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[保険診療のてびき] 頭痛診療のコツ

西宮市・山口クリニック  山口三千夫先生講演

 頭痛には、こわい頭痛とこまった頭痛がある。
 こわい頭痛とは、頭痛が一つの症状に過ぎないもので、本当は「こわい」疾患が存在するものである(くも膜下出血、髄膜炎、血腫など)。これを症候性頭痛、ないしは2次性頭痛という。
 こまった頭痛とは、通常は、頭痛は独立した一つの疾患であって、片頭痛、群発頭痛、緊張型頭痛などである。機能性頭痛とか、1次性頭痛と呼ばれるものがこれに入る。

Ⅰ こわい頭痛について
 こわい頭痛のうちでも、急性症候性頭痛を見逃したら、言い換えれば、こわい頭痛を的確に診断することができなければ生命にかかわることもある。
 しかし、これは数の上からは多いものではない。くも膜下出血、髄膜炎、脳炎、脳膿瘍、頭部外傷(特に慢性硬膜下血腫が重要)、脳出血、出血性梗塞、下垂体卒中などである。これらの場合、ある病気の一症状としての頭痛であることに注意したい。
 簡単にこれら症候性頭痛、ないしは2次性頭痛について述べると、やはりくも膜下出血が最も重要であり、これは、突然の激しい頭痛(生涯最悪の頭痛)が特徴的である。同時に一過性の意識消失や項部硬直(70%に見られる)があるものである。
 ただし、ときにWarning leakと称する動脈瘤からの大出血ではなく、少しずつリークするような出血があることがあり、この場合は頭痛のみが数日続くこともある。この場合、頭部CTでくも膜下出血が見つからないこともあるので、場合によっては腰椎穿刺による髄液検査が必要なことがある。
 しかし、くも膜下出血では普通は激しい頭痛が起こってくるものであり、以前から片頭痛などがあった人でも、くも膜下出血のときには「いつもと違う頭痛」であったという人が多い。くも膜下出血で死亡するのが3分の1、出血のため障害が残る人が3分の1、完全に社会復帰できる人が3分の1であるという研究もあるが、ともあれ十分に気をつけたい疾患である。
 次に、髄膜炎、脳炎、まれに脳膿瘍などの場合の特徴は、頭痛の他に急性の発熱を伴うこと、痙攣や意識障害などの神経症状が見られることがあること、項部硬直やケルニッヒ徴候を見ることなどであろう。
 特に、髄膜刺激症状があることが重要である。この場合には、髄液検査を行うと蛋白増加、白血球増多等があるが、当然入院させる必要があるので、一般医家の場合には高熱があったり、項部硬直も疑われた場合には適切な対処が必要である。
 くも膜下出血でも髄膜炎でも、くも膜下腔に出血なり病原体が存在したりすることによる炎症症状が起こって、はげしい頭痛すなわち髄膜刺激症状が起こるわけである。
 一方、急性の頭部外傷では、側頭部などの頭蓋骨に骨折があって、血管が損傷されると数時間で血腫の体積が危険な量にまで増大する急性硬膜外血腫が危険である。しかし、この場合は、むしろ頭部外傷が主体であって頭痛のみが訴えられることはないといえる。
 ただし、老人では畳の上で転んでも致命的な外傷性の脳出血となることがあり、注意すべきであろう。老人の頭部外傷では、念のために頭部CTを撮っておくことが勧められる。
 慢性の場合には、特に慢性硬膜下血腫が重要である。1~3カ月前に意識障害を来たさない程度の頭部外傷を受けた場合、もし頭蓋内に血腫ができてきても、頭痛だけを訴えて他に症状がないこともある。老人だから少し認知症が始まっているなどと軽く考えないで、外傷の既往がないか、ぜひ詳しい問診が必要となるわけである。
 なお最近、椎骨動脈の動脈解離、あるいは解離性動脈瘤というものが注目されている。多いものではないが、くも膜下出血を起こしたり、小脳の梗塞を起こしたりするものであり、症状としては単に片方の頸の痛みだけが頑固に続くときなどは、MRA(磁気共鳴血管画像)による椎骨動脈の精査が必要なことがある。診断は簡単でないこともあるが、このような疾患があることもぜひとも知っておいていただきたいと考える。
  表 こわい頭痛をみつけるには
 何より大事なこと!
 1.「いつもと違う頭痛だ!!」
 2.「急激に起こってきている頭痛だ!」
  ――この1週間ほどですが――
  ――昨夜から急に痛くなって――

Ⅱ こまった頭痛について
1.片頭痛
 片頭痛には、前兆のある片頭痛と前兆のない片頭痛があるが、後者の方が圧倒的に多い。
 前兆のある片頭痛では、はじめに視野の一部にキラキラするものが見えることが多く、しかもその部分の向こうは見えない(すなわち閃輝暗点)という特色があるので、子どもなどでは視野の一部に見えにくいものがあるとも表現することがある。
 この閃輝暗点は、15分から30分で消失するが、そのあと激しい頭痛が発来し、通常は吐き気と嘔吐を伴うことが多い。ときにはキラキラ光らず視野の一部が見えにくいだけのこともある。閃輝暗点が見えた時点でトリプタン(例えばマクサルトなど)を服用させると激しい頭痛が回避できることもあるが、早期から嘔吐が激しい人はトリプタンを服薬しても吐いてしまうことも少なくない。
 この場合は、イミグランの点鼻や皮下注が有効である。イミグランの自己注射が勧められることもあるが、使用法を頭痛専門医によく聞いて行うべきである。
 前兆のない片頭痛でも、同時に肩こりや軽いめまい感、吐き気や嘔吐を伴う。ロキソニンでは不十分な場合には、やはりトリプタンの使用が望ましい。ロキソニンなどが効かない場合でも、マクサルトなどトリプタンで頭痛が軽減することは少なくない。
 女性では、生理2日前くらいからとか排卵日にも発来することがあるが、そういう女性は、更年期が過ぎると頭痛が軽減することが知られている。
 片頭痛の診断には、以下の「1」から「5」の基準が用いられている。それは:
 「1」これまで5回以上、同様の頭痛発作があったこと。
 「2」持続は4時間以上72時間くらい。
 「3」以下の四つのうちの二つ。(1)片側性の頭痛、(2)拍動性の頭痛、(3)日常生活に支障がある頭痛、(4)体動で増悪する。
 「4」以下のうちどちらか一つ。(1)悪心または嘔吐、(2)羞明と音過敏。
 「5」脳などの器質的な疾患がないこと。
 しかし、厳密にこの診断基準を適用する場合、ぜひ、分かっておいてほしいのは、「3」のうちの拍動痛の部分と片側性かどうかの部分である。どちらも「拍動痛のこともありますか」、「片側性のこともありますか」と聞いて、イエスであればよいのである。
 これは図1のように、片頭痛の場合の痛みの性質がいろいろであり、必ずしも拍動痛ではないこともあることに起因する。
 また、片側痛であるかどうかについても、図2のように常に片側ではないこともあるのである。また締め付けられるような痛み(緊張型頭痛のようである)もあることに、注意されたい。
 これで分かるように、いつも片側が痛いは25%しかない。はじめは片側が痛いのは14%、両側も痛むのは44%もあるという事実は重要である。
2.緊張型頭痛
 これは、事実上はロキソニンで十分に治る程度の頭痛であるが、むしろ頭痛へのこだわりや、頭部神経痛の合併がある場合に治療を要するといえよう。
3.群発頭痛
 これは1年に1度くらい、1カ月持続し、1日に1回、約1時間続く、1側の目の奥が抉られるような頭痛といわれる。目の奥が痛いだけでも毎日、1~2回、1時間ほど激しい痛みが来る場合でなければ、群発頭痛ではない。
 群発期には予防も大切であり、熟練した頭痛専門医に任せた方がよいと思われる。イミグランの自己注射が奏功するし、保険も通っているが、普通の施設には常備されていないのが難点である。
 この他にも、薬物乱用性頭痛や髄液減少性頭痛など難治性の頭痛もあるが、これらは頭痛学会のホームページから調べられる頭痛専門医に任せた方がよいかもしれない。
(6月16日淡路支部日常診療勉強会より)
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