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学術・研究

医科2011.09.05 講演

当院の高血圧と合併するCKD通院者にみられる脂質異常症をはじめとするリスクファクターの検討 [第19回日常診療経験交流会演題より]

西宮市 広川内科クリニック 広川 恵一

はじめに

 2009年の第18回日常診療経験交流会の話題提供「日常診療での〈ABCDE〉リスク評価による高血圧症通院者の健康管理の検討」で、当院高血圧者任意抽出100人について、A(Age)、B(Blood Pressure)、C(CKD)、D(Drugs)、E(etc:癌・高血圧・糖尿病の合併)に関する報告を行った。
 その中で、慢性疾患通院者の健康管理のマンネリ化を避け、質を高めるために、(1)受診者の予後についての自院でのデータを持つこと、(2)合併症・併発症など自院でのデータを持つこと、(3)日常診療の実感を数値化すること、(4)同時に高血圧症診療ではCKD概念を活用することは有用であることを示した。
 上記について、1年後の変化とリスクファクターについての検討を行うことにした。

目的と方法

 今回は日常診療に役立てることを目的に、前回対象者についてCKD患者を中心に
Ⅰ.1年後の状況(2010年7月末時点)の
 (1)中断とその原因
 (2)CKD者の全体に占める比率
 (3)非CKD・CKD者の1年後の血圧コントロール状況を比較した。
Ⅱ.現在通院中88人の非CKD者59人・CKD者29人に対し、
 (1)脂質異常症
 (2)糖尿病合併
 (3)高尿酸血症
 それぞれの合併の実際について調査を行った。

対象 

 2009年4~6月高血圧にて受診した男性38人、女性62人、計100人を任意抽出。平均年齢70歳(当時)。
 男性平均年齢 71歳・49~94歳
 女性平均年齢 70歳・45~98歳
 1年後の状況(2010年7月末時点)

結果

 (図1~13に示す)
Ⅰ.1年間の経過について
 (1)昨年調査100人中1年後の中断12人の内容は、CKD者で死亡が肝癌・脳出血・COPD各1人。入院中が心筋梗塞1人、誤嚥性肺炎各1人、非CKD者では死亡なく、入院が総胆管結石・骨折・転居それぞれ1人、認知症で施設入所・不明がそれぞれ2人であった。
 (2)88人中CKD者は29人(33%)であった。
 (3)非CKD者は昨年度調査では血圧140/90未満コントロールが78%、本年は83%。CKD者は昨年度調査では血圧130/80未満コントロールが28%、本年は41%であった。
Ⅱ.通院中88人の非CKD群59人・CKD群29人について
 (1)脂質異常症合併では非CKD者が39%、CKD者が41%であった。
 (2)脂質異常症併発者に対する改善薬使用は、CKD者38%、非CKD者29%であった。
 (3)糖尿病合併では非CKD者が20%、CKD者が14%であった。
 (4)高尿酸血症合併では非CKD者が7%、CKD者が41%であった。
 (5)高尿酸血症合併ではCKD者に限れば男性67%、女性33%であった。

まとめ

 (1)高齢者も多く年間数パーセントの死亡をあわせて1割余りの中断があり、個々の予後を想定しながら対応することは、慢性疾患の健康管理をすすめる上で大切と考えられた。
 (2)1年後の降圧管理目標の達成は昨年に比してすすんでいる。一律な降圧目標の設定は適切でないが、降圧実績を数値で確認することで、より降圧目標を追求した診療内容へと反映できる。
 (3)CKDについて、ネフローゼタイプ・腎障害タイプと分けて脂質異常の検討を考慮したが、例数が少ないため両タイプの検討は行わなかった。
 (4)脂質異常症併発者に対する薬物治療はCKD者に多くみられた。
 (5)糖尿病は、CKD・非CKDに合併について差はみられなかった。より多くの件数で年齢別での比較が必要と考えられる。
 (6)高尿酸血症は、日常診療の実感に一致して多くCKDに合併し、またその増悪因子であるが、その成り立ちから考えて、対応の検討が必要と考える。
 (7)他のリスクファクターとCKDを軸に意識した健康管理は、薬剤副作用を防ぐためにも大切である。
 (8)自院での日常診療での実感を数値化して見直すことで、診療の質を高めることができる。
 (9)日々の高血圧診療は、経時的変化、合併症の面でも実に変化と奥行きに富んだテーマであると考える。

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