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OCの確実な避妊効果と利点の伝え方
-その普及のために- [診内研より]

青森県・弘前女性クリニック 蓮尾 豊先生講演

はじめに

 1999年9月に低用量ピル(OC)が日本でも使用可能になり、間もなく12年になります。この間、確実に服用者は増えてはいますが、普及率は約3%前後と欧米に比べ、まだまだ低い数字です。
 米国では、1960年にエナビット10という高用量ピルでその歴史が始まりましたが、低用量ピルが開発された1973年までの13年間で、服用者数は1000万人に達しています。日本では、最初から安全性の高い低用量ピルを使用できたにもかかわらず、10年間で100万人弱という服用者数にとどまっています。
 この差は、どこから来ているのでしょうか。第1に、副作用の多い薬剤という誤解、そして確実な避妊効果や利点が理解されていない点にあると考えています。
 これらの点をクリアしなければ、普及率の上昇は期待できません。多くの女性たちが低用量ピルを受け入れるためには、副作用の多い薬剤ではなく、むしろ、がんの罹患率低下なども含めて多くの利点があり、本来の目的である避妊に関しても最も確実な方法の一つであることを、いかに伝えるかにかかっています。伝えるべき内容と、その伝え方について考えてみます。

OCの避妊法としての優位性

 避妊法として兼ね備えるべき条件には、表に示すようなものが考えられています。それぞれの項目について、OCとコンドームを私なりに比較・評価してみると、どの項目でもOCが優位あるいは同等の結果となります。特に、「避妊効果が確実なこと」と、「女性が主体的に使えること」の2項目は重要です。
 しかし、残念ながら多くの女性に、ピルの確実な避妊効果は伝わっていません。従来から、多くの医学書やOCユーザー向けの小冊子に記載されているOCのパール指数0.3~8%では、誤解されても仕方がないかもしれません。
 ところが、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が作成した「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2011」では、OC承認前の臨床試験のデータを元にOCのパール指数を0~0.59と記載し、なおかつ、この数字は「避妊法の中では最も低いもののひとつである」と表現しています。産婦人科医自らがこのことを理解し、女性にOCの確実な避妊効果を伝えることが必要でしょう。

確実な避妊効果と副効用の関連性

 このようなOCの確実な避妊効果は、主に排卵の抑制、子宮内膜の菲薄化による着床阻害、頸管粘液の性状変化による精子の子宮内進入阻害の3点から成り立っています。避妊効果と副効用の関係について、述べてみます。
(1)排卵の抑制と卵巣がんの減少
 OCの避妊効果の中で、最も重要な役割が排卵の抑制ですが、この排卵の抑制により、いくつかの疾患が減少することが知られています。卵巣がんの減少、出血黄体嚢胞の予防などが代表的なものです。
 OC服用で排卵が抑制されることは、すなわち卵巣の傷つきを抑えることになり、このことが卵巣がんの減少につながっています。2008年Lancet(Lancet371:303-314,2008)に報告された論文によると、卵巣がんの相対危険度は5年以上の服用で0.64,10年以上で0.56,15年以上で0.42に低下するのです。
 また、2007年BMJ誌に報告されたOC服用の有無と、がんの発生率では、「乳がんを含めて全体的な発がんリスクはみられず、データ群によって異なるが、3~12%の発がんリスク減少が確認された」と記載されています。
(2)子宮内膜の菲薄化と月経痛の減少など
 OC服用により子宮内膜は菲薄化し、受精卵の着床を阻害し避妊効果を示します。当然ですが、子宮内膜が菲薄化すると子宮内膜由来のプロスタグランディンの産生は減少し、結果として月経痛の改善につながります。もちろん、子宮内膜が薄いのですから、月経血量は減少し、貧血の改善にもつながります。
 月経困難症を適応病名としたルナベル(R)やヤーズ(R)なども、海外では避妊薬として認可されているOCそのものなのです。
(3)頸管粘液の性状変化と骨盤内感染症の減少
 OC服用により頸管粘液の粘稠性が変化し、精子の子宮内進入を防ぐことにより避妊効果を高めています。このことは、同時に細菌などの子宮内侵入を防ぎ、子宮内膜炎、卵管炎、骨盤腹膜炎などの感染症を減少させると考えられています。
 しかし、2005年の日本産科婦人科学会のガイドライン改定では、エビデンスに乏しいという理由でOC服用により減少する疾患から外されています。今後の研究を待つ必要がありますが、スペロフの避妊ガイドブックにはOCと骨盤内感染症の減少も記載されていますので、この点に関するメリットもあると考えていいのではないでしょうか。

OC普及のためのコミュニケーション・スキル

 OCが普及するためには、今まで述べてきたように、確実な避妊効果と副効用を伝えることが重要です。具体的には、中絶手術後にその反復を確実に防ぐためにOCを勧め、また緊急避妊ピル処方時には、より確実な避妊法としてのOCを勧めることは当然のことです。
 この2点に関して、全国の産婦人科医が実行するだけでも、OCは数倍の普及率となるでしょう。
 さらに、普及を進めるために大事な点は、問診室での患者さんとの会話です。どのような主訴で婦人科を受診したとしても、多くの女性にはOC服用によるメリットが存在します。そのメリットを婦人科医が見い出してあげることも、われわれの役割と考えています。
 その際に必要なことが、コミュニケーションに関するスキルです。その女性がOCを受け入れてくれるためには、説得力あるコミュニケーション・スキルが必要です。説得力を生み出すためには、Ethics、Sympathy、Logicの3要素が重要です。徳・品性を持ち、同情や思いやりを持ち、そしてしっかりした医学的知識が必要です。
 この中で私は、Sympathyが特に重要と考えています。勇気をふるって婦人科を受診した女性に対し、同情と思いやりを持ち、主訴以外の婦人科的な問題を見い出してあげる必要があります。
 性感染症を心配して受診していても、実は避妊の不安をいつも抱えているのかもしれません。あるいは、毎月の月経トラブルで、生活の質をとても損なっているかもしれません。このような思いをもって、コミュニケーションを心がけると、多くの女性に対するOCの必要性が見えてきます。
 結局、女性に対する婦人科医の思いが、OC普及には最も重要なのではと感じています。

おわりに

 私は、OCを含めた婦人科に関する24時間の電話・メール相談を行っています(図)。OCの普及のためには、OCに対する不安・疑問を解決し、誤解をなくすことが重要と考えているためです。
 インターネットにも公開していますので、先生方の患者さんにも利用するようにお伝えください。

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