2026年6月25日(2136号) ピックアップニュース
2025年国保保険証交付等に関する兵庫県内全市町調査
保険証廃止で 窓口負担10割の「特別療養」8670世帯に急増
協会は、県内全市町を対象に「国保保険証交付等に関するアンケート」を実施。保険料の減免利用世帯数、滞納者数、特別療養の対象者数、資格確認書の発行数などを聞き、全市町から回答を得た。本調査は県内の国保の保険料滞納や無保険の現状を明らかにするため1988年から行い、34年連続で県下の全自治体から回答を得ている。
保険料を滞納している世帯数(25年12月1日時点)は14万4386世帯と加入世帯の22.2%にのぼり、昨年度調査の14万7168世帯、22.1%からほぼ横ばいの数値となった。滞納世帯の比率はコロナ前の2019年度を底に増加傾向が続く。
滞納期間が1年6カ月を超えた際、差し押さえが行われる場合がある。この差し押さえ件数は24年度9062件となり、23年度に8991件からさらに増加し、20年度以降増加し続けている(図1)。物価高による経済的困窮のなかで滞納世帯、差し押さえ件数とも増加していると推察される。
また、滞納世帯への催促について、民間委託しているか尋ねたところ、6市町(神戸市・尼崎市・川西市・西宮市・加古川市・姫路市)が「している」と回答した。
内容は電話・コールセンターによる催促が中心で、尼崎市は「SMS催促、電話催促、訪問催促」と回答しており、保険料納付ありきの機械的な対応が行われていないかが懸念される。
保険料納付の催促ではなく、経済的困窮に苦しむ加入世帯の状況を把握し、サポートをすることが自治体には求められる。
保険料減免7割 自治体制度はわずか
国による保険料軽減・免除制度を利用している世帯(2024年度末時点)は、45万8478世帯にのぼり、対象世帯の70.6%、7割を占めている。
自治体による独自の保険料減額制度は、尼崎市は加入世帯の32.7%が利用、西宮市はのべ利用数で5万9315件と世帯数を上回る利用がある。一方、神戸市は加入世帯の8.8%にとどまり、2020年度には利用者が3割近くいた、子どもや障害者のいる世帯に対し市が独自に実施していた控除制度の24年度の廃止を受け、大きく縮小している。
他市町も独自減免制度がないか利用者がわずかとなっており、国保の都道府県化が進められるなか、高すぎる国保料是正のため独自に軽減をはかる自治体は縮小傾向にある。
マイナ保険証「解除」 昨年12月で6906件
健康保険証が廃止され、マイナンバーカードの保険証利用(マイナ保険証)が促進されているが、マイナ保険証作成は任意であり、マイナンバーカードを取得していない人には「資格確認書」が発行される。
「資格確認書」の交付数を聞いたところ、15万9037世帯となった。神戸市・宝塚市・三木市・相生市・赤穂市・宍粟市・丹波篠山市が不明と回答しているため、これら市町を除いた、発行比率は39.3%と約4割となる。
また、資格確認書の発行について、国は「マイナ保険証の利用登録をしていない加入者全員および申請があった要配慮者に発行する」との基準を示しているが、保険者の判断で発行基準を変更することができ、東京都では、渋谷区・世田谷区・杉並区がマイナ保険証のトラブルや受診抑制を懸念し、全員への交付を決定している。この発行基準について尋ねたが、県内すべての市町が国が示す基準と同じとの回答となった。
マイナ保険証利用者の利用登録解除件数(2025年12月時点)を聞いたところ、計6906件となり、前回調査の25年1月時点の1321件から大幅に増加し、保険証の廃止を受け、解除する人が増加したことがうかがえる。
加入者の受療権を保障するため、協会は各市町に全員に一律資格確認書を発行させるよう、運動を強めていく。
「資格証明書」の発行世帯数は、前回調査の23年度6816世帯に対し、24年度は7495世帯、25年度の4~11月で8080世帯と増加している。25年12月1日時点での「特別療養」対象世帯数について聞いたところ、件数は8670世帯とさらに増加し、交付率も増え続けている(図2)。
10割負担は必要な医療機関受診を抑制し、患者の健康悪化につながる可能性が極めて高いとして、一部自治体は資格証明書を発行しないとの判断を行っていた。今回の調査でこれまで資格証明書を発行していなかった宝塚市、丹波市、神河町、市川町、福崎町の5市町が、滞納世帯を「特別療養」の対象とするようになっており、神河町が「神河町国民保険税滞納世帯に係る事務処理要綱による」、福崎町が「滞納=特別療養費該当とせず短期証を発行していたが、短期証がなくなったため特別療養費該当を開始した」として、支給対象基準を変更したと回答している。
保険証の新規発行停止により、10割負担となる対象者が大幅に増加していることが明らかになり、滞納者の医療アクセス・健康を阻害する懸念が非常に強いと言える。
なお、尼崎市が特別療養の対象を「0」と回答していたので、市に確認したところ、「(前略)真に制度を適用すべき悪質な滞納世帯を客観的に抽出するため、現在、運用基準の策定および庁内調整を行っている過渡期にあります。当該調査時点においては、この新体制への移行期間であったことから、結果として発行実績が『0件』となっておりますが、今後は真面目に納付されている他の市民との公平性を確保するため、高額滞納世帯や負担能力がありながら不払い・不相談を続ける世帯に対し、本制度を厳格かつ積極的に活用していく方針です。」との回答があり、今後さらに10割負担対象者は増える可能性が高い。
また、国保法44条に基づいて、災害・事業の休廃止・失業・生活困窮の場合に、医療費窓口負担が免除、減額、猶予される制度が定められているが、24年度の利用者は6自治体17世帯とわずかにとどまっている。
多くの市町が、診療内容ではなく医療費削減のための数値目標を設定し、数字ありきで民間業者にレセプト請求金額の削減を行わせているということであり、重大な問題である。
これまで各市町は独自で法定外繰り入れを行い、保険料を引き下げてきたが、国保の都道府県化・保険者努力支援制度により繰り入れ総額は年々減少し続け、低い水準にとどまっている。神戸市など11市町では法定外繰り入れ金額がゼロとなり、昨年の7市町から大幅に増加した。
国保は市民の助け合い制度ではなく、憲法25条の生存権によって定められた社会保障制度の大切な柱の一つである。この改善には、構造的問題の解決とともに、保険料引き下げのため、抜本的な国庫負担増が必要であり、同時に市町には独自の努力で法定外繰り入れの増額も求められる。
また、保険料を負担しないという理由で、給付に制限をもうける制度は、低所得者を中心に、その受診の機会を奪いかねず、社会保障としては本末転倒であり、廃止すべきである。
滞納世帯2割超差し押さえ増加続く
本調査は2026年1月に県内全市町に郵送で調査票を送付し、3月までに全市町から回答を得た。保険料を滞納している世帯数(25年12月1日時点)は14万4386世帯と加入世帯の22.2%にのぼり、昨年度調査の14万7168世帯、22.1%からほぼ横ばいの数値となった。滞納世帯の比率はコロナ前の2019年度を底に増加傾向が続く。
滞納期間が1年6カ月を超えた際、差し押さえが行われる場合がある。この差し押さえ件数は24年度9062件となり、23年度に8991件からさらに増加し、20年度以降増加し続けている(図1)。物価高による経済的困窮のなかで滞納世帯、差し押さえ件数とも増加していると推察される。
また、滞納世帯への催促について、民間委託しているか尋ねたところ、6市町(神戸市・尼崎市・川西市・西宮市・加古川市・姫路市)が「している」と回答した。
内容は電話・コールセンターによる催促が中心で、尼崎市は「SMS催促、電話催促、訪問催促」と回答しており、保険料納付ありきの機械的な対応が行われていないかが懸念される。
保険料納付の催促ではなく、経済的困窮に苦しむ加入世帯の状況を把握し、サポートをすることが自治体には求められる。
保険料減免7割 自治体制度はわずか
―神戸市はさらに縮小
国による保険料軽減・免除制度を利用している世帯(2024年度末時点)は、45万8478世帯にのぼり、対象世帯の70.6%、7割を占めている。
自治体による独自の保険料減額制度は、尼崎市は加入世帯の32.7%が利用、西宮市はのべ利用数で5万9315件と世帯数を上回る利用がある。一方、神戸市は加入世帯の8.8%にとどまり、2020年度には利用者が3割近くいた、子どもや障害者のいる世帯に対し市が独自に実施していた控除制度の24年度の廃止を受け、大きく縮小している。
他市町も独自減免制度がないか利用者がわずかとなっており、国保の都道府県化が進められるなか、高すぎる国保料是正のため独自に軽減をはかる自治体は縮小傾向にある。
マイナ保険証「解除」 昨年12月で6906件
―資格確認書の一律交付を
健康保険証が廃止され、マイナンバーカードの保険証利用(マイナ保険証)が促進されているが、マイナ保険証作成は任意であり、マイナンバーカードを取得していない人には「資格確認書」が発行される。
「資格確認書」の交付数を聞いたところ、15万9037世帯となった。神戸市・宝塚市・三木市・相生市・赤穂市・宍粟市・丹波篠山市が不明と回答しているため、これら市町を除いた、発行比率は39.3%と約4割となる。
また、資格確認書の発行について、国は「マイナ保険証の利用登録をしていない加入者全員および申請があった要配慮者に発行する」との基準を示しているが、保険者の判断で発行基準を変更することができ、東京都では、渋谷区・世田谷区・杉並区がマイナ保険証のトラブルや受診抑制を懸念し、全員への交付を決定している。この発行基準について尋ねたが、県内すべての市町が国が示す基準と同じとの回答となった。
マイナ保険証利用者の利用登録解除件数(2025年12月時点)を聞いたところ、計6906件となり、前回調査の25年1月時点の1321件から大幅に増加し、保険証の廃止を受け、解除する人が増加したことがうかがえる。
加入者の受療権を保障するため、協会は各市町に全員に一律資格確認書を発行させるよう、運動を強めていく。
短期証廃止で10割負担が増加
保険証の窓口への留め置きや医療機関窓口で全額をいったん負担しなければならない「資格証明書」(マイナ保険証を持たない加入者に発行される資格確認書とは全く別のもの)は、2024年12月の保険証の新規発行停止を受け「特別療養」と名称が変更となった。「資格証明書」の発行世帯数は、前回調査の23年度6816世帯に対し、24年度は7495世帯、25年度の4~11月で8080世帯と増加している。25年12月1日時点での「特別療養」対象世帯数について聞いたところ、件数は8670世帯とさらに増加し、交付率も増え続けている(図2)。
10割負担は必要な医療機関受診を抑制し、患者の健康悪化につながる可能性が極めて高いとして、一部自治体は資格証明書を発行しないとの判断を行っていた。今回の調査でこれまで資格証明書を発行していなかった宝塚市、丹波市、神河町、市川町、福崎町の5市町が、滞納世帯を「特別療養」の対象とするようになっており、神河町が「神河町国民保険税滞納世帯に係る事務処理要綱による」、福崎町が「滞納=特別療養費該当とせず短期証を発行していたが、短期証がなくなったため特別療養費該当を開始した」として、支給対象基準を変更したと回答している。
保険証の新規発行停止により、10割負担となる対象者が大幅に増加していることが明らかになり、滞納者の医療アクセス・健康を阻害する懸念が非常に強いと言える。
なお、尼崎市が特別療養の対象を「0」と回答していたので、市に確認したところ、「(前略)真に制度を適用すべき悪質な滞納世帯を客観的に抽出するため、現在、運用基準の策定および庁内調整を行っている過渡期にあります。当該調査時点においては、この新体制への移行期間であったことから、結果として発行実績が『0件』となっておりますが、今後は真面目に納付されている他の市民との公平性を確保するため、高額滞納世帯や負担能力がありながら不払い・不相談を続ける世帯に対し、本制度を厳格かつ積極的に活用していく方針です。」との回答があり、今後さらに10割負担対象者は増える可能性が高い。
また、国保法44条に基づいて、災害・事業の休廃止・失業・生活困窮の場合に、医療費窓口負担が免除、減額、猶予される制度が定められているが、24年度の利用者は6自治体17世帯とわずかにとどまっている。
31市町が医療費削減ありきのレセプト「点検効果額目標」
レセプト点検について、民間業者委託を行っているのは41市町のうち28市町だった。また、31市町が「点検効果額目標」を「定めている」と回答した(表)。多くの市町が、診療内容ではなく医療費削減のための数値目標を設定し、数字ありきで民間業者にレセプト請求金額の削減を行わせているということであり、重大な問題である。
国庫負担の抜本増と自治体の法定外繰入拡充を
高齢者、無職・低所得者が多い国民健康保険において、重すぎる保険料負担は、加入世帯の7割が保険料減免制度を利用し、2割が滞納するという状況を生んでいる。加入者が安心して医療を受けられるため、制度の改善が急務である。これまで各市町は独自で法定外繰り入れを行い、保険料を引き下げてきたが、国保の都道府県化・保険者努力支援制度により繰り入れ総額は年々減少し続け、低い水準にとどまっている。神戸市など11市町では法定外繰り入れ金額がゼロとなり、昨年の7市町から大幅に増加した。
国保は市民の助け合い制度ではなく、憲法25条の生存権によって定められた社会保障制度の大切な柱の一つである。この改善には、構造的問題の解決とともに、保険料引き下げのため、抜本的な国庫負担増が必要であり、同時に市町には独自の努力で法定外繰り入れの増額も求められる。
また、保険料を負担しないという理由で、給付に制限をもうける制度は、低所得者を中心に、その受診の機会を奪いかねず、社会保障としては本末転倒であり、廃止すべきである。
図1 差し押さえ数(棒グラフ・左軸)と滞納率(折れ線グラフ・右軸)
図2 資格証明書、特別療養の交付率の推移
表 レセプト点検について「点検効果額目標」を設定していると回答した31市町




