2026年6月05日(2134号) ピックアップニュース
診療報酬改定2026 インタビュー④
〈歯科〉歯科医療改善に全く不十分 基本診療料の大幅引き上げを
尼崎医療生活協同組合生協歯科 冨澤 洪基先生
診療報酬改定が医療現場に及ぼす影響について、会員の声を紹介するシリーズ。最終回は尼崎市の冨澤洪基先生に、歯科医療について聞いた。(聞き手=編集部)
-今回の診療報酬改定の評価を教えてください。
医療関係者が最低10%以上の引き上げを訴えてきたのに、わずか+3.09%の上、歯科の診療行為の評価にあてられたのはわずか0.31%。DXやベースアップなど本体点数と別枠で財源を使い、歯科初再診料のわずかな引き上げや物価対応料の新設がありましたが、歯内療法や補綴点数なども引き上げがされず、この間の物価高に全く見合わない、とても喜べる内容ではありません。
そもそも物価は今も続くロシアのウクライナ侵攻の頃から急激に上昇しています。現在のアメリカのイラン攻撃に端を発したホルムズ海峡閉鎖を見ても世界情勢が不安定であることが、物価高や資材の供給不足となって医療現場を危機に陥れています。大局的に見ると、医療の安全・安心な提供と人類、国民の健康づくりにはまずは平和であること。私たち医療関係者が世界情勢の安定に向けて、平和の大切さ、憲法9条を持つ平和国家として日本政府が役割を発揮するよう訴えていくことが必要だと強く感じています。
今回の改定も、平和で安定した情勢であれば、財源を純粋な診療報酬引き上げに回せたのではないでしょうか。
-改定内容についてはいかがでしょうか。
個別に見てくると、大きい問題が多々あります。特に大きいのは、歯科技工士の方への評価です。今回補綴物等の製作を歯科技工所に委託した際、委託先の歯科技工士の賃金改善を支援する「歯科技工所ベースアップ支援料」が新設されました。歯科技工士の過酷な労働実態と改善について、兵庫協会は「保険でより良い歯科医療を」兵庫連絡会などの活動を通じての訴えや、厚労省要請、国会議員要請を続けてきましたので、歯科技工所を支援する点数が新設されたという点では運動の大きな成果と考えています。
ただ、これが算定できるのは技工物の装着時に限られ、点数も一律15点にすぎません。また算定するかどうかは歯科医療機関に任されており、歯科技工士の方からは不安の声を聞きます。歯科技工士なくして歯科医療は成り立たないので、積極的に算定していきたいと思いますが、届出や実績報告など歯科医療機関の負担も大きく、改善は必須です。
そもそも歯科技工士の処遇改善には、7:3大臣告示をきちんと遵守させることと、補綴物の診療報酬を十分に評価して引き上げるべきであったと考えています。
また、ベースアップ評価料もそうなのですが、使途限定で特定の点数をつけるものではなく、初・再診料をはじめとした基本診療料に対しての正当な評価をすることが本筋と思います。ただし、患者さんの受診ハードルを下げるべく、窓口負担金の軽減も同時に訴えていくべきですね。
全く不十分な今回の改定ですが、医学管理や歯科衛生士や歯科技工士の評価、CAD/CAM冠・CAD/CAMインレーの適用拡大や咬合要件撤廃等、これまで協会で改善を要求してきた内容が認められており、この点はこれまでの運動の成果と思います。
-歯科訪問診療の評価はいかがでしょうか。
超高齢社会に伴い基礎疾患を抱える高齢者が増え、歯科訪問診療はこれからますます必要性が高まります。現在、歯科訪問診療を行っている歯科医療機関は2割程度で、より多くの医療機関が歯科訪問診療を行えるような制度設計が必要と感じています。しかし、今次改定は施設基準が満たせないと減算となるなど、ハードルを高くする内容で方向性が違うのではないかと感じます。
しかし今回、歯科衛生士の方への評価については、口腔機能低下症・口腔機能発達不全症に対する歯科衛生士の指導などの役割、在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料についても、歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が指導をした場合が新設されました。このことは一定評価しています。ただし歯科衛生実地指導料1は長年、月1回80点という低評価のままで引き上げるべきです。
また、全身状態が口腔内に及ぼす影響、あるいはその逆も然り、ですが、これらの医科歯科連携における評価が外来と訪問で若干ですがアップしています。歯周病の管理において全身状態の悪化による重症化予防連携強化加算が新設され、医科の主治医の先生方においては糖尿病の患者さんを歯科に紹介いただく時に、歯科医療機関連携強化加算が新設されましたので、医科歯科連携が積極的に進むことには期待したいところです。
今、「OTC類似薬」の追加負担導入に加えて、財政制度等審議会では高齢者の窓口負担原則3割が言われています。医療関係者・患者という当事者不在で、患者さんの苦しい生活状況に追い打ちをかけるようなことを言う。苦しい時に助けになる社会保障の役割に立ち返り、窓口負担軽減、そして診療報酬の大幅増を訴えていかなければと思います。



