兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2026年6月15日(2135号) ピックアップニュース

燭心

 日本の医療機関の大半が赤字経営なのは、個々の経営努力の欠如ではなく構造そのものに起因する。一般企業なら物価高騰を価格転嫁で乗り切れるが、医療サービスの価格は「診療報酬」で国に統制されており、値上げという選択肢ははじめから存在しない▼さらに経営を圧迫するのが、80%超という労働分配率の高さと利益率の低さである。医療は人の手と専門性に依存する労働集約型サービスであり、安易なリストラや無人化といったコストカットは即座に医療の質の低下や安全の崩壊に直結する▼経済学には、対人サービス業の生産性は他産業のようには向上しないとする「ボーモルのコスト病」という理論がある。自動車の製造時間を半分にするような効率化は医療現場に持ち込むことはできない▼手術時間を半分に縮めたり無理な人員削減をしたりする危険性は、医療従事者なら誰もが知るところだ。弦楽四重奏を効率化のために3人で演じれば、名曲が全く意味を成さない。医療における過度な効率化の追求は、サービスを根底から瓦解させるリスクを孕む▼にもかかわらず、財務省は過去の一時的なデータのみを拠り所に「経営改善の余力がある」との圧力を強めてくる。現場は現行制度の枠組みにおいてすでに限界だ▼国民の生命線である地域医療を、医療従事者の「自己犠牲の四重奏」に委ねたままでよいはずがない。今こそ、机上の空論ではなく現場の実態に即した、抜本的な診療報酬の再設計と構造改革の議論が必要である(空)
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