兵庫県保険医協会

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学術・研究

医科2012.10.25 講演

[保険診療のてびき] 気管支喘息の患者指導

神鋼病院副院長 呼吸器センター長  鈴木 雄二郎先生講演

ICS普及が喘息死減少に
 日本における気管支喘息の死亡率は、1990年代後半から、吸入ステロイド(以下ICS)の普及により、減少の一途をたどっている。
 気管支喘息のガイドライン上、どのステップにおいても、ICSが最も基本となる薬剤であり、どうしても使用できない場合以外は、気管支喘息患者のすべてに処方されるべきものである。近年、抗IgE抗体などの薬が難治性喘息に使用できるようになったり、サイトカインを抑制する薬が開発予定であったりするが、喘息死を減少させる最も基本的な方法は、できる限り多くの喘息患者にICSを普及させることである。
喘息患者への服薬指導
 したがって、気管支喘息の患者の服薬指導とは、単に吸入のやり方を指導するだけでなく、以下のことを行うことである。
 1.患者に気管支喘息であることを正しく認識してもらうこと。特に成人発症の喘息患者には、喘息の診断は青天の霹靂である。どの年齢でも、気管支喘息が発症することを理解してもらうことが大事である。
 2.気管支喘息が正しく診断されたならば、完全に治癒してしまうことはなく、できるだけ根気強くICSを続けることが必要であることを告げる。
 3.症状が軽快しても、吸入の継続が必要であることの説明として、私はICSの吸入を「虫歯にならないための歯みがき」と説明している。
 つまり、虫歯が治った状態でも、次の虫歯ができないように、ずっと歯をみがかなければいけないように、発作が治まってもICSの継続が必要なことを伝える。
 4.ICSが、ステロイドの全身投与などと違って、長期継続でも、全身性の副作用が出ないこと、例えば妊娠中であっても継続が可能な安全な薬剤であることも伝える。
 5.発作時のリリーバーとしての吸入短時間作用性β刺激薬(SABA)の使用法と、短期間のステロイド内服薬の意味を伝える。
 6.その上で、ICSだけで症状をおさえることのできない場合の治療法を伝える。
コントロールできない場合の追加治療薬
 ICSだけで気管支喘息がコントロールできない場合の追加治療薬には、長時間作用性β刺激薬(以下LABA)、テオフィリン製剤、ロイコトリエン受容体拮抗薬などがある。特にICSとLABAの配合吸入薬は、ICSだけでコントロールできない患者にとって強力な薬剤である。したがって、喘息の発病当初からこの配合剤を使用することは、患者の吸入薬に対する信頼感を増し、最終的には吸入療法のアドヒアランスを向上させると考えている。
アスピリン喘息
 最後に、気管支喘息の患者指導を行う上で、アスピリン喘息についても言及したい。
 成人の気管支喘息の約10%が、アスピリン喘息であると考えられている。アスピリン喘息の患者に重大な発作をおこしうるNSAIDは、現在、内服薬だけでなく、座剤、貼付薬、塗布薬など多くの製剤が、多種の診療科によって処方されている。
 これらの危険性を喚起し、発作を未然に防ぐのも、気管支喘息の患者指導の大きなポイントである。
(8月4日薬科研究会より、見出しは編集部)
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