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学術・研究

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C型肝炎の病態と治療 [診内研より]

県立西宮病院院長  河田 純男先生講演

はじめに
 まずC型肝炎の病態、とくに最近注目されています「C型肝炎の代謝病的な側面」について、ご紹介させていただきます。次に治療として、すでに臨床で使用されている経口の抗ウイルス剤・テラプレビルを用いた3剤併用療法について、話させていただきます。
 さて、C型肝炎はご存じのように、感染後に30年ぐらいかけて肝硬変にまで進展し、肝硬変からは年率7〜8%で肝細胞癌を発症します。しかし、近年行われているように、インターフェロン治療によりウイルスが消失しますと、肝細胞癌の発症が抑制されるとともに、肝線維化の軽減も起こることが知られています。
C型肝炎の病態
 最近、「C型肝炎は代謝病である」とよく言われるようになっています。実際、C型肝炎では以前から糖尿病の発症が多いと言われています。
 また、C型肝炎ウイルスが肝細胞で増殖することと関連して、肝脂肪蓄積がC型慢性肝炎の患者さんの約50%にみられます。これは、C型肝炎ウイルスを構成しているコア蛋白が、ミトコンドリア機能を傷害して、脂肪酸代謝を抑制するために脂肪肝になると考えられています。
 一方では、C型肝炎の患者さんは、どうしても運動不足になり、さらに肝臓が悪いということで過食に傾きますので、かえって内臓脂肪をため込んでメタボ気味になりがちです。そのために、インターフェロンが非常に効きにくくなることが知られています。そこで、肥満の患者さんでは、インターフェロン療法前に、食事療法などで減量してから治療を行うこともあります。
 意外なことに、肝硬変の患者さんにも肥満が多く認められるということが分かってきています。ある研究によりますと、肝硬変患者さんの約30%が肥満しているようです。しかも肥満している肝硬変患者さんの方が、そうでない患者さんに比べますと、肝細胞癌の発症リスクが高いと言われています。そこでC型肝炎患者さんに対しても、メタボ対策が必要であると考えられてきています。
C型肝炎の治療(とくに新しいインターフェロン治療)
 1992年から臨床の場でインターフェロン療法が行われるようになりました。このときは、インターフェロン単独療法(週3回注射、24週間投与)でしたが、いわゆる難治性と言われる1型高ウイルス量の患者さんでは、ウイルスが永続的に消失するSVR(Sustained Virological Response)はわずか2%と、非常に効果が乏しかったわけです。
 その後、週1回の注射で済むペグ・インターフェロンが使用され、同時に経口の抗ウイルス薬であるリバビリンを投与する標準治療(48週間投与)が始まり、1型高ウイルス量でも50〜60%がSVRになる時代になりました。しかも1型高ウイルス量以外のタイプでのSVR率は、この場合は24週間投与ですが、2剤併用療法で90%と非常に有効性が高まりました。
 ただ、1型高ウイルス量では、48週間の2剤併用治療(ペグ・インターフェロンとリバビリン併用)では、女性と65歳以上の高齢者では、SVR率が思わしくなかったのですが、必要に応じて72週投与が可能になっており、女性や高齢者でも高い治療効果が得られるようになっています。
 しかし、これらの2剤併用療法では、難治性の1型高ウイルス量では治癒しない患者さんが、まだ半数近くいることになります。
 そこで、新しいタイプの抗ウイルス薬が開発されてきました。現在、一般の臨床で使用されているのは、ウイルス増殖を阻害するセリン・プロテアーゼ阻害薬の一つであるテラプレビル(telaprevir)です。これは第一世代と呼ばれており、さらにテラプレビルより副作用がずっと少ない第二世代を、早ければ年内に使用し始めることができそうです。
 そのために、病状によっては(肝細胞癌の発症がそれほど差し迫っていないと判断される場合など)、第二世代の登場までインターフェロン治療を控えるという考えもあります。
 それでは、現在使用されているテラプレビルを用いた3剤併用療法について概要をご説明します。
 まずテラプレビル、ペグ・インターフェロンおよびリバビリン3剤併用を12週間行い、続いてペグ・インターフェロンおよびリバビリン2剤をさらに12週間投与する計24週の治療となります。
 今までにインターフェロン療法を受けたことがない、初回治療の症例では、2剤併用群ではSVR率が約49%であるのに対して、3剤併用群では73%となり、3剤併用でより高率にウイルスが排除されています。前回に2剤併用療法を受けて、投与期間中はウイルスが血中から消失していたが、治療終了後にウイルスが再び陽性になった、いわゆる前治療再燃群では、有効性が高く、約88%がSVRになっています。
 ただ、2剤併用では治療中もウイルスが消えなかった無効群では、最も有効性が期待されていたのですが、残念ながら3剤併用をしてもSVR率は34%にとどまっています。このような前治療無効群に対する治療が今後の課題となってきます。
 2剤併用でも、リバビリンによる溶血性の貧血が起こり、そのために投与を中止する症例が出ていました。しかし3剤併用では、さらに貧血の出現が増加し、91%にも上ります。2剤併用ではヘモグロビン値が平均3g/dL程度低下しますが、3剤併用では4〜5g/dL程度低下すると考えられています。治療前のヘモグロビン値が14g/dL未満の患者さんは、認容性に問題があるといわれています。
 今回の臨床試験における治療の中止率は18%でしたが、その原因として最も多かったのが、貧血であり、15.4%ありました。3剤併用療法は、とくに高齢者や女性では慎重な治療が必要になっています。
 さらに、テラプレビル併用による皮診も重要視されています。治験において、皮膚症状による中止率は7.1%でした。3剤併用療法では、皮膚科専門医との連携が必須となっています。
 とくに、角膜や口唇など粘膜病変、あるいは皮膚の糜爛びらんがみられる症例は、重篤になる可能性があり、ただちに皮膚専門医を受診させなければなりません。また皮膚病変が出たら、程度が軽くても必ず皮膚科医に相談する必要があります。
 その他、副作用として、腎障害、高尿酸血症などがあります。
おわりに
 まず、C型肝炎の病態、とくに最近話題になっている「代謝病としてのC型肝炎」についてお話ししました。
 次に、C型肝炎の治療として、抗ウイルス剤・テラプレビルを加えた3剤併用療法の治療成績と副作用についてご紹介しました。
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