2026年5月05日(2132号) ピックアップニュース
通院・在宅精神療法 要件を満たさなければ点数が4割減に
対応できなければ診療の継続困難
6月実施の診療報酬改定で精神保健指定医(以下、指定医)以外の医師による通院・在宅精神療法の点数が4割減算されることとなった(下表)。
①精神医療に20年以上従事している、②行政の業務に協力している場合は除外されるが、突然の大幅減に強い不満の声が上がっている。また、1回の処方で抗うつ薬または抗精神病薬を3種類以上投与した場合には、通院・在宅精神療法を算定できない、心理支援加算を算定できないなどの制限も行われる。
通院・在宅精神療法は精神科専門療法の基本的な点数であり、経過措置もないため、対応できない医療機関は6月の改定直後から診療の継続が危ぶまれる状況に追い込まれる可能性がある。
指定医ではない会員からは、「対応できなければ閉院も考える」「今回の改定は非指定医の診療所に対する死刑宣告と言わざるを得ません!」など、深刻な声が寄せられた。また、指定医の取得が困難な理由では、「指定医取得と日常診療を両立できない」との意見の他、「指定医に馴染まない、反対」といった声もあった。
指定医である会員からも「あまりにもドラスティックな改定」「指定医の資格は臨床能力を評価するものではない」「人権上の観点から指定医を取得しないことを敢えて選択された先生もいる」「児童精神科を専門とする医師への配慮が必要」など、疑問視する声が多数寄せられた。
そもそも指定医は、精神保健福祉法に基づき、精神科医療において発生しうる本人の意思によらない入院や、一定の行動制限など、患者の権利の制約に関わる判定を行うことを職務としている。指定医となるには3年以上の「精神障害の診断又は治療に従事した経験(精神科実務経験)」 とともに、措置入院者や医療保護観察入院者の診断・治療にあたった経験が求められる。
入院症例は精神病床を有する医療機関に常時勤務し、患者の入院から退院までの期間、継続して診療に従事した症例とされ、直近1年以内の症例を含まなければならない。アンケートで寄せられた声の通り、開業医が新たに指定医を取得するハードルは極めて高い。
また、児童精神科を専門とする医師では指定医として対応すべき診療が限定的となるため、指定医を取得せず開業するケースも多い。
そもそもの精神科専門療法の評価全般が低すぎるとの回答も多く、全体の引き上げを図りつつ、指定医が精神科医療において果たす役割を適正に評価していくことが必要である。
しかし、指定医の評価は、非指定医の評価を下げることにより行われるべきものではない。通院・在宅精神療法では措置入院や医療保護観察入院後の患者について、都道府県の支援計画に基づき診療する場合の評価を現に設定しており、こうした評価の拡充を図ることが本来的な方向だ。
指定医の取得を通じて精神科医の経験や資質の向上を期すことができるのは事実である。しかし、医療保険制度において療養の給付を担う医師としての標準的な能力は、医師養成課程やその後の臨床研修において担保されるものであり、医師が変わっても同じ診療点数であることが基本とされてきた。各科の基本的な診療行為を評価する点数において、資格や経験で格差をつけている例は他になく、この問題は精神医療にとどまらず、診療報酬のあり方にかかわる大きな問題を孕むものだ。
協会は寄せられた会員の声に基づき、指定医であるかどうかを問わず、地域で真面目に診療に取り組む医師が診療を継続できるよう、厚労省に対し不合理の是正を求めていく。
①精神医療に20年以上従事している、②行政の業務に協力している場合は除外されるが、突然の大幅減に強い不満の声が上がっている。また、1回の処方で抗うつ薬または抗精神病薬を3種類以上投与した場合には、通院・在宅精神療法を算定できない、心理支援加算を算定できないなどの制限も行われる。
通院・在宅精神療法は精神科専門療法の基本的な点数であり、経過措置もないため、対応できない医療機関は6月の改定直後から診療の継続が危ぶまれる状況に追い込まれる可能性がある。
「閉院も考える」緊急アンケートへの声
協会は4月2日に緊急会員アンケートを実施。精神科及び児童精神科を標榜する会員医療機関182件にFAXを送信し、30件(回収率16.5%)の回答を得た。指定医ではない会員からは、「対応できなければ閉院も考える」「今回の改定は非指定医の診療所に対する死刑宣告と言わざるを得ません!」など、深刻な声が寄せられた。また、指定医の取得が困難な理由では、「指定医取得と日常診療を両立できない」との意見の他、「指定医に馴染まない、反対」といった声もあった。
指定医である会員からも「あまりにもドラスティックな改定」「指定医の資格は臨床能力を評価するものではない」「人権上の観点から指定医を取得しないことを敢えて選択された先生もいる」「児童精神科を専門とする医師への配慮が必要」など、疑問視する声が多数寄せられた。
精神保健指定医とは
厚労省によると指定医の登録数は1万6506人(2023年4月1日時点)とされている。直近(2024年)の「医師・歯科医師・薬剤師調査」では、精神科に従事する医師数は1万8957人(第31表 医療施設従事医師数、診療科(複数回答)、主たる業務の種別)であり、指定医として登録されていない医師は12.9%となる。そもそも指定医は、精神保健福祉法に基づき、精神科医療において発生しうる本人の意思によらない入院や、一定の行動制限など、患者の権利の制約に関わる判定を行うことを職務としている。指定医となるには3年以上の「精神障害の診断又は治療に従事した経験(精神科実務経験)」 とともに、措置入院者や医療保護観察入院者の診断・治療にあたった経験が求められる。
入院症例は精神病床を有する医療機関に常時勤務し、患者の入院から退院までの期間、継続して診療に従事した症例とされ、直近1年以内の症例を含まなければならない。アンケートで寄せられた声の通り、開業医が新たに指定医を取得するハードルは極めて高い。
また、児童精神科を専門とする医師では指定医として対応すべき診療が限定的となるため、指定医を取得せず開業するケースも多い。
精神科医療の評価の底上げと指定医への適正な評価は必要
一方、アンケートでは「経験の浅い医師が数多く通院・在宅精神療法を算定することに警鐘を鳴らす意味が込められているのではないか」など、一定の理解を示す意見も寄せられている。そもそもの精神科専門療法の評価全般が低すぎるとの回答も多く、全体の引き上げを図りつつ、指定医が精神科医療において果たす役割を適正に評価していくことが必要である。
しかし、指定医の評価は、非指定医の評価を下げることにより行われるべきものではない。通院・在宅精神療法では措置入院や医療保護観察入院後の患者について、都道府県の支援計画に基づき診療する場合の評価を現に設定しており、こうした評価の拡充を図ることが本来的な方向だ。
診療報酬のあり方にもかかわる問題
通院・在宅精神療法については、2022年改定で精神保健指定医の場合とそれ以外の場合に区分され、格差が拡大されてきた。また、オンラインでの精神療法の算定も、現在は指定医のみに認められている。指定医の経験に対する評価が、精神医療の基本的な評価に転用されてきた経緯だ。指定医の取得を通じて精神科医の経験や資質の向上を期すことができるのは事実である。しかし、医療保険制度において療養の給付を担う医師としての標準的な能力は、医師養成課程やその後の臨床研修において担保されるものであり、医師が変わっても同じ診療点数であることが基本とされてきた。各科の基本的な診療行為を評価する点数において、資格や経験で格差をつけている例は他になく、この問題は精神医療にとどまらず、診療報酬のあり方にかかわる大きな問題を孕むものだ。
患者の精神医療へのアクセスを損なう
精神疾患を有する患者は増加しており、都市部を中心に「初診待機」は依然として問題になっている。外来での精神科医療提供の体制を縮小するような改定を行えば、精神医療を必要とする患者の医療機関へのアクセスをますます狭めることにもつながりかねない。協会は寄せられた会員の声に基づき、指定医であるかどうかを問わず、地域で真面目に診療に取り組む医師が診療を継続できるよう、厚労省に対し不合理の是正を求めていく。



