兵庫県保険医協会

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超早期乳がんを見つけよう
-乳腺外来との連携- [保険診療のてびき]

姫路市・にしはら乳腺クリニック院長 西原 徳光先生講演

年々増える乳がんの罹患率

 日本では、年々歳々乳がんの罹患率が増え、今では年間4万人以上の女性が乳がんになり、女性の16人に1人が乳がんになる時代になっています。その上、欧米と異なり乳がん死が確実に増えていますが、原因は乳がん症例の早期がん比率が有意に増加していないことです。
 2004年より、乳がん検診がマンモグラフィ主体になったにもかかわらず、2007年度の全国の早期がん比率は46%にすぎず、1992年度から7%しか上昇しませんでした。

超早期乳がんの考え方の提唱

 早期乳がんの定義は、遠隔転移と腋窩リンパ節転移がないことが前提条件で、触診または画像診断で腫瘍径が2㎝以下の乳がんです。しかし、この2㎝にはなんら論理的な根拠はなく、ただ触診で触知できる平均値にすぎません。
 理論的がんの成長曲線では、触診で触ることができる最少の大きさである1㎝径の腫瘤の成長には、発症から約10年の期間が必要と推定されています。それに比べて、腫瘤径が1㎝から10㎝に成長する期間は、わずか3年と推定されています。私たちは、成長速度が緩徐な時期である5㎜から1㎝の時期のがんの検出を目指すべきであることを、この理論がん成長曲線は雄弁に物語っています。
 姫路市医師会が、2003年度から2008年度までの6年間に行ってきた、マンモグラフィ併用乳がん検診で発見された乳がんにおける早期がん比率は65%でした。その中で特筆すべきことは、触ることができないがんにおける早期乳がん比率が85%という数値です。私たちが目指すべき、乳がん患者の早期がん比率の目標値が見えてきました。
 癌研の報告によると、約6千例弱の乳がん症例が対象の乳がん術後腫瘍径別生存率曲線において、腫瘍径10㎜以下の症例で術後10年以後死亡者が見られないことは、衝撃的な報告です。乳がんの年齢階層別の罹患率では、40歳代~50歳代にピークを迎えることを考えれば、私たちが乳がんを10㎜以下で発見することは、大きな福音をもたらすと想像されます。
 にしはら乳腺クリニックは、超早期乳がんという考え方を提唱します。超早期乳がんとは、早期乳がんのなかで腫瘍径が10㎜以下のものを示します。
 従って、超早期乳がんは、(1)がんの組織学的核異型度が低く、かつ乳管内のがん病巣の進展が進んでいない、(2)ER、PgRの発現量が高い、(3)HER2の発現量が低い、の3点のPotentialityを秘めています。
 その結果、生まれてくる福音は、(1)副作用に苦しむ化学療法の必要性が減少する、(2)外科的にがん病巣が遺残しない乳房温存術症例が増加する、(3)10年以降の再発率が極端に減少する、などです。

超早期乳がん発見比率を増やすために

 ここで、既述した期間に姫路市医師会が行った検診マンモグラフィで検出した106例の早期乳がんのなかで、超早期乳がんが占める割合を検討したところ、超早期乳がんは63例に相当し、早期乳がん内で59.5%も占めます。私たちが超早期乳がんで乳がんを見つけ出すことは、決して夢物語ではないことを示しています。
 乳がん患者において、超早期乳がん比率を増やすために、第1に女性が検診機関および医療機関に受診することから始まります。第2にマンモグラフィ、または乳腺超音波検査で病巣を確実に検出することです。第3に、病理学的に癌非癌の鑑別を確実に行うことです。この三つは、一つも欠くことができません。
 第一については、昨年度から開始された無料クーポン事業による乳がん検診受診率が増大したことなどから示唆されるように、行政の財政出動がこれからますます求められます。乳がん患者さんが医療機関受診に至った症状は「乳房のしこり」「乳頭からの血性分泌」「乳房痛」「乳房の違和感」「乳がんが心配で不安で仕方がない」などです。このような症状で多くの女性が悩まれていますから、一般女性が乳腺外来を受ける風景がありふれたことにならなければなりません。
 第二については、前提として検診マンモグラフィの読影精度は高くなければなりません。その上で、超音波検査についてはInterventionの適応に対して、適切なCriteriaを持っておくべきです。
 第三については、臨床医が乳腺病理医と議論できる程度の病理学的知見およびInterventionの代表である穿刺吸引細胞診(FNA)や経皮的針生検(CNB)の長所と短所に対する習熟により、癌非癌を最終診断していくことが重要です。
 にしはら乳腺クリニックは、2010年5月1日開院いたしました。開院以来2010年11月30日までの7カ月間に来院した、検診を除く乳腺関連患者総数1053例のうち、当院で乳がんと診断された乳がん患者数は33例、乳がん有病率は3.13%でした。早期乳がん患者数は16例、早期乳がん比率は48.5%にすぎず、既述の46%と差がありませんでした(図1)。
 さらに、にしはら乳腺クリニックでは、超音波検査で5㎜以上のサイズで認められた腫瘤性病変・のう胞性病変・低エコー病変など、がんも疑われる病変に対しては、図2~3の通り積極的にIntervention(穿刺吸引細胞診、経皮的針生検など)を行っています。

乳腺外科と他科の連携は必要不可欠

 今後は早期乳がんをより多く検出することが、ますます重要となります。そのためにも、乳腺外科と他科の連携は必要不可欠になると確信いたしております。ぜひ他科の先生方におかれましては、乳腺疾患に関心を持っていただいて、共に乳がん症例における早期乳がん比率の向上を目指したいものです。
 さらに一歩進んで、乳がん症例のほとんどが、超早期乳がん患者である世界を最終的に創り上げたいものです。
(姫路・西播支部「他科を知る会」より。見出しは編集部)

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審査対策部だより

再審査請求の取り扱い
支払基金は「写しレセプト」での再審査を実施

 レセプト審査は、従来レセプトの原本で行うこととされていたため、医療機関から再審査請求を行っても保険者から原本が返付されず、長期間放置されるケースが散見されていました。
 このため協会では、保険者からレセプト原本が返付されない場合は、医療機関がレセプトの写しを提出しているときは当該写しレセプトでの再審査を行うこと、写しがないときは無条件で復活とすることを求めてきました。
 支払基金では2010年4月から、医療機関から再審査請求があった場合、保険者へ該当レセプトの返付を依頼し、3カ月を経過しても返付・連絡がないときは再度返付依頼を行い、その後2カ月間経過しても返付・回答がないときは、医療機関が添付した写しレセプトで再審査を行う取り扱いに変更しています。
 このため、再審査請求を行う際は、可能であれば写しレセプトを添付することをおすすめします。
 今回の変更は一定の改善ではありますが、協会審査対策部では、引き続き写しの添付が困難な場合は無条件で復活とすることと併せて、国保連合会に対しても同様の取り扱いを行うよう要望していきます。

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