兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2026年5月05日(2132号) ピックアップニュース

診療報酬 改定2026 インタビュー②〈医科・診療所、精神医療〉
保険診療の志を挫く改定
西宮市・門戸厄神くりの木メンタルクリニック 栗山 紘和先生

2132_16.jpg  診療報酬改定が医療現場に及ぼす影響について、会員の声をシリーズで紹介する第2回。精神医療で通院・在宅精神療法に新たな施設基準が設けられ、精神保健指定医(以下、「指定医」)以外であって施設基準を満たせない場合には、4割の減算とされることについて、西宮市の栗山紘和先生に聞いた。

 -今回の診療報酬改定を受け、先生ご自身の対応は。
 私は精神保健指定医(以下、「指定医」)を取得せずに、昨年8月にこのクリニックを開業しました。おかげさまで開業以来、多くの患者様に来院いただいています。
 しかし3月上旬に、改定で非「指定医」による通院・在宅精神療法が減算になることを初めて知りました。固定費の増加や職員の待遇確保などを考慮すると、この減算は非常に厳しいと言わざるを得ません。
 クリニックは代診の先生にお願いし、私自身は3カ月ほど病院に常勤として勤務し、「指定医」を取得することに決めました。幸い、受け入れ先の病院と代診の目処は立ちましたが、長期間クリニックで患者さんの診療ができないことは、私を信頼して通院してくれる患者さんに対して非常に申し訳ないと思っています。
 -「精神医療の質の担保」という名目で、指定医か否かによる差別化が進められています。
  「指定医」の取得が精神科医の専門性を示す一つの指標であることは、一面の事実だと思います。しかし本来、精神保健指定医は「強制入院」や「行動制限」に関わるための資格です。 病院での重症症例への対応なら分かりますが、クリニックでの日常診療の質を担保するためには、また違った能力が必要なのではないでしょうか? 患者さんとのコミュニケーションの質の高さやそれに伴う診察の満足度と治療意欲の改善による治療効果は指定医の有無とは全く別の話だと思います。
 また、児童精神科を専門とする先生にはそもそもの対応が困難です。
 -今回の改定が、今後の精神医療の提供体制に与える影響をどう見ていますか。
  「直美」などと言われますが、若い先生方が少なからず自由診療を志向することや、過疎地の医師不足、病院での看護師不足など、医療界が抱える問題の根源はすべて同じだと感じています。自分の専門性や労働が医療保険制度において適正に評価されていないと感じれば、保険診療から遠ざかってしまいます。今回の改定により、精神医療でも同様の事態が起こることを危惧しています。
 精神科クリニックは増加していますが、それ以上に患者数も急増しています。現状でも医療ニーズはあふれているのに、患者さんの行き先をさらに狭める結果になるでしょう。都市部の大規模クリニックでは、医師の半数が退職する事態になっているとも聞きます。最終的にしわ寄せが行くのは、医療を必要としている患者さんです。
 -国としては、本来どのような対応が必要だったと思われますか。
 もし大幅な制度変更がわかっていれば、あらかじめ指定医を取得してから開業するという選択もできました。少なくとも情報を早期に周知し、次の改定から実施するべきです。せめて十分な経過措置は不可欠だったはずです。
 また、開業医が日々の診療と両立しながら指定医資格を取得できるような、柔軟な制度設計も必要だと考えます。
 私は保険診療で患者さんのための医療を続けていきたいと考えています。その志を阻むような、改定はやめてほしいと思います。
 -ありがとうございました。先生のご意見を受け、協会として、政府・厚労相に改善を求めていきます。
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