2026年5月25日(2133号) ピックアップニュース
診療報酬 改定2026 インタビュー③
〈医科・病院、有床診療所〉赤字補填にとどまり、地域医療を守れない改定
姫路市・石橋内科/広畑センチュリー病院 石橋 寛之 先生
姫路市・石橋内科/広畑センチュリー病院 石橋 寛之先生
-今回の診療報酬改定を全体としてどう受け止めていますか。
石橋 30年ぶりの大幅なプラス改定といわれていますが、中身を見ると、賃上げ対応、物価高、光熱費、食費、経営悪化への緊急対応が中心です。ここ数年のコスト増にようやく少し追いついたという印象で、医療機関の手元に残るものはほとんどありません。増えた点数は利益ではなく、赤字の補填という感覚です。他のところに手を回す余裕が生まれたわけではなく、厳しい状況は変わっていません。
ベースアップ評価料も、事務職が対象に入るなど改善された部分はあります。しかし、一般産業の賃上げ水準や物価高騰を考えると、十分とはいえません。病院としては届出をしなければ6月から入院料が減算となるため、算定して職員の賃上げに充てていくということになりますが、制度に対応する事務負担も大きいです。
-医療DXへの対応についてはいかがですか。
石橋 今回の改定では、対応していないと次に進めない、という性格が強くなっていると感じます。
ベースアップ評価料もそうですが、医療DX関係の評価も、以前は選択の余地があったものが、だんだん前提条件になりつつあります。医療DX推進体制整備加算は名称も変わり、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスなど、求められる対応が増えています。
当院でも、これまで電子処方箋は導入していませんでしたが、補助金の期限もあり、病院とクリニックの両方で導入することにしました。ただ、補助金と加算だけでは初期費用や維持管理費を賄えません。国策として進めるのであれば、本来は国が責任を持って整備すべきです。
電子カルテや電子処方箋への対応ができない医療機関を切り捨てるような進め方では、地域医療が成り立たなくなる恐れもあります。
-病床機能への影響はどう見ていますか。
石橋 急性期については、点数を手厚くしたように見えても、算定できる医療機関を絞る方向が明確です。地域包括ケア病床を持っている病院では算定できないなど、条件が厳しい。急性期を一度やめた病院を、再び戻させないという意図すら感じます。全体としては、病床を減らす方向に誘導されているのではないでしょうか。
-病院・有床診療所にとって、特に負担が大きい点はありますか。
石橋 身体的拘束最小化の評価は、現場にとって大きな課題です。今回の改定では身体的拘束最小化について一定の実績が求められます。しかし、身体拘束をどう定義し、どう数えるのか。一時的に外した場合をどう扱うのか。また、身体的拘束最小化の加算も新設されましたが、病床数が少ない施設では、1人の患者さんが身体拘束の対象になるだけで割合が大きく変わります。理念を掲げること自体は重要ですが、職員への周知、日々の記録など、現場の負担は小さくありません。
リハビリについても同様です。質の高いリハビリを評価する方向は理解できますが、研修を受けた専任職員の配置や、土日を含めたリハビリ提供体制など、要件を満たすには人材確保が不可欠です。人を確保するのに転職説明会にブースを出すなど、大変苦労しています。また、他の加算を含め研修を受けさせようとしても、すぐに予約が埋まってしまうこともあります。
制度上は「質の評価」とされますが、実際には人員配置や研修履歴など、構造面で評価される部分が大きいと感じます。
-地域医療を守るうえで、今後の課題は何でしょうか。
石橋 今回の改定だけでは、病院の建て替えや医療機器の更新には到底対応できません。兵庫県内でも築40年以上の病院は多く、建築費も高騰しています。診療報酬を少しずつ積み立てて建て替えるというのは、民間病院にとって現実的ではありません。このままでは、地域に必要な病院が老朽化しても更新できず、結果として病床が減っていく可能性があります。国は病床削減を進めたいのかもしれませんが、地域医療を守るという観点から、本当にそれでよいのかを考える必要があります。
今回の改定は、現場の努力を前提にしすぎています。地域のニーズに応え続ける医療機関が、きちんと存続できる診療報酬でなければなりません。
-ありがとうございました。ご意見を受け、協会は政府・厚労省に改善を求めていきます。



