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インフルエンザ対策アップデート2012 [特別研究会より]

洛和会音羽病院 総合診療科・感染症科部長  神谷 亨先生講演

 インフルエンザの疾患、疫学、予防、治療、院内感染対策について、基本的事項の解説を行った。
インフルエンザウイルスとは?
 インフルエンザウイルスは、オルソミクソウイルス科に属するRNAウイルスである。
 内部蛋白である核蛋白の抗原性の違いから、A、B、C型の三つに分類されている。A型ウイルスはヒト以外にもトリやブタなどに感染し、B型ウイルスはヒトのみに感染、C型ウイルスはヒトとブタに感染する。
 世界的流行(パンデミック)はA型によって引き起こされ、季節は無関係である。温帯地方の毎年冬季に流行するものは、A型とB型によって生じる。C型は広く世界に浸透し、季節を問わず小さな流行を生じて、かぜ症候群の原因となっている。
 インフルエンザの感染様式は、飛沫感染および接触感染である。潜伏期間は平均1.4日(0.7日~2.8日)であり、感染力のある期間は、症状が出る1日前から発症後3~7日間である。
 2005年以降、沖縄では冬と夏の二峰性の流行が見られるようになった。平常時より咳エチケットを含めた標準予防策を実施し、夏季においてもインフルエンザを念頭においた診療が重要である。
インフルエンザの予防
予防の基本は、ワクチンの勧奨、咳エチケット、うがいや手洗いの励行、マスクの着用などである。
 室内の相対湿度を50~60%に保つと、インフルエンザウイルスが生存しにくくなることが知られており、可能な範囲で湿度を保つことが勧められる。しかし、実際は人の出入りの多い病院や施設内で、相対湿度をこの範囲に保つことは困難なことが多い。
 絶対湿度が7~11g/m3以下であるとインフルエンザが流行しやすいことも知られている(参考:宮城県医師会ホームページ、宮城県地域医療情報センター、インフルエンザ情報)。
インフルエンザワクチンの有効性
 ワクチンの有効性は、年齢、基礎疾患により大きな差がある。一般に、健康な若年成人や高学年の子どもは有効性が高く、2歳以下の子どもや高齢者は相対的に有効性が低い。
 ワクチン株と流行株の一致、不一致も有効性に大きく影響する。一致具合が良好な場合、発症予防としての有効性は、1歳以上から6歳未満で20~30%、65歳未満の健康成人で70~90%、65歳以上の健康成人で45%、死亡阻止としての有効性では65歳以上の健康成人で約80%というデータがある。
ワクチンはいつごろ接種するのがよいか?
 季節性インフルエンザは、毎年12月頃流行し始め、3月から4月に終息する。インフルエンザワクチンの効果は、接種後(小児は2回接種後)2週間程度で現れ5カ月程度持続する。
 従って、ワクチンの接種時期は12月上旬(遅くとも12月中旬)までに接種を終えることが目安となる。
インフルエンザワクチンの接種量、回数
 1回の接種量は、3歳未満が0.25ml、3歳以上は0.5mlである。
 接種回数は、13歳未満が2回、13歳以上が1回である(著しく免疫が抑制されている場合は2回接種を考慮)。2回接種の際は、間隔を1~4週間空けるが、免疫効果を考えると4週間空けることが望ましい。
インフルエンザワクチンと妊婦
 妊婦はインフルエンザに罹患した場合に、重症化しやすいことが知られている。妊婦へのインフルエンザワクチンに関しては、安全性と有効性が証明されている。
 2009年の新型インフルエンザワクチンに関しても、妊婦における重篤な副反応の報告はなかった。チメロサール等の保存剤が含まれていても、安全性に問題はないことが証明されている(日本産婦人科学会)。
 妊娠初期にワクチンを接種しても、胎児に異常の出る確率が高くなったというデータはなく、予防接種直後に妊娠が判明しても、胎児への影響を心配して人工妊娠中絶を考慮する必要はない(日本環境感染学会 院内感染対策としてのワクチンガイドライン2009年)。
インフルエンザの診断
 インフルエンザの迅速検査は、症状がインフルエンザに矛盾せず、発熱等の症状発現から24時間以上48時間以内に行うと有用である(発症後48時間以内に限り保険適用)。
 流行期には、偽陰性が相対的に増加することに注意する。
インフルエンザの治療
 今日、抗インフルエンザウイルス薬は、オセルタミビル(タミフル®、経口)、ザナミビル(リレンザ®、吸入)、ペラミビル(ラピアクタ®、点滴)、ラニナミビル(イナビル®、吸入)の4種類がある。
 症状発現後48時間以内の投与で、有効性が高い。予防投与の適応があるのは、タミフル®とリレンザ®の2剤である。
抗インフルエンザ薬と小児、妊婦
 かつて、タミフル®が小児、未成年に異常行動を発現させる可能性が指摘された。その後の調査で、インフルエンザ自体でも異常行動が発現することが明確となった。
 タミフル®と異常行動の因果関係は、明確な結論を出すことは困難であると考えられている。今日でも、タミフル®は原則として10歳以上の未成年に処方を差し控えること(ハイリスク者を除く)、処方時は少なくとも2日間、保護者等は小児、未成年が一人にならないように配慮するように指導されている。全ての抗ウイルス薬で、同様の注意喚起が求められている。
 妊婦に対する抗インフルエンザ薬は、重症化防止に有効であり、感染が確認されたら速やかに投与することが推奨されている。胎児に対して、問題が生じたとの報告はない(日本産婦人科学会)。
出席停止期間
 2012年4月2日、学校保健安全法施行規則が一部改正され、学童、学生の出席停止期間は、インフルエンザ発症後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまで、となった。
院内感染対策
 職員、患者、家族の啓蒙が重要。入院患者にインフルエンザの患者が発生した場合、個室またはコホート隔離を行う。
 日本感染症学会では、同室者に対する抗ウイルス薬の暴露後予防投与を積極的に考慮することを勧めている。
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