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[保険診療のてびき] 「スイッチOTC」はセルフメディケーションを推進したのか?

尼崎市  滝本 桂子(リベルファーマシー・薬剤師)

はじめに
 第21回日常診療経験交流会(2012年)で、スイッチOTCについて発表した。その後、2013年1月に、医薬品のインターネット販売訴訟に関して、最高裁はこれを認める判決を下した。これは、第1類や第2類医薬品についてもインターネットでの販売を可能とするもので、医薬品の安全性よりも、利便性を重視したものと言わざるを得ない。
 これらの点を踏まえて、2012年の発表に加筆して述べることにする。
1.スイッチOTCとは?
 医師の処方箋によらなければ使用できなかった「処方箋医薬品」「医療用医薬品」の中から、使用実績があり副作用の心配が少ないなどの要件を満たした医薬品を、薬局等で処方箋なしに購入できるように、「一般用医薬品」として認可したもの。キーワードは、「セルフメディケーション」「生活習慣病の予防」「医療費の削減」である。
 2009年6月1日施行の新薬事法により、スイッチOTC=第1類医薬品として、薬剤師が販売しなければならないとされた(図1)。
 薬事法上の規定による第1類医薬品とは、(1)その副作用等により日常生活に支障を来たす程度の健康被害を生む恐れがある医薬品であって、その使用に関し特に注意が必要なものとして厚生労働大臣が指定するもの、(2)一般用医薬品として承認を受けてから厚生労働省令で定める時間を経過しないもの、とされている。
2.スイッチOTC化の新スキーム
 2008年から始まった、新しくスイッチOTCを決定するシステムは、次の通り。
 (1)考えられる成分の選定を委託。
 (2)選定成分について日本医学会に意見を求める。
 (3)関連する医療学会が意見を提出。
 (4)薬事・食品衛生審議会の一般用医薬品部会で、スイッチOTC薬とすることの可否を検討し適当と考えられるものを、厚生労働省が日本薬学会に適当と成分を了承する。
3.スイッチOTCは、薬剤師の専売医薬品か?
 スイッチOTCは第1類医薬品に分類され、薬剤師が対面で説明しなければならないが、一定期間の経過をもって第2類医薬品に変更となるものがほとんどである。
 参考までに、スイッチOTC化スキーム以前にスイッチされた医薬品のうち、テプレノン、ブチルスコポラミン、ピレンゼピン、ソファルコン等の胃腸薬、水虫治療用抗真菌外用剤のほとんどの成分、ロペラミドやピロスルファートといった止瀉薬・便秘薬、外用薬としてのピロキシカム、ジクロフェナクナトリウム、抗アレルギー薬としてのケトチフェン・クロモグリク酸ナトリウム、鎮咳去痰薬としてのジメモルファン・カルボシステイン等は、リスク区分変更が終了して、第2類医薬品となっている(表1、表2)。
4.当薬局での患者アンケート
 生活習慣病予防につながる薬品のスイッチOTC化は、未病の段階で病気への移行を防ぎ、医療費の削減にとうたわれている。でも、大丈夫だろうか。
 この発表に先立って、当薬局で患者アンケートを行った。
 (1)「処方箋がなくても薬局で買える薬が増えていることを知っていますか?」との質問に、52%が「知らない」という回答だった。
 (2)薬局で買えるのは「よいこと」との認識は69%で、「よくない」16%、「わからない」15%を上回っていた。
 (3)よいと思うのは、「便利だから」がほとんどであった。「医療費の抑制」「自分の健康は自分で守りたい」という回答はごく少数だった。
 (4)よくないと思う理由は、「自分では判断できない」がほとんどだった。「保険診療を使うべき」がわずかながらあった。
 (5)買えるようになってほしい薬は、抗菌薬(内服)、生活習慣病薬(高血圧・糖尿病・高脂血症)、鎮痛薬、アレルギー薬、PPI、ED治療薬と続いた。
 群を抜いて販売数の多いロキソニンは、価格設定が低く、処方箋での3割負担と処方箋料も含めて比較すると、むしろ安値で入手できることになる(表3)。
 国民皆保険制度をもつ日本での受療率の高さは、2012年1月と新型インフルエンザの流行した2010年1月の当薬局で販売した医薬品の分類を見ると、風邪薬の販売数が例年より10%低くなっていることからも明白である(図2)。
 スイッチOTCの価格設定が高く設定されていると、利便性より経済的理由から受診抑制にはつながらないかもしれない。
5.問題点
 (1)OTC薬に関心を持つ薬剤師が少ない。医療用医薬品に精通する調剤薬局の薬剤師と、一般用医薬品に詳しい店舗販売に従事する薬剤師に二極分化していて、互いの交流がみられない。
 (2)OTC販売をして生計を立てている従前の薬局薬剤師は、薬剤師会の主要メンバーであり組織化されていたが、チェーン展開するドラッグストアとの価格競争についていけず、閉店に追い込まれた実態がある。すでに薬剤師の関わりが希薄となっている状況の中で、スイッチOTCを足がかりに規制緩和の方向に押し流されている。
 (3)医療保険制度の維持・継続のためと言いながら、対立の構図を作り、制度を危うくしている。
 (4)消費者は価格や利便性を重視しており、薬剤師が関わりを放棄すればセルフメディケーション推進の目的は果たせない。
さいごに
 医療チームの一員として職能を発揮しないと、薬剤師の居場所はないと最近よく言われている。それは在宅医療だけのことではなく、OTC医薬品についても、もっと理解を深め、関わりをもっていかないと、医薬品という医療の中で核(コア)を成している分野で、規制緩和の風穴が空けられるという実態に恐ろしさを感じているのは、私だけだろうか。
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