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[保険診療のてびき] 北播磨地域における認知症治療の現状とこれから ~認知症専門医から~

加東市民病院・神経内科 認知症疾患医療センター  佐藤 一彦先生講演


 加東市民病院の当センターは、2012年8月より、県内9番目の兵庫県認知症疾患医療センターとして業務を開始しました。
認知症の流れと認知症疾患医療センターの役割
 2012年、65歳以上の高齢者人口が3000万人を超え、その10人に1人が認知症であることが発表されています。増加のスピードは予想を上回り、その数はなんと305万人に達しました。
 国は、厚生労働省認知症施策検討プロジェクトチームが「今後の認知症施策の方向性について」に示したように、従来の施設・病院での対応という指針を改め、「住み慣れた地域の良い環境で暮らし続ける」ことに大きくかじを切りかえました。その実現には、地域での住民・かかりつけ医・地域包括支援センターを中心とした早期診断・治療・介護の連携を築いていかなければなりません。一部の専門医だけの診療では対応できないからです。
 センターの役割は、単に認知症の診断・治療のみでなく、(1)情報センターとして認知症の情報発信と個別の相談業務、(2)詳細な鑑別診断・精神症状や身体合併症の対応等の専門医療の提供、(3)地域連携の推進を図るため、かかりつけ医やその他の専門職の研修会の実施や連携会議の開催を行い、地域の認知症の診断・治療・介護力アップを図るなど、多岐にわたります。オレンジプラン(表1)の達成には大きな役割を果たすものと考えています。
 初年度の2012年8月から翌年3月までのセンターの活動は、情報発信として講演研修活動を31件、専門医療相談を面談253件、電話相談153件行いました。また、認知症の診察・鑑別診断は178件です(内訳はアルツハイマー型が60%を占め、軽度認知障害、混合型、血管性が続く)。次に地域の認知症連携システムを構築するため、北播磨圏域の地域包括支援センターと「北播磨認知症連絡会」を2回開催し意見交換を行いました。医療面での核となるかかりつけ医の先生方との相互理解と認知症対応力向上を目的に症例検討を中心とした「北播認知症を考える会」を発足させ、2回開催しております。また「北播磨圏域健康福祉推進協議会」において当センターの目的を説明し、活動実績報告と次年度の活動計画を報告し承認を得ました。一方、認知症早期発見の取り組みとして、了解を得た上で入院患者様に『物忘れ相談プログラム』を281件実施、130件が「疑い」を示し17件がセンター受診につながったことも記しておきたいと思います。
認知症診断・治療について
 さて、診療中に「認知症に早く気づく方法とは何ですか」と尋ねられることがたびたびあります。そういった時は「最近のニュースは何ですか?」と質問してみてください。答えられず、「今日は新聞を見なかった」など取り繕いが見られれば疑いがあります。認知症は、NIA/AAの診断基準(表2)からいうと、譫妄や精神疾患によるものでなく、以前より遂行機能が低下して仕事や日常生活が障害され、(記銘力記憶障害、論理的思考・遂行機能・判断力低下、視空間機能障害、失語、人格・行動・態度の変化のうちの)2領域以上の認知機能・行動障害から診断されます。
 以上から、かかりつけ医の先生が専門医による鑑別診断を必要と判断された場合は、センターの予約をお取りください。1日で医師による診察に加え、画像や血液検査による鑑別診断の他、疾病を含めた全体像を把握して治療・QOLの維持改善を図るためのアセスメントとして高齢者総合的機能評価(CGA)を行います。
 鑑別診断は認知症疾患治療ガイドライン(表3)に従っています。必要に応じ脳血流シンチ検査、脳波、頸動脈エコー検査など、後日に予約を行っています。
 先に述べたように、当センターで鑑別した認知症の原因としてはアルツハイマー型認知症が半数以上を占めます。アルツハイマー型(表4)はいつとはなしに緩やかに発症・進行し、初期より記憶障害がみられ、運動障害が目立たない特徴があります。
 一方、血管性認知症は比較的階段状に症状が出現・進行され局所の神経症状がみられることが多いのです。またレビー小体型認知症は、転倒や失神など動揺がみられることが多く、幻覚を示されることもあります。
 診断・アセスメントを行い、「認知症療養計画書」を作成・説明し、原則的にかかりつけ医に再紹介し、半年を目安にセンター再受診をお願いしています。
 参考資料:
・認知症疾患治療ガイドライン 2010.監修:日本神経学会 医学書院
・認知症テキストブック 編集:日本認知症学会 中外医学社
・認知症診療の進め方-その基本と実践- 編著:長谷川和夫 永井書店
(第29回地域医療を考える懇談会、2013年2月23日・三木より、4月15日付に関連記事)

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