兵庫県保険医協会

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当協会について

理事長挨拶

新年挨拶 2017年1月

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兵庫県保険医協会
理事長 西山 裕康

 皆様、明けましておめでとうございます。
 昨年中は協会の活動にご理解、ご協力いただきありがとうございます。特に「ストップ患者負担増」署名に際しましては、多くのご協力をいただき感謝しております。
 新年を迎えまして、ごあいさつとともに私どもの「患者さん窓口負担」に対する考え方をご紹介いたします。

患者さん窓口負担の問題点

 医療費の支払いにおいて、患者さんの窓口一部負担金を上げるのには問題があると私たちは考えています。

1、患者さん負担は「受難者」負担

 問題点の一つ目は、自分から望んでいないのに、たまたま病気になったり怪我をしたりした人の負担を増やすという点です。政府は「受益者感覚を持ってください」、つまり「医療サービスをたくさん受けているのだから、それなりに負担してください」といって窓口負担を上げてきました。
 一見「なるほどな」と思いがちですが、これには少々「考え違い」があります。
 例えば、皆さんが今、「普通の生活」をしているとします。その生活状態から、高速道路を利用したり、グリーン車に乗ったり、追加サービスを受けて「幸せな状態」になったとします。これは自分で選択できる上乗せサービスです。
 つまり「今日は高速道路を使って早く行こう」とか「今月は懐がさみしいから、グリーン車で帰るのは止めとこう」とか、自分で選択ができますので、サービスを受けた負担=追加料金は当然といえます。医療でいえば、個室料金などが、上乗せサービスにあたります。
 しかし、病気や怪我により医療そのものを受けるのは、「不幸な状態」です。しかも自分で予定したり、選んだりできません。「今日はお金がないから病気にならないでおこう」あるいは「忙しいから怪我しないでおこう」は無理ではないでしょうか。
 そのような病気や怪我の「不幸な状態」から、少しでも元の状態に戻るのに医療が「必要」で、この患者さんたちは「受益者=サービスを受けている人」というより、「受難者=災難にあった人」なのです。希望してないのに、たまたま災難にあってしまった人たちの負担を増やすのは、おかしな制度です。
 そもそも、国民皆保険制度は、そのような前もって「予定」や「選択」がままならない「不幸な状態」になった人を、みんなで助け合うための制度です。病気や怪我で費用がたくさん必要な患者さんの負担を増やすのは、方向違いといえます。

2、患者さん負担は、能力に応じていない不公平な負担

 問題点の二つ目は、患者さん窓口負担は、支払い能力に応じていない「不公平な負担」である点です。
 医療費の財源は「税金」と「保険料」と「患者さん窓口」負担です。そのうち、税金と保険料は能力に応じて負担していますが、患者さん負担は「災難に比例した負担」つまり「災難が多いほど多く負担する制度」となっています。医療保険制度も、税金や保険料のように、負担できる能力のある人がより多く負担すべきで、患者さん負担を増やすのは「不公平」だと考えます。

3、患者さん負担は、弱者を中心に受診抑制が生じる

 問題点の三つ目は、負担の増加により受診抑制が生じ、しかもそれが経済的な弱者、健康弱者を医療から遠ざけることです。
 例えば、患者さんの窓口負担が2割から3割になったとすると、やはり3割負担が大変だという方は、医療機関へ行くのをためらったり、あきらめたり、受診が途切れがちになります。そのことで、病気の早期発見が遅れたり、重症化したり、場合によっては手遅れになることもあります。
 私たちの調査では、経済的理由で治療を中断した患者さんが、医科で48%、歯科では56%で、5年前より10ポイント増えています。
 患者さん窓口負担は、受診抑制を生じさせ、経済的弱者や病気が重かったり、多かったりする人に受診をためらわせる、我慢を強いる―これは、医療保険制度としては本末転倒と言えます。

4、患者さん負担は、新たなモラルハザードと医療格差を生む

 最後はモラルハザードの問題です。
 以前より「窓口負担無料化」などによるフリーアクセスの向上が、「必要以上の受診」と「過剰な診療」を誘発する-これが「モラルハザード(=倫理の欠如)」と呼ばれ、医療保険財政悪化の原因と名指しされ、根拠のない非難を受けてきました。
 しかし、患者さん負担が上がれば、お金に余裕のある人だけが、フリーアクセスを確保するという、新たなモラルハザードが進んでいきます。患者さん負担がさらに上がれば、医療にも格差が持ち込まれ、お金に余裕のある人だけが、医療機関を自由に受診するといった、まったくおかしな制度になります。
 以上のような問題点から、協会は患者窓口負担の増加に反対しています。

医療は「能力に応じて負担し、必要に応じてサービスを受ける」のが原則

 医療は、支払った金額ではなく、その人の「必要に応じて」適切な診療を受けるのが原則で、医療が必要な患者に対して、自己負担を上げることにより、受診抑制(国民皆保険制度からの排除)につながるようなことがあってはなりません。これは決して医療関係者の「ポジショントーク」ではなく、日本の国民皆保険制度の原理・原則です。
 私たちは、この問題だけでなく、地域医療の充実・向上を目指し、皆様と一緒になって活動していきたいと思いますので、ご理解とご協力をお願いします。

アベノミクスと社会保障、国民皆保険制度

 さて、アベノミクスを掲げた安倍政権は6本の矢を放ちました。方向を間違えず、力強く的を射れば結果は出るはずです。ところが、いよいよ矢は折れ、数も尽きた様相を呈し、日銀総裁もその目標達成にギプアップ宣言をしました。
 この経済政策に4年近く日本を委ねた結果、「トリクルダウン」は起こらず、「道半ば」の間に格差と貧困が広がっています。期待感を膨らませる方法は巧みですが、日本国民は、富と安寧を実感していないのではないでしょうか。
 「世界で一番企業が活躍しやすい国」などは諦めて、「企業の蓄え」ではなく、社会保障の充実による「国民の豊かな暮らし」へと舵を切り、将来不安の少ない安心な社会を作りだすことこそ政府の仕事です。

酉年を迎えて

 今年は酉年、私も60歳になります。先人の努力のおかげで、世代的には右肩上がりの恵まれた時代を過ごしてきましたが、続く世代の行く末には不安を禁じ得ません。私たちの努力不足により、遺憾ながら右肩上がりの生活は望めないかもしれませんが、個人や集団が分断され、憎しみ合ったり、罵り合ったりすることなく、貧困や格差や差別が少しでもなくなることを願い、またそのために行動したいと考えています。
 酉年生まれを知った子どものころ、「トリ」は鷲(わし)か何かの勇ましい鳥と思っていたのですが、鶏(にわとり)を示すと知って少々がっかりした記憶があります。しかし、実は「トリ」は単なる当て字で、「酉」は果実が成熟した状態を示すようです。さらには「酒つぼ」を意味し、収穫した作物から酒を抽出する意味もあるようです。
 私たちの世代で成熟した果実は何でしょうか。その果実は、個人であれ、団体であれ、国家であれ、我先に貪ったり、一部が独占したり、外から奪われたりするのではなく、お酒の形でもいいから後世に残し、広く、長く味わってもらえるように努力したいと思っております。
 兵庫県保険医協会は、兵庫県下の医師・歯科医師を合わせて7300人加入の団体です。大きな目的として「患者さん・住民と共に地域医療の充実・向上を目指す」ことを掲げています。
 本年も会員、事務局員一丸となって努力する所存ですので、一層のご理解、ご協力の程お願い申し上げます。

評議員会挨拶 2016年11月

 本日は、第90回評議員会にご出席いただき有難うございます。また、平素は評議員として、協会の活動にご理解ご協力を賜り有難うございます。

 はじめに、最近の情勢について一言述べさせていただきます。

 ご承知のように、政府は、社会保障の自然増を来年度も5000億円に抑え、1400億円カットする方針です。来年度は診療報酬改定がありませんので、医療費の「削りしろ」としては、75歳以上の窓口負担の原則2割化、高額療養費制度の上限額の引き上げ、漢方薬・湿布・風邪薬などの保険外しなどが提案され、協会は反対の署名などを行ってきました。

 このような患者負担増には問題点が少なくありません。

 まずは、「受難者負担」であるという点です。政府は「受益者感覚を持とう」つまり「サービスを受けた人はそれなりの負担を」と言いますが、患者さんは決して「受益者」ではなく「受難者」です。この点、懐具合と相談して選択可能なグリーン車や高速道路料金と違って、医療は「必要」だから受けているのです。

 問題点の二つ目は、支払い能力に応じていない「不公平な負担」である点です。

 医療費の財源のうち、税金と保険料は不完全ながら「応能負担」ですが、患者負担は「災難に比例した負担」であり社会保障制度として「不公平」な負担です。

 問題点の3つ目は、負担増加により受診抑制が生じ、しかもそれが経済的弱者、健康弱者を国民皆保険制度から遠ざける点で、社会保障制度としては本末転倒と言えます。

 最後はモラルハザードの問題です。

 以前より「窓口負担無料化」などによるフリーアクセスの向上が、「必要以上の受診」と「過剰な診療」を誘発する-これを「モラルハザード」と呼び、医療保険財政悪化の原因と名指しされ、根拠の無い非難を受けてきました。しかし、患者さん負担が上がれば、お金に余裕のある人だけが、フリーアクセスを確保するという、国民皆保険制度上で階層消費的な新たなモラルハザードが進んでいきます。

 以上のような問題点から、協会は患者窓口負担の増加に反対しています。これは決してポジショントークではなく、日本の国民皆保険制度の原理・原則です。

 もう一点、今回の計画で注意すべき点が、「かかりつけ医」以外を受診した場合の定額負担上乗せ計画です。

 「かかりつけ」という言葉は、すでに「小児かかりつけ診療料」「かかりつけ薬剤師指導料」として診療報酬、調剤報酬に反映されています。歯科では今年の改定で「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」として導入され、問題となっています。

 今回、いかに財務省発とはいえ、「かかりつけ医」の定義や機能すら曖昧なまま、この計画を投げつけるのはあまりに乱暴です。しかし、その目論見が「ゲートキーパー制」「フリーアクセス制限」、そして「医療費抑制」であるのは間違いありません。この制度は、患者さんの指名・同意による「囲い込み」を経て、「登録医制度と人頭払い」への、まさに「ゲートオープナー」になると考えられます。

 会員署名のコメント欄にも、この計画の問題点、危険性を指摘する声が少なくありませんでした。保険医協会は、医師の団体として、このような公的医療費抑制を主目的とした、医師の差別化・分断化・階層化につながるような報酬制度には、原則として反対していくべきと思っています。

 さて、本年9月、世界医師会長のサー・マイケル・マーモット氏が来日し「健康の社会的決定要因=SDH(Social determinants of health)」をテーマに講演を行いました。彼は昨年10月の会長就任に際し、素晴らしい演説を行っていますので、その中から一部をご紹介したいと思います。

 「健康の重要決定要因は医療制度の外、つまり人が生まれ、成長し、生活し、働き、年をとっていく状況の中にある」「問題のひとつは貧困、もう一つは不平等である。ともに健康を損ない、健康の不公平な分配につながっている」「貧困を軽減し、生活賃金を支払い、燃料不足を減らし、労働条件を改善し、近隣の状態を改善し、高齢層の社会的孤立を減らす対策をとることで、命を救うことができる」

 そして彼の最近の著作、『健康格差:不平等な世界への挑戦(Health Gap: The Challenge of an Unequal World)』の冒頭の一文では、「せっかく治療した人々を、そもそも病気にした状況になぜ送り返すのか」と述べています。また、ドイツの病理学者であるルドルフ・ウィルヒョウの言葉「医師は貧しい人々の生来の弁護人である」を紹介しています。

 最後にパブロ・ネルーダの詩を引用し、賛同を呼び掛けています。「私とともに立ち上がり、悲惨さの仕組みと闘おう」。「悲惨さ」ではなく、その「仕組み」と闘おうと述べています。

 今回、進められている医療保険制度、介護保険制度の改悪だけでなく、日本でも広がる貧困や格差に対して、協会は反対の姿勢をとっています。

 ご紹介した世界医師会長の演説を目にし、医師の団体として、協会の進んできた道のり、方向が間違っていないと後押しされたようで、心強く思っております。皆様も「私とともに立ち上がり、悲惨さの仕組みと闘おう」という世界医師会長の呼びかけにぜひ賛同していただきたいと思います。

 ではこの後、協会の2016年度前半期の会務報告、後半期の活動方針、本年度予算前半期執行実績、ならびに後半期見通しにつきまして評議委員会にお諮りいたしますので、よろしくご評議ください。

 それでは、執行部に対する忌憚ないご意見、活発な討議をお願いしまして、ご挨拶とさせていただきます。ご清聴有難うございました。

就任挨拶 2015年6月

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兵庫県保険医協会
理事長 西山 裕康

 この度、兵庫県保険医協会の理事長に就任いたしました西山裕康です。

 平素は協会の活動にご理解、ご協力賜わりまして誠に有難うございます。私たち兵庫県保険医協会は、現在医師・歯科医師合わせて7200人を超える組織です。「患者住民とともに地域医療の充実・向上をめざす事」を大きな柱とし、命と健康を守る社会の実現に向け活動しています。

 さて、最近の医療・社会保障改革を見ますと、小泉改革に始まる「公的医療にブレーキ」に加えて、安倍内閣における「医療の営利産業化にアクセル」という新自由主義的政策により、多くの医療関係者が巻込まれ、一部は押し切られあるいは取り込まれ、その結果、健康弱者を始めとする社会的弱者にその「しわ寄せ」が及んでおります。

 日本の国民皆保険制度には、先人たちが作り上げてきた「いつでも、どこでも、だれでも」という理想があります。この理想を守り続ける事により、国民が最適な医療を享受できるという、世界に誇れる日本の医療制度を再確認し、その体制を堅持しさらに充実させるべきです。

 「いつでも、どこでも、だれでも」に反する「今だけ、ここだけ、自分だけ」を決して良しとせず、「能力に応じて負担、必要に応じて給付、結果として所得再分配を伴う」という社会保障の原則を当然とし、基本的人権としての医療・社会保障を守り続ける活動に邁進したいと思っております。

 兵庫県保険医協会の大きな柱は「患者・住民とともに地域医療の充実・向上をめざす」事です。そのためには皆様方のお力も必要ですので、今後とも協会の活動にご理解とご協力、ご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願いします。

 以上、簡単ですが理事長就任の挨拶とさせていただきます。

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