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[保険診療のてびき] 第一線医に必要な小児科の知識内科医のための発熱初期トリアージ

淡路市・とみもと小児科  富本 康仁先生講演

 発熱は小児医療において最も多い主訴であるが、第一線医である開業医や夜間休日急病診療所には発熱直後に来院される患者は少なくない。淡路島では夜間救急を小児科医だけではまかないきれず有志の内科医にもご協力いただいているのが現状であるが、県下でも同様の地域があると思われ、内科医のための発熱初期対応とりわけ3歳以下の発熱初期トリアージに関して述べる。
 最も重要なのは年齢であり、1)新生児期の発熱は病院小児科に紹介、2)3カ月以下は小児科開業医へ直ちに紹介、3)3カ月以上は哺乳力、活気、不機嫌などを考慮し熱源が不明な場合、後述するように検血(白血球)、CRPを検査し判断するのがよいであろう。保育園や託児所など集団生活の有無と感染流行情報、ワクチン歴は問診上、重要であるが、インフルエンザ流行期には、RS、アデノ、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)、ノロなど種々のウイルスや溶連菌などの感染症が同時流行し、また川崎病も含めその鑑別は発熱早期には容易ではない。実際に、インフルエンザ診断キットなどのイムノクロマトグラフィー迅速検査は発熱数時間以内においては偽陰性となり信頼性にかけるが、夜間一次救急ではこれらの疾患鑑別は必ずしも必要ではなく翌日で充分と考える。
 重要なのは細菌性髄膜炎、急性喉頭蓋炎など緊急に治療が必要な感染症診断である。3歳以下の乳幼児が、39.5度以上に発熱していて、熱源不明の場合、2.8〜11.1%の頻度で、潜在性菌血症があり、その5〜15%の頻度で、化膿性髄膜炎、細菌性肺炎、急性喉頭蓋炎、化膿性関節炎、骨髄炎を合併するとの報告がある。これらの疾患はヒブ、肺炎球菌ワクチンの定期接種化により減少傾向であるが、13価以外の肺炎球菌感染やワクチン接種歴が2回以下の場合感染が起こり得る。潜在性菌血症の生後9カ月・男児の症例を提示する。

 症例:2015年2月7日、40度発熱し、発熱12時間後に来院された。発熱以外の症状はなく、哺乳力も全身状態も良好。肺炎球菌およびヒブワクチンは3回接種済。診察所見では熱源不明で特記事項なし。インフルエンザ検査A(−)B(−)、白血球31600/μl(好中球64%)、CRP8.5㎎/dlで、尿路感染症や菌血症を疑い病院小児科へ紹介、入院した。セフォタキシム投与にて入院翌日に解熱、その後再発熱なく経過。後日血液培養で肺炎球菌が検出され菌血症と診断、抗菌薬加療を継続し2月15日に退院された。

 本症例のように、3歳以下の乳幼児が、39.5度以上に発熱し熱源が不明の場合、哺乳力や全身状態が良好でも白血球とCRPを測定する必要があると考える。白血球15000/μl以上の例は、小児科医に紹介あるいは夜間一次救急では全身状態良好な場合はペニシリン系抗生剤を1日処方し、必ず翌日のかかりつけ小児科受診を指導すべきである。嘔吐、哺乳力低下、けいれんを伴う場合は髄膜炎を、吸気性喘鳴、よだれ、嚥下困難は喉頭蓋炎を疑い病院小児科に紹介が必要である。
 緊急感染症の鑑別後は、症状、理学的所見、流行情報から可能な限り絞り込み、原因微生物の鑑別を行う。
 インフルエンザ、RS、アデノ、hMPVに関しては、検査キットのメーカーを統一し、鼻腔深くからぬぐい液を採取すれば同じ検体で次々検査可能であり、子どもの余分な苦痛を避けられる。
 原因微生物の特定は経過や合併症の説明および兄弟家族や友人への感染を避ける上で、また不必要な抗生物質の処方をなくす上で重要である。とりわけRSやhMPVは、小児、高齢者や基礎疾患を有する患者では重篤な下気道炎を起こし、療養施設などでの集団発生ではインフルエンザ感染以上の超過死亡が報告されており、小児科だけでなく内科領域においても注意が必要である。RSはインフルエンザ同時検査キットがあるがhMPVにはなく、しかも保険適用が6歳未満で画像診断にて肺炎が疑われる例に限られており、今後保険適用の拡大やインフルエンザ同時測定キットが望まれる。

まとめ
 3歳以下の発熱初期トリアージに関して述べた。月齢3カ月以下は小児科医へ直ちに紹介すべきである。39.5度以上に発熱して熱源が不明の場合、哺乳力や全身状態良好でも白血球とCRPを測定し、細菌性髄膜炎、急性喉頭蓋炎、菌血症、尿路感染などの緊急加療が必要な疾患を否定する必要がある。けいれん、哺乳力低下、嘔吐、吸気性喘鳴、嚥下困難を伴う場合は特に要注意である。
(4月18日 淡路支部日常診療勉強会より)
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