万円に。合計所得金額489万円以下の給与所得者などは、令和8年、9年限定だが上乗せによって62+42=104万円となる(表1)。
 給与所得控除の最低保障は特例も含め74万円。基礎控除と合計で178万円となるが、令和10年以後はまた変わる可能性あり。8年の年末調整からの適用となるが、ソフトやアプリがないと計算は不可能(表2)。
 しかし178万円への「壁」引き上げでは助けにならない。交通費込み130万円の社会保険の「壁」が実質的な壁だからだ。


その他税制改正
少額減価償却資産40万円未満に、在職老齢年金制限額の緩和
 中小企業者等が取得時に即時償却できる少額減価償却資産が4月1日取得より30万円未満から40万円未満に変更される。
 マイカーの通勤手当に係る所得税非課税限度額が引き上げられた。
 高齢勤労者が増えてきたこともあり、在職老齢年金は、給与とあわせ支給制限額51万円が65万円に緩和。医療法人役員も利用する方が増えるだろう。

4 今後の課題
インボイスなど
 消費税インボイス登録の選択は、高齢の場合、ある程度固定的収入が見込める不動産や駐車場がある場合以外はやめておくのが無難だと思う。登録をしている限り消費税納税義務があるからだ。収入が激減しても納税義務が残る。医師会が予防接種料金を免税医療機関にも同額で支払うなら、インボイスは取り消してしまってもよいのではないかなども考えどころである。
 給付付き税額控除は、名目だが所得が上昇、物価高で自動的に増税となる部分を、マイナンバーを活用して還付しようという方向のようだ。しかし世帯単位の所得の名寄せは困難で、せいぜい所得制限付きの定額減税のような給付金の恒常化になるのではなかろうか。

表1 基礎控除
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表2 給与所得控除
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