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学術・研究

医科

プライマリケアのための関節のみかた 腰痛診断(下)[臨床医学講座より]

西伊豆病院(静岡県)院長 仲田 和正先生講演

(前号からの続き)

9.腰椎X線読影のエッセンス(つづき)

 脊椎外傷では、Denisのthree columns theoryと言われるものがある(図1)。
 脊椎を、前からanterior、middle、posterior columnの三つに分ける。One  column損傷は安定しており、three columns損傷が最も不安定である。またmiddle column損傷は、神経症状や不安定性と密接な関係がある。
 脊椎圧迫骨折が新鮮か陳旧性かはMRIでよく分かるが、単純X線では難しいことも多い。
 陳旧性ではリモデリングが起こるため、椎体前縁の輪郭がスムースな凹であることが多い(図2)。棘突起の打痛があることも、傍証になる。
 胸椎正面X線では、特に脊椎傍線(paraspinal line)に注目するとよい(図3)。新鮮な圧迫骨折では、脊椎傍線が局所的に腫脹していることがある。脊椎傍線は本来脊椎の両側にある軟部組織であるが、左側は正面X線で、X線と接線方向になるので左側に見える。
 化膿性脊椎炎では、急速な椎間板の狭小化と隣接の骨の溶解が特徴である。これは、血行性感染により細菌が椎体の軟骨終板の下に感染巣をつくり、やがてこれが椎間板へと穿破するのである。一方、椎体の癌転位では椎間板は侵されない。
 椎間板が狭くなるのが、化膿性椎間板炎で、椎間板が正常なのが癌転移である(図4)。これは細菌はprotease(蛋白分解酵素)を持っているため、椎間板を溶かす。一方、骨髄は癌の増殖因子(IGF、TGF-β)を豊富に含むが、椎間板には全くないらしく(不毛の地)、椎間板は癌に侵食されない。
 癌の骨転移は、赤色髄のあるcentral boneである。従って骨転移を探すのは、頭蓋骨、脊椎、骨盤を第一とし、必要に応じ他の部位を撮影する。骨転移では、骨膜反応はまれである(ないわけではない)。
 椎間板の外側の線維輪は、椎体と強いSharpey fiberと強固に結合しているが(椎体と線維輪は同じ中胚葉由来。髄核は内胚葉)、変形性脊椎症(spondylosis deformans)ではこのSharpey fiberが切れ、椎間板が前方へ突出していく。すると、前縦靭帯が付着する椎体が引っ張られて、骨棘ができる。この骨棘は、椎体の端から数㎜離れたところにあるのが特徴である(図5)。
 後縦靭帯は椎体としっかりした結合がないため、椎体後方には骨棘はできない。変形性脊椎症は椎間板線維輪の変化であり、水圧の高い髄核は保たれるため、椎間板の高さは正常である。
 強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis)は椎間板線維輪の末梢線維の石灰化、骨化が起こるため(syndesmophyte)、椎体から垂直に骨化が起こる(bamboo spine)(図5)。変形性脊椎症の骨棘とは異なる。
 椎間板線維輪が変性するのが変形性脊椎症であるが、椎間板髄核が変性するのをintervertebral osteochondrosis(これに相当する日本語がない)という(図5)。レントゲンでは椎間板内にガス像が見られ、vacuum phenomenonと言われる。水圧の高い髄核が変性するから、椎間板の高さは小さくなるし骨棘はできない。

10.治療はNSAID±、2日以内のベッド安静、ウォーキング(red flagのない時)

 (1)「今のところ、怖い病気はなく、すぐ改善しますよ」と説明。急性腰痛は、数日から4週以内に9割は改善。ただし坐骨神経痛のある場合は、少し時間がかかる旨説明。
 (2)NSAID±筋弛緩剤を処方する。
 (3)痛ければ、2日以内の安静を。早めに、ウォーキング(静止自転車、水泳、良くなれば軽いジョギング)などを始めてください。
 (4)腰痛体操は、最初の数週は勧めない(aerobic exerciseより腰への負荷が大きい)。

11.腰痛時、禁止すべきこと(図6)

 (1)重量物挙上:急性腰痛を悪化させる。
 (2)前屈位:急性腰痛を悪化させる。物を持ち上げるときは、膝を曲げ、おしりを落とすこと。

12.理学療法の可否

 (1)牽引:急性腰痛には無効である。
 (2)理学療法(マッサージ、低周波など):無効である。
 (3)鍼治療:鍼は慢性腰痛には有効かも。トリガー注射:無効である。
 (4)Manipulation(整体的治療):坐骨神経痛のない急性腰痛(1カ月以内)に有効かも。
 (5)コルセット:無効である。

(「腰痛診断」終わり)

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