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「かぜ」と「かぜ」のように見える重症疾患 [診内研より477]

京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻医療疫学分野/神戸大学感染症内科 山本 舜悟先生講演

 狭義の「かぜ症候群」は上気道の非カタル性炎症で、最も頻度の高い呼吸器感染症です。通常自然軽快します。医学的には急性上気道炎とほぼ同義としてとらえられることが多いですが、気道症状だけでなく、急性(あるいは時に亜急性)の発熱や倦怠感、種々の体調不良を「かぜ」と認識する患者は少なくありません。
 患者が「かぜをひいた」といって受診する症候群を、広義の「かぜ症候群」としてとらえるとさまざまな原因が考えられます。その中から自然軽快するものとそうではないものを見極めることが「かぜ症候群」の診療における医師の重要な役割の一つです。
 気道症状が乏しいにも関わらず、急性上気道炎と診断するのは理にかなっておらず、重篤な疾患の見逃しにつながりかねないので注意が必要です
 気道症状を伴うタイプは、普通感冒型、急性鼻・副鼻腔炎型、急性咽頭・扁桃炎型、急性気管支炎型の四つに分類できます。それぞれの病型の診断のポイントは表1です。
[治療]
 上気道感染症の治療では、抗菌薬の適応(表1)の検討と、対症療法(表2)が中心になります。
 まず、普通感冒型では抗菌薬は原則不要です。いったん軽快傾向にあった症状が再増悪する場合は細菌感染の合併を考えます。
 次に、急性鼻・副鼻腔炎型もほとんどの場合、抗菌薬は不要です。抗菌薬の適応は、
 1)鼻炎症状が7日以上持続し、かつ頬部の(特に片側性の)痛み・圧痛と、膿性鼻汁がみられる
 2)非常に強い片側性の頬部の痛み・腫脹、発熱がある場合(症状の持続期間に関わらず)
のどちらかになります。
 急性咽頭・扁桃炎型の抗菌薬の適応は、筆者の場合、McIsaac(またはCentor)の基準で、0〜1点→抗菌薬不要、2〜3点→溶連菌迅速検査で陽性の場合抗菌薬投与、4点以上→抗菌薬投与としています。
 急性気管支炎型も基本的に抗菌薬は不要ですが、肺炎の除外がしきれない場合は、3日間程度抗菌薬投与を行って再診してもよいかもしれません。
 発熱、疼痛に対してNSAIDsが使われることがありますが、感冒の治癒を遷延させる傾向があったという報告もあり、強い咽頭痛を訴える患者を除いてアセトアミノフェンを処方した方がよいでしょう。
 鼻汁、鼻閉に対して抗ヒスタミン薬が使用されますが、感冒の際の鼻汁には抗コリン作用が重要であり、有効とされるのはクロルフェニラミンなどの第一世代の抗ヒスタミン薬です。しかし、口渇や眠気、前立腺肥大のある男性では尿閉の副作用のため、使用には注意が必要です。副作用とのバランスで考えると漢方薬の方が使いやすいです。

表1 気道症状を伴う「かぜ症候群」の診断と抗菌薬の適応
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表2 急性上気道炎の対症療法
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