兵庫県保険医協会

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学術・研究

医科2012.10.28 講演

[保険診療のてびき] 在宅での看取り 84%に上昇 その理由は?

姫路市・訪問看護ステーションだいとう  宮岡 直美(看護師)
【共同研究者】中野朝恵、小松美穂、延澤昌代、下地陽子、植松昌美、山本麻里子、大頭信義

当院での在宅看取り患者が2011年より急に増加
 2011年8月に「だいとう循環器クリニック」から名称変更にて「だいとうクリニック」となり、新たに「訪問看護ステーションだいとう」が新設されました。
 1990年~2012年8月末までのだいとうクリニックでのがん患者の看取り数は583人になります。
 最期の療養場所については、図にあるように、2011年より急に在宅での看取り数が増加傾向にあります。その理由をスタッフとともに、支援終了の後に家族からいただく、遺族アンケートや訪問時のカルテなどから調査しました。
 近年、治療段階での、病院の主治医から患者や家族への病状説明が断定的になってきています。「これ以上の治療はない。病院のベッドで死ぬか? 家の布団で死ぬか?」と言われて、「病状が進行し、悪いんだなぁ...」と痛感したが、本人を目の前にしてびっくりした医師の発言であったと、家族は語ってくれました。
 また、「がんの治療のない方は当院への再入院はできないので、ホスピスか在宅か他の病院を探していただくことになります。あなたはどうしたいですか?」と、選択を迫られるケースもありました。
 治療してきた病院への再入院を患者や家族が希望しても、不可であるケースが多いのが現状です。断定的な主治医の意見を聞き、患者・家族が在宅療養の選択に至ることも多いと考えられます。在宅では、精神的なフォローが必要となってきます。
 患者の年齢や社会的背景などにもよりますが、「治療をあきらめたくない」「少しでも命を永らえたい」と本人も家族も希望し、「生きていてほしい」と家族は願います。
増加要因は訪問看護ステーション開設
 現在、インターネットの普及によって、患者や家族は情報を得る機会も増えています。
 余命宣告を受け絶望感を感じながら、治療を模索し何かできる治療はないかと、当クリニックをセカンドオピニオンとして受診されてくるケースもあります。また、住み慣れた自宅で療養したいと希望され、在宅支援を希望され当クリニックへ受診される方もあります。
 しかし、症状コントロールの難しさや介護の大変さなどを考えて、最期は病院かホスピスでと思われていることが多いです。在宅支援を希望されてはいますが、「がん」と言われているので、最期は病院しかないと考えておられたケースもあります。
 在宅医との出会いによって、住み慣れた自宅での療養が可能であると知った方もあります。また、徐々に自宅での良さに気付き、最期まで住み慣れた場所で療養を希望される方もあります。
 クリニックを受診し、有効な治療方法がないとあきらめていた方が、代替療法を知り、高濃度ビタミンC療法を実施したことにより、生きる希望となり病状も安定し、絶望感や悲壮感は消えたと言われた方もありました。
 在宅看取りが44%⇒84%と増加した理由については、訪問看護ステーションが一昨年8月に開設になったことが第一の要因と考えています。
 遺族アンケートから、「訪問看護師が主治医と連携が密であることが分かり、相談しやすく安心できた」、「多職種連携により、介護面でも安心できた」、「病状の変化や看取りの説明を訪問看護師が適切な時期に説明してくださったので安心できた」、「介護力がなく最期はホスピスへ入院したが、在宅中から療養環境のことも相談してきたので納得のいく療養ができた」、「代替療法との出会いは、希望が持てた」との意見がありました。
 以前に比べ、訪問看護に出向く回数は増えていますが、患者家族は安心して療養生活を送られています。
多職種連携が在宅支援継続の力に
 病状説明を正しく受けることは、今後の療養を考えていくうえで最重要であると考えます。患者や家族は、今後の治療法や療養方法について検索し動く力があります。選択して、自分に合った良い療法を受けることが望ましいものです。
 療養生活においては、多職種連携し情報の共有化を行い、迅速かつ適切に関わることにより、在宅支援を継続できる力が与えられると思います。
 在宅療養においては、介護は初めてであるといった方も多いため、家族が医療者との温度差を感じないように、介護者の気持ちに寄り添い、わかりやすく介護情報を与える必要があると考えます。
 24時間の訪問看護は、患者や家族に安心感が得られ、在宅療養にとっては必須であると確信できました。また、在宅医の持つ「生きる支援」が、患者や家族に与える勇気は大きいと感じました。
 今回の調査は、訪問看護の視点から在宅を見つめなおす良い機会にもなり、改めて訪問看護の重要性と責任の重さも感じました。
 今後、より一層の努力をし、多職種連携を強化し、適切な支援ができるよう努力していきたいと思います。
(中見出しは編集部)

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