兵庫県保険医協会

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学術・研究

医科2012.09.25 講演

第20回日常診療経験交流会演題より [保険診療のてびき] 胃がんリスク検診(ABC検診)の取り組み

宝塚市・良元診療所  脇野 耕一

はじめに
 わが国の2009年死因別死亡数は、悪性新生物(以下、がん)が1位、全死亡数の30%、34万人です(図1)。
 がんの中で胃がんは、2009年で男性では肺がんに次いで2位、女性では大腸がん、肺がんに次いで3位、男女合わせると50,017人が胃がんで死亡しています。
 胃がん死亡者は年間5万人前後を数え、若年者での発生数減少傾向にもかかわらず、高齢人口増加に伴い、今後10年間で50万人が亡くなるおそれがあります(図2)。
少なくない胃がんは進行して発見されている
 がんの部位別死亡と罹患比について、1975年から2001年までの推移をみると、胃がん罹患者で1985年から約5割前後が死亡する状況が固定化され、多くの胃がん患者が、救命不可能な進行度で発見されたことを示しています(図3)。
胃がん検診として胃透視のみが推奨されている問題
 国立がん研究センターの有効性評価(科学的根拠)に基づく「胃がん検診ガイドライン」では、対策型検診、任意型検診で「推奨する」は、「胃X線(胃透視)」だけとされています。
 しかし、重要なことは、胃がん検診である「胃透視」の受診率が低迷を続けていることです。
胃がん対策の改革としてABC検診が提唱された
 2009年に日本ヘリコバクター学会は、「H.Pylori(以下、ピロリ菌)感染の診断と治療のガイドライン2009改訂版」を発行し、「ピロリ菌感染症」を除菌適応疾患とすることをガイドライン作成委員の全員一致で確認しました。同年、ピロリ菌感染症認定医制度をスタートさせました。
 同年、胃がん予知・診断・治療機構は、「胃がんリスク検診(ABC検診)マニュアル」を発行し、日本の胃がん対策を改革することを提唱しました。
 「ABC検診」は、血液検査です。ペブシノゲン法(以下PG)で萎縮性胃炎の有無を、ピロリ抗体法(以下HP)でピロリ菌感染の有無を調べます。そして、PGとHPを組み合わせて、四つの群に分別します。
 PG(-)HP(-)をA群、PG(-)HP(+)をB群、PG(+)HP(+)をC群、PG(+)HP(-)をD群とします。除菌療法成功者は、見かけ上A群かD群になるため、E群として区別しています。
 年間の胃がん発生率は、A群はゼロ、B群は0.1%、C群は0.2%、D群は1.25%。時間的経過で、B群はC群、まれにD群に移行し、除菌成功により除菌前と比較した発生率を3分の1に低減できるとされています。
 ABC検診の有用性は、低価格・低侵襲な上に、(1)胃がん低リスク者であるA群を胃がん検診対象から除外します、(2)胃がんリスクとなるピロリ菌感染症の対策から胃カメラ・胃透視で潰瘍(瘢痕)が認められれば、除菌療法の保険適応となります、(3)胃がん高リスク者を明確にして、任意型検診または保険診療として胃カメラ・胃透視で追跡することができることにあります。
ABC検診を導入して
 良元診療所で、2010年11月から6カ月間で300人に実施した結果では、A群は57%、要除菌のB群+C群は27%、要観察のD群+E群は16%でした(図4)。
 一般的に、群別の発生数は対象の年齢構成に左右され、60代以上でピロリ菌保菌者は6割、50代から低下しますが、10代でも1割あると報告されています。
 この11カ月間で、胃がん3例、食道がん1例が見つかりました。全例がピロリ菌感染者で、かつ除菌療法を受けていました。
 胃がん3例中2例は、除菌成否判定前に発見。胃がん1例と食道がん1例は、除菌成功すなわちE群でした。胃がん3例は全例、内視鏡治療の適応はなく胃切除術を受けています。食道がん1例は、偶然発見され手術待機中ですが、転移なしとの中間報告をいただいています。
ABC検診の今日的課題
 (1)自治体健診・健保健診・事業所健診項目とする課題。
 群馬県高崎市、東京都足立区・目黒区、埼玉県越谷市、栃木県大田原市、岡山県真庭市、神奈川県相模原市などが住民検診として、神戸製鋼所などが企業検診として実施しています。ペプシノゲン法は保険適応がないため、ABC検診の価格は自由設定で、3,000円から5,000円台が多いようです。住民検診や企業検診では受診者本人の費用は無料~1,000円台になります。
 (2)「ABC検診マニュアル」改定の課題。
 ピロリ抗体法のカットオフ値10未満では見逃しが多く、抗体価3~9の場合、別法(尿素呼気試験か便中ピロリ抗原)で再検査が必要との意見もあります。
 (3)胃がん検診から除外するA群、本当のA群(以下、ピュアA群)選定の課題。
 除菌歴の有無を、問診票だけでなく、カルテ突合や診療情報で確認したり、内視鏡所見の定量化の課題が指摘されています。
 (4)ピュアA群以外の方々に必要となる精緻なフォローの課題。
 内視鏡検査の課題と追跡システムの課題があげられます。
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