兵庫県保険医協会

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学術・研究

医科2013.12.21 講演

[保険診療のてびき] 実践COPD診療

聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院呼吸器内科 駒瀬 裕子先生講演

1.COPDの診断、治療
 COPDは、タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた、肺の炎症性疾患である。2013年に日本呼吸器学会より、『COPD診断と治療のためのガイドライン第4版』が出された。
 診断のためには呼吸機能検査が必須で、正常に復することのない気流閉塞、すなわち閉塞性換気障害を示す。気流閉塞は、末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に作用することにより起こり、通常は進行性である。
 臨床的には、徐々に生じる労作時の呼吸困難や慢性の咳、痰を特徴とするが、呼吸機能検査で高度の閉塞性障害を示していても、症状がほとんどないこともある。
 急性増悪とは、息切れの増加、咳や喀痰の増加、胸部不快感・違和感の出現あるいは増強などを認め、安定期の治療の変更、あるいは追加が必要となる状態で、他疾患(心不全、気胸、肺血栓塞栓症など)の合併を除いたものである。いったん急性増悪をおこすと、状態がかなり低下するため、予防のためにもきちんと安定時の治療を行うことが望まれる。
 COPDによる死亡は、2012年16,402人で、特に女性の喫煙率がまだ低下していないことから、今後女性のCOPD患者が増えることが予測される。画像では、肺気腫病変を認めることもあるが、気腫がほとんど認められないことも少なくない。
 実地医家がCOPDの診断を行うためには、喫煙歴、呼吸困難などがキーワードとなるが、COPDの質問表(IPAG)などが参考となることもある。また循環器疾患やうつ病等の精神疾患、骨粗鬆症などを合併することが多いため、実地医家を受診しているこれらの病気に罹患している喫煙者では、常にCOPDを念頭において診療を行うことが早期発見に重要である。
 鑑別診断として重要なのが気管支喘息であり、アトピー素因を持つもの、呼吸機能で大きな可逆性を持つもの、呼気NOが高いものなどは喘息の合併を念頭において診断する。確定診断のためには病診連携も一つの方法であり、専門医が診断を行い、継続加療を実地医家が行うことが推奨されている(図1)。
 治療の目標は、現在の症状の軽減と将来のリスクの軽減であり(図2)、気管支拡張薬の治療が中心となる(図3)。また、短時間作用性β2刺激薬は、喘息と異なり動作の前にあらかじめ吸入しておくことで、運動耐容能を改善することが可能である(アシストユース)。
 GOLDのガイドラインでは、呼吸機能、自覚症状、増悪のリスクに対応して、治療を行うことが推奨されている。自覚症状が強く増悪のリスクも高いGOLDのDについては、早急に治療を開始することが必要であり、呼吸機能が悪くないが自覚症状の強いBに関しても、治療の開始が必要である。
 自覚症状は強くないが呼吸機能の悪いGOPDのCに関しては、患者にきちんと病状を説明した上で、将来のリスクを減らす上で治療を行うことが望ましいと考えられる(図4)。
2.吸入薬の使い分け
 現在、さまざまな吸入薬が使用できるようになっているが、COPDでは特に高齢の患者が多いことから、注意を要する点が多い。医療側の配慮がないと、吸入薬は使われない、あるいは誤った使い方をして効果が十分に得られない。
 (1)1日の吸入回数や吸気流速を、できるだけそろえることが重要である。吸入回数が、2回のものと1回のものが混ざっていると、患者は間違えやすい。また吸気流速が速いものと遅いものを混ぜると、吸入方法を誤ることが多い。できるだけ合剤を用いるなど吸入の個数を減らすことが、間違いを減らしアドヒアランスを高めるために重要である。
 (2)各デバイスはそれぞれ長所、短所がある。どれも一度使い方を説明しても、すぐにはできない。器具の扱いだけではなく、吸気流速や息どめに注意を払うようにし、患者さんに実際行ってもらうことが必要である。また、2回目に受診した時には必ず確認する必要がある。この場合、薬剤師とのコミュニケーションを図っておき、専門職である薬剤師に依頼することが一つの方法である。
 (3)薬剤師とは、あらかじめどのような吸入指導を行うか、話しあっておくことも必要である。この点に関して、全国組織である「吸入療法のステップアップをめざす会」(http://mezasu-kai.kenkyuukai.jp/about/)を利用し、講習会を開催することが可能である。
3.新しい吸入薬
 近年発売された様々な吸入器の中で、ブリーズヘラーはLABA、LAMA、LABA+LAMAの三つのラインアップがあり、患者も好む器具ということで、今後期待できる薬剤である。GOLDのB、C、Dについて、合剤が治療の上で今後キードラッグになると考えられる。(2013年12月21日 淡路支部・日常診療勉強会より)

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