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癌との鑑別からみた消化管非上皮性腫瘍(粘膜下腫瘍・SMT)の診断 [診内研より]

兵庫医科大学内科学上部消化管科 准教授  渡 二郎先生講演

 日常診療において、しばしば粘膜下腫瘍(SMT)様の形態を示す消化管癌に遭遇する。大きなSMTやSMT様癌を疑った場合は、経過観察は許されず組織診断を含めた質的診断が必要である。食道・胃・大腸におけるSMT様の形態を示す癌の形態学的特徴と、消化管に発生する代表的なSMTについて解説する。

1、SMT様癌の形態学的特徴

1)SMT様の食道癌
 SMT様の形態をとる食道癌の多くは、類基底細胞癌、腺癌、腺扁平上皮癌、腺様嚢胞癌、粘表皮癌、内分泌細胞癌、未分化癌などの特殊組織型である。その頻度は、表在癌で1.2%、進行癌で2.4%と低い。形態形成の成因は、(1)表層上皮内の癌細胞が主に上皮下へ進展した場合、(2)食道腺(導管を含む)に由来する癌、(3)食道内の異所性胃粘膜に由来する癌、(4)著明な脈管浸潤をきたした場合、である。本形態を呈する食道癌は、腫瘍の一部には必ず上皮性の所見を伴うので、ヨード(ルゴール)染色による観察が大切である。そして、ヨード染色で淡染あるいは不染部分から確実に複数個生検するべきである。

2)SMT様の胃癌
 本形態の胃癌の頻度は、全胃癌の0.1~1.3%とされる。本形態をとる胃癌も組織学的に特徴があり、(1)リンパ球浸潤の強い(lymphoid stroma)癌、(2)粘液癌、(3)低分化髄様癌などが代表的である。画像診断の特徴的所見は、(1)境界鮮明な不整発赤、びらん、陥凹、(2)白苔の辺縁のはみだし所見、(3)不整発赤や不整びらん面が腫瘍中央部から偏位して存在する、(4)腫瘍基部の血管透見像の不整所見、(5)腫瘤の大きさに比べて中心潰瘍が大きい、(6)bridging foldに不自然さを認める、ことである。

3)SMT様の大腸癌
 占拠部位は、直腸>S状結腸>上行結腸の順で、その32%がsm癌で、68%が進行癌とされる。その成因として、(1)non-polypoid growth(IIcから発生)を示したもの、(2)粘液癌、(3)lymphoid stromaやリンパ球浸潤を伴う腺癌、が多い。診断にあたっては、インジゴカルミン撒布を行い、不整びらんや潰瘍を同定することである。また拡大内視鏡を用いたpit pattern診断が有用であり、工藤分類でVI~VN型pitの確認が診断に役立つ。

2、癌との鑑別が必要なSMT

1)GIST(Gastrointestinal stromal tumor)
 平滑筋、schwann細胞、神経細胞へと分化しうる多潜能を有する未熟間葉系細胞に由来する間葉系腫瘍である。本腫瘍の特徴は、CD34あるいはc-kitの免疫染色で陽性を示すことである。GISTの悪性基準の詳細は、日本癌治療学会からのGIST診療ガイドライン(http://www.jsco-cpg.jp/item/03/index.html)をご参照いただきたい。一般的な臨床的悪性の指標は、(1)腫瘍径が5cm以上、(2)Delle(デレ、潰瘍形成)を認める、(3)超音波内視鏡で無エコー領域(液状壊死を反映)を認める、(4)倍加速度1年以内である、ことである。
2)悪性リンパ腫
 胃悪性リンパ腫は、胃MALTリンパ腫とびまん性大細胞B細胞リンパ腫が多くを占める。前者はヘリコバクター・ピロリ菌の感染に伴い発生すると考えられており、除菌治療により70-90%が消失する。除菌治療に反応する病変は、腫瘍の浸潤が粘膜から粘膜下層に留まるもので、t(11;18)(q21;q21)染色体転座=API2/MALT1融合遺伝子を認めない腫瘍とされる。形態学的には、胃癌と異なり、(1)隆起、潰瘍やびらん、巨大皺襞などの所見が多発かつ混在し、多彩な形態を示す、(2)壁の伸展性が良い、(3)潰瘍は円形から類円形、平皿状潰瘍で耳介状周堤を形成する、(4)隆起型の場合、SMT様の病変を呈するものがあるが小潰瘍を伴っても蚕食像はない、(5)隆起の表面にcobblestone様所見や、うろこ状粘膜の所見を認める場合が多い、(6)超音波内視鏡所見は、胃癌に比べて低エコーで、内部エコーが均一である、といった特徴がある。最近、十二指腸濾胞性リンパ腫の報告が増加している。白色顆粒状の隆起が下行脚から深部小腸に多発するのが特徴であり、悪性度は一般に低い。
3)カルチノイド腫瘍
 胃カルチノイド腫瘍の頻度は、消化管カルチノイドの28.9%、胃全腫瘍の0.4%とされる。A型胃炎(自己免疫性胃炎)に伴うことが多いが、その分類として、I型:萎縮性胃炎による高ガストリン血症を伴うもの、II型:Multiple endocrine neoplasia typeI(MEN-I)/Zollinger-Ellison Syndromeによる高ガストリン血症を伴うもの、III型:ガストリンとは無関係に発生するものがある。それぞれの腫瘍に対する治療法は、Gilliganらがガイドライン(Gilligan CJ,Phil M,Lawton GP,et al.Gastric carcinoid tumors:the biology and therapy of an enigmatic and controversial lesion.Am J Gastroentrol 90:338-352,1995)を提唱しているのでご参照いただきたい。胃カルチノイドのリンパ節転移は、腫瘍径の増大とともに転移率は高くなる。1cm以下では10%以下、1~2cmで20数%となる。また、粘膜下層に浸潤した腫瘍では、胃癌と同様に15%前後のリンパ節転移を認める。
大腸カルチノイド腫瘍は、欧米では虫垂に多いが、本邦では直腸が30%以上を占める。肉眼的な特徴は白色から黄色調のSMTで、中心陥凹、びらん・潰瘍を認めるものが多い。大きさの増大と共に潰瘍の頻度は高くなり、深達度も深くなる傾向がある。超音波内視鏡所見は、第2層(粘膜層)に接し、粘膜下層に主座をもつ境界明瞭で均一な低エコー腫瘤として描出される。腫瘍径が1cm以上、病変に中心陥凹や潰瘍を認める病変はリンパ節転移が20%以上となり、外科的手術が必要である。また、腫瘍が固有筋層に浸潤すると50%以上にリンパ節転移を認める。

3、おわりに

 SMTと鑑別しなければいけない癌、逆に癌と鑑別しなければいけないSMT、さらに手術を考慮しなければいけないSMTの臨床的特徴について述べた。もし、診断に迷う症例に出会った場合、経過観察は行わずにぜひ、専門病院にご相談していただきたい。

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