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日曜日診療のメリット・デメリット[第19回日常診療経験交流会演題より]

尼崎市・前田ファミリークリニック 前田 重人

はじめに

 日曜日に通常診療を行うクリニックは現状では少なく、また病院などは救急には対応していても、通常診療という形で日曜日にオープンしているところはほとんどありません。当院は、2006年11月6日開業以来、日曜日午前診を行っております。
 今回、日曜診療の長所、短所について、地域貢献度、経営、QOLの面から考え、これから開業しようと思われる先生方や、他の開業医の先生方に少しでも参考になればと思い、報告いたします。

当院について

 当院は、JR立花駅北側、東商店街通に開院しました。標榜科は、消化器科、内科、外科、肛門科、皮膚科、心療内科、精神科です。医師は、院長である私前田と、副院長の山内が常勤で勤務しており、非常勤では消化器内科の谷口、皮膚科専門医の英がいます。

〈開業場所〉
 開院は、私と開業準備期間から携わってきた副院長の2人でプランニングを行いました。開業に際し、一番の難所は場所探しでした。これは、予想外の難所でした。
 たとえば、同じコンビニでも、はやっている所もあれば、閑散としている所もあります。全く同じ外観で、同じ商品を同じ値段で売って、同じような雰囲気で全く同じものを提供しているにもかかわらず、はやっている所もあれば閑散としている所もあります。すなわち、人を集めるためには、立地条件、場所がかなり重要なことと認識しておりました。ですから、開業場所探しは一番のこだわりでした。
 数社に依頼し、いろんな物件を紹介されました。しかしながら、駅近であっても住宅街で人の流れが悪かったり、人の流れはあるものの駅から離れていたり、なかなか満足できる物件はありませんでした。当院は、心療内科、精神科も標榜する予定でしたので、遠方からの患者さんも来られることを念頭においておりました。ですから、駅近で人の流れがある場所にこだわり続けました。
 なかなか物件が決まらず、やはりもう少し妥協した方がいいのかもと少しあきらめだした頃、およそ場所探しをしだして1年半たった頃、現クリニックの場所を紹介していただきました。これで、開業の第一歩を踏み出すことができました。
 ここからは、今までの停滞がうそのように、次々と決めなければならないことが大波のように打ち寄せてきました。建築会社、銀行、医療機器メーカー、税理事務所などの選定と交渉をはじめ、様々な事柄を決めていかなければなりませんでした。

〈診察日、診察時間、休診日〉
 その決定事項の一つが、診察日と診察時間、休診日をどうするかということでした。
 いくつかのプランがあり、一つは他院と同じく休診日を木曜日、土曜日の午後と日曜、祝日とする。または、木曜日は終日診察を行い、土曜日の午後と日曜、祝日のみ休みにする。そして次のプランが、現在の診療体制である、日曜日午前および土曜日終日は診療を行い、外来患者数が一番少ないとされる火曜日を終日休みとするプランでした。
 勤務医時代に、多くの癌患者さんを診察しました。その中には、少なくない数の患者さんが末期を迎え、亡くなられました。入院中の患者さんとお話をしていてよく思い出されるのが、仕事が忙しくて調子が悪くても病院に行く時間がなかった、検査を受けた方がいいと言われたけど時間がなかった…という会話です。
 昔、私が担当した胃がん末期の患者さんがおられました。胃の調子が最初に悪いと思われたのは、亡くなられる1年前でした。当時、私が勤務していた宝塚市立病院を受診されたのは、3カ月前でした。もう我慢の限界と感じられ、会社に休みを届けて受診されました。受診時はすでに多発転移をしており、腹水も認められる状態でした。もっと早く受診したらよかったのにと心の中で思ったとき、その心の声がその方に届いたのか、「サラリーマンしてたら日曜日しか空いてないからなぁ、病院行く暇なんてなかったわ」とおっしゃられました。
 確かに、サラリーマンをはじめ多くの方は日曜日しか休めず、そしてその日曜日というと多くのクリニックが休診で、一方、病院はというと救急はしていても、通常の高血圧、糖尿病、脂質異常症などの慢性疾患の管理や上部、下部内視鏡、超音波やCTなどの検査を、通常診療として行う病院はほとんどありません。そういったことから、開業したら日曜診療をしたいとの希望がありました。また、経営的にも開業当初不安ですし、日曜診療をすると増患にもつながるだろうと思い、日曜診療を決意いたしました。

日曜日診療

(1)地域貢献度から見たとき
 これに関しましては、やはり患者さんから喜ばれます。「日曜日開いていて助かるわぁ」「日曜日やってくれてなかったら、血圧今もほったらかしやわ」「検査もできるから、ありがたいわぁ」などなど。患者さんにとってのニーズは、かなり多いと思われます。
 ただ検査に関しては、上部内視鏡、下部内視鏡(ショート)、超音波、CTは日曜日にも対応できていますが、下部内視鏡(トータル)は対応できておりません。また時間がかかる緊急は、救急病院に行っていただくこともあります。
 以前、「顔をけがした人を当院で診てもらえるか」との問い合わせが事務からあり、気軽にいいよと返答しました。しばらくたってから、救急車のサイレンの音がかすかに聞こえてきました。やがてその音が段々と大きくなり、明らかに当院に近づいていることがわかります。そして音量がマックスになったとき、突然音が消えました。そうです、当院へ搬送されたのです。
 当時事務員は新人で、救急搬送にもかかわらず、顔をけがした人を診れるかどうかのみ私に質問したので(しかも気軽な感じで)、私も引き受けました。
 患者は20歳代女性で、顔を右眼瞼から眉を通り越して、前額部まで切創していました。創は骨まで達していましたがX-Pでは骨折なく、頭部CTでも出血、挫傷はありませんでした。女性の顔なので、できるだけきれいに何度も洗浄しデブリした後、何層にも分けて吸収糸で縫合し、最後に皮膚はテンションがかからないよう細心の注意を払って真皮縫合を行いました。縫合に要した時間は、1時間半でした。
 もちろん、その間、他の患者さんを診ることができず、風邪などの方は夜間休日診療所を紹介しました。結局、救急をクリニックレベルで引き受けてしまうと(もちろん私の本意ではなかったのですが)、他の患者さんを診ることができなくなるので、それ以降は時間を要する処置は、救急病院を紹介しています。
 現在は、定期通院の必要な慢性疾患、風邪などの比較的軽症の疾患を中心に診ています。救急には対応できませんが、それでも患者さんのニーズは多いものと思われます。
 地域貢献度からみる短所は、特にないかと思います。ただ、通常のクリニックは火曜日に診療しており、当院も火曜日診療しているものと思い込んだ患者さんが、時々「この間の火曜日来たけど、閉まってたわぁ」と言われることぐらいでしょうか。いまだに時々言われます。

(2)経営面から見たとき
 すなわち増患という面から見ると、当然ながらその効果はあります。サラリーマンをはじめ、日曜日にしかクリニックに行けない人の定期フォロー、風邪などの軽症の方の救急などニーズは多いかと思います。
 当院における2010年3月1日から同年8月31日までの半年間の、初診および新規患者さんの割合を曜日別にまとめてみました(下図)。

(図)
初診率(一日の初診の人数/一日の患者数)
新規患者率(一日の新規患者数/一日の患者数)

  初診率 新規患者率
月曜日、水曜日、金曜日、土曜日 15.4% 6.2%
木曜日 20.0% 9.2%
日曜日 21.9% 12.5%

(ただし、心療内科、精神科は完全予約のため、統計から省略)

 

 木曜日は平日ですが、他院は休診が多いため、木曜日は独立して統計処理しました。
 初診率では、平日の15.4%に対して日曜日は21.9%とやはり高く、また新規患者率も平日6.2%に対して日曜日は12.5%と約2倍になっています。すなわち、平日は約16人に1人が新規患者さんであるのに対して、日曜日は8人に1人が新規患者でした。
 開業から3年10カ月の時点で、新規患者数はおよそ8,200人です(心療内科、精神科含む)。数字でみる限り、日曜診療は増患につながると思われます。また土曜日午後、日曜日は夜間早朝等加算がつきます(些少ですが)。
 短所として考えられるのは、スタッフの確保です。やはり平日午前の勤務希望が多く、日曜日や土曜日夕方は確保が難しいかと思います。特に開業当初、スタッフはパートの方のみで、当時はスタッフ確保に苦労したのを昨日のことのように覚えております。現在、常勤事務5人、看護師2人と常勤が多くなり、比較的日曜日のスタッフにも、余裕をもって対応できるようになってきております。

(3)QOLから見たとき
 これは、何と比較するかで全く考え方が変わり、またどの観点から見つめるかによっても考え方が変わってきます。
 日曜日は子ども、家族と過ごすことが多く、いろんな行事も日曜日に多いです。ですので、そういった面では明らかにマイナスです。
 しかしながら、平日はどこへ行くにも混雑がなく、また待ち時間も少なく、サービスも日曜日より充実しており、料金的にも安い場合があります。私が行く理髪店も、平日は日曜日より丁寧ですし(少なくとも私にはそう思えますが…)、終わったあとのマッサージの時間も日曜日より長い、といいことづくしです。近くの映画館も火曜日は安く、混雑もなくゆったりと映画が見られます。そういった面では、平日休みもなかなかいいかなと最近思います。
 子どもも夏休み、春休み、冬休みと意外に火曜日の休みが多く、家族、子どもと過ごす時間からみても、決してQOLが損なわれることはないかなと思います。
 QOLを考えた場合、最初にも述べたように、何と比較するかが大切なポイントかと思います。私の場合は、勤務医時代との比較でした。その頃の日曜日の午前は、ほとんど患者さんを診に病院へ行っていましたし、時にはそのまま夕方まで病院にいることもしばしばありました。バイトを含むと月に10回程度の当直があり、平日に休むことなど夢のまた夢でした。その頃と比較してQOLを考えると、現在かなりハイレベルかなと思います。

まとめ

 日曜午前診の患者さんのニーズは多く、経営面でも増患が期待できます。
 QOLに関しては、個人の価値観、考え方で変わるものの、今後新規開業を考えておられる先生方にとっては、一つの選択肢になりうるものと考えられます。
 前田ファミリークリニックのホームページ http://hccweb5.bai.ne.jp/~hei13801/

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